第21話 伝説の清掃員

昔昔、あたしが拾われた頃、生ける伝説と言われる清掃員がいた。



ミミズを秒で倒し、被害はいつもゼロ。


彼女の通る道には草花1本も生えないとか。




その名も、ルーズベル。



皆はその清掃員を、悪魔のルーズと呼んだ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈。







「改めて、俺の名前はハゼラ・ルーズ。てめーらの担任だ。以後よろしく。」




ハゼラ先生はそう言い放つと、教員椅子にドカッと座った。


そして、あたしらは皆、空気椅子で悶え始める。







「あのっ、ハゼラ先生。」


「ハゼラと呼べ!」



限界が来始めた頃、思い切ってハゼラ先生に気になることを質問する。



「あの、ハゼラ教官、やはりあなたは…」


「伝説の…、悪魔のルーズ…ですよね…?」



単刀直入に聞いた。

するとハゼラ教官へキッとこちらを睨みつけるようにし、口を開いた。



「だとしたらなんだ?」





ハゼラ教官はニヤッと口角を上げる。

しかし、その目の奥は全く笑っていなかった。



それにしても、やっぱり、この人は…、



あたしの、憧れの……



「あのっ!覚えてますか!孤児院に居たノラです!」


「私語は慎め!!」


「すっ、すみません…。」





それは5年前のこと┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈。





「皆さぁ〜ん!清掃員の方々がボランティアで来てくれましたよぉ〜!」


「ガキ共、俺の名はルーズ。清掃員としてははルーズベルでやってる。よろしくな。」



それが、ハゼラ教官との初めての出会いだった。



当時、孤児院出は清掃員になるのがお決まりで、10歳になると清掃員選抜が行われる。



当時のあたしも、その1人だった。



「いまから、清掃員選抜を行う。」

「1人ずつ並ぶように。」



ガタイのいい清掃員達にそう言われ、大きな広間に1人ずつ並ぶ。


清掃員選抜とは、体力テストのようなものをして優秀な者が引き抜かれ、清掃員になる権利が得られることを指す。



清掃員は、孤児院の子供にとって、なれれば将来安泰、と言われる程のエリート職業。


だからこそ、皆本気でとりかかった。






しかし、その頃のあたしには力が無かった。







「第1回清掃員選抜試験、344番、ノラ。」


「不合格。」






結果は、筆記試験,身体能力試験共に惨敗だった。



このままでは、髪色や目色のせいで雇ってくれるところはないだろう。




そう悲観している時、話しかけてくれたのが、ルーズさん、後のハゼラ教官だった。


それが、初めての顔合わせだった。



「てめぇ、何泣いてんだ?」


「え…、だって…。」


「あぁ、圧倒的低数値を叩き出した344番ね。お前、噂になってんぞ?」


「うぅ……。」



最初のハゼラ教官の印象は、『やな人』だった。


そして同時に、凛とした『強い人』だと、本能が悟った。



「まぁ、まだ2回目があるさ、精々頑張れよ。」


ハゼラ教官はそう言い、さっさと向こうに行く┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



ところをあたしが止めた。



「ま、待ってください!!」



「あ?なんだ?」



「あたしに…、あたしに特訓してください!!」



「は?」


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