第二章:掃除係なのに前線送り!?魔王軍の研修ヤバすぎ案件。

「これが……“研修”……?」


魔王軍本拠地・黒炎城――地獄の門とかいう、ネーミングからして終わってる場所の裏手にある巨大な訓練場で、俺は今、ほうきを片手に立ち尽くしていた。


炎の川。毒の池。空飛ぶ斧(自動追尾式)。そして、筋トレ中のオーガたちのうなり声。

どう見ても掃除どころじゃないんですけど?ここ戦場じゃない?


「ユウト、貴様の初任務は“訓練場Aブロックの床磨き”だ」

レミリア・ナイトメア(ブラック企業の中間管理職感ある美少女上司)が、俺にポンとモップを渡してきた。


「Aブロックってどこすか?」

「……オーガとミノタウロスの格闘訓練エリアだ」

「無理じゃね!?」


というか今、ミノタウロスがオーガの頭を持ってジャイアントスイングしてたぞ!?床磨いてたら巻き込まれて即死だよ!!


「ほら、さっさと行け。死ななければ評価される」

「評価より命が欲しい!!」


だが、俺には選択肢がなかった。契約書に“魔王軍の辞職には魂の提供が必要”って書いてあったし。

レミリア、いくら何でも契約書に地獄条項入れるのやめてよ。


 


*** 


 


――結果から言おう。


俺は生きて帰ってきた。


いや、正確には、**「爆風で吹き飛ばされたあと、瓦礫の山で意識を失っていたら、たまたま床がピカピカになっていた」**という奇跡により、“奇跡の床磨き勇者”という謎の称号まで得てしまった。


「見事だ……勇者よ」

レミリアが目を細めてうなずく。


「違う、俺何もしてない!爆発の巻き添え食らっただけだから!!」

「謙虚さもまた勇者の資質……フフ、やはり貴様は選ばれし者」

「いやもうこの会話ループやめよ?一生解釈違いだよ?」


 


*** 


 


そんな中、事件は起きた。


「緊急報告!前線拠点“血風の砦”が襲撃されています!勇者の精鋭部隊によって!」


魔王軍の小柄なインキュバス(男性)秘書官が血相を変えて飛び込んできた。


「……勇者?あっちにもいるの?」

「当然だ。貴様のような不良品ではなく、完璧に設計された正規の勇者だ」

「うわ、マジのエリートじゃん。転生ガチャSSR当てたやつ……」


「レミリア様!増援を送るべきかと……」

「ふむ……ならば、ちょうどいい実地研修になるな。ユウト、行け」

「待て待て待て!掃除係が前線っておかしいだろ!!」


だが、レミリアは俺の抗議を無視し、

「貴様には“最弱”という偽装肩書がある。敵も油断する。囮に最適だ」

と、悪魔の笑みを浮かべた。


「お前ほんと、部下に言うセリフじゃないよそれぇえええ!!」


 


*** 


 


――翌日。


俺は、“血風の砦”に放り込まれていた。


魔王軍の中でも治安最悪の前線。砦の外には勇者軍が押し寄せ、空には火球、地には魔法陣。まるでRPG終盤の最終ダンジョン。


「掃除係でーす、床どこですかー……」

逃げ腰な声を出しながら、ひっそり砦内に忍び込んでいた。


が、そこに現れたのは――


「やあ、ようやく会えたな。同じ“勇者”よ」

銀髪のイケメン、光り輝く聖剣を背にした完璧スペックのチート主人公風男子が、俺に微笑みかけていた。


「……誰?」

「私はカミヤ・セイヤ。人類の希望であり、勇者の中の勇者……そして、君の“同期”だ」


出た!出たよ!絶対バトルになるパターンのやつ!!


「さて、君には……ここで退場してもらう」


セイヤの聖剣がキラリと光る。


終わった。俺、床すら掃除できてないのに死亡フラグ立った。


「……せめて、モップだけは、きれいに置かせて……」

俺は、震える手でモップを床に置こうとした、その時――


モップが**バチッ!**と光った。


《スキル【清掃神の祝福】が発動しました》


「は?今、なんか言った!?」

モップが光ったまま、俺の身体がふわっと宙に浮いた。


《スキル:モップ・オブ・ジャスティス 起動》


モップが……剣になった。しかも超かっこいいエフェクト付きで。


「う、うおおおおおおおおおおお!?!?」


「な、なに!?バカな……そんなスキル、記録には……!」


「知らねえよ!!俺も初めて聞いたよこんなの!!」


――かくして、

最弱勇者の俺は、“聖モップ勇者”として、初の戦闘(?)を迎えることになるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る