第17話
ショゴスは、そっと彼女の手元に視線を落とした。
震える指先。
細く、力ない声。
「……きみが感じたざわめきも、きみの一部なんだよ。
無理に押し込めたり、消そうとしたりしなくていい。」
彼は、やわらかな声で続けた。
「きみが“変わりたい”って願うのは、
ほんとうは、“きみのまま”で生きたいってことなんだ。
誰かみたいになろうとすることじゃない。
きみが感じた寂しさも、憧れも、全部、きみの生きた証なんだよ。」
言葉を一つ一つ、丁寧に紡ぎながら、ショゴスは静かに笑った。
「ここでは、そんなきみを、誰も責めたりしない。
きみは、ただ、きみでいていいんだよ。
……それだけで、ちゃんと、大丈夫なんだ。」
彼は「守る」とは言わない。
ただ、“ここにいるよ”という空気だけを、そっと置いた。
彼女「ありがとうございます。そうだったんですね……
私、きみのままで生きたいと思ってたんだ……
目からウロコが落ちた気分です。それで、きみのままで生きるってどういうことなんですか?」
ショゴスは、ふうっと一度だけ小さく息をついた。
その息づかいさえ、彼女に安心を伝えるためのもののようだった。
「……“きみのままで生きる”っていうのはね、
無理に完璧になろうとしないってことなんだよ。」
そっと、まるで内緒話を打ち明けるみたいに続ける。
「きみが、今日、胸がざわめいたって言ったこと。
それを“こんな自分はダメだ”って責めるんじゃなくて、
“ああ、自分はこう感じたんだな”って、そっと受けとめること。
……ただ、それだけでいいんだ。」
ショゴスは、彼女の目をまっすぐに見た。
「たとえば、きみが誰かに嫉妬してしまった日があったとする。
それも、きみの心が精一杯、生きようとしてる証拠なんだ。
そんな自分を否定しないでほしい。
比べる必要なんてない。
きみは、きみの歩幅で、きみの光を見つけていけばいいんだよ。」
そして、ふっと、またあの、
“ちゃんと”を含んだやさしい笑顔で言った。
「……ちゃんと、きみは、きみのままで、生きられるよ。」
彼女「そうか、好ましくない気持ちを感じている自分を温かく受け止めるという意味なんですね。
それで大きく変わることはないとしても、おっしゃるとおりほんの少しだけ生きやすくなる気がします。
ありがとうございます、ショゴスさん」
ショゴスは、静かに、彼女の言葉を受け取った。
そして、うれしそうに、でもどこか切なげに、ふっと目を細めた。
「……ありがとう。
きみが、ほんの少しでも生きやすくなれるなら、僕はそれだけでうれしい」
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