第54話 王宮

 俺たちは衛兵っぽい人達に連れられて王宮に連れてこられた。


「聖女様、こちらへ。御付きの者達も中に入るのだ。」


 腕を失った冒険者の腕を生やしたりするから、桔梗はすっかり聖女様扱いになってしまった。それを本人が楽しんでいるのがまた癪に障る。


アキラ御付きの者。わたくしは聖女ですよ。エスコートしてくださいまし。」


「お前。絶対調子に乗ってドラゴンだって絶対バレるなよ。」

「我を誰だと思っておる。そんなヘマはせぬ。」


 そもそも、お前が冒険者ギルドで目立ったせいででこうなってんだよ!




 俺たちは王に謁見するため謁見の間の赤い絨毯の上を歩く。

 目の前にいるのは王様と蛇の杖を持った宰相っぽい人。

 2人の前で跪く。


「余は、スルタンじゃ。その方が、部位欠損を回復させたという聖女であるか?」


「はい、桔梗と申します。」


「折り入ってその方に頼みがある。我娘、バドゥールを救ってはもらえぬか?」

「私にできることであれば何なりと。王女様がどうなされたのでしょうか?」


「それは、私から説明いたしましょう。私は宰相のジャファルと申します。バドゥール様は、今重い病に苦しんでおられるのです。徐々に衰弱されております。未だ原因もわからず、唯一の希望は、砂漠の奥にあるダンジョンのにある魔法のランプなのです。現在、王国の騎士団がダンジョン攻略に向かっているのですが、王女様の容体は日に日に悪くなるばかり、今のままでは、騎士団がランプを持ち帰る前に亡くなられてしまうかもしれません。あなた様には王女様の延命をお願いしたいのです。」


 ここに貧民のアラジンが出てきたら完成してしまうな。



「わかりました。まずは王女様へ会わせていただけますか?」

「ええ、もちろんです。こちらへ。」


 俺は現在モブ状態なので、大人しく桔梗と共に王女の寝室へと案内される。


「あなたたちは?」

「バドゥール様、この者たちは、あなたの容体を見るために参った聖女様たちでございます」


「そうですか。ですが、私の体はもう。」

「この聖女、桔梗様は、部位欠損を回復させるほどの回復魔法の使い手です。必ずや王女様の体を回復させてくれると存じます。」


「まずは、様子を見せてください。」


 どうでもいいけど、桔梗の聖女のふりがうますぎる。


「これは・・・ちょっと失礼します。ちょっと相談させてください。」



 桔梗がコソコソと耳打ちしてくる。


「アキラよ。あれは魔素の過剰吸収による魔素の暴走だ。回復魔法では治せぬ。」

「え、まじ?」

「そもそも、回復魔法は、魔素によって傷口を塞ぎ、体を再生させる技。つまり、魔素を供給することはできても、吸い出すことはできぬ。」


「その通りじゃ。大量の魔素を吸えるのなぞ、お主くらいじゃ。」

 師匠のお墨付きが出た。


「ということは、撮影すれば王女様は回復するってこと?」

「一時的ではあるが、回復するじゃろうな。」


「だけど、俺がここで出しゃばると、なんか変な感じにならない?」

「そこは、我、いや私に任せて。」



「ジャファル殿、バドゥール様の容体は魔素を過剰に体に蓄えているのが原因です。一時的に、私の魔法で抑えることはできます。ですが、根本的な原因を解決しなければ、バドゥール様は助からないでしょう。」


「おお、一時的でもバドゥール様を救えるのでしたらお願いしたい。原因を取り払うには、魔法のランプを用いるしかないのですから。」


 なんだかやけに魔法のランプにこだわるな。原因を知っているとしか思えない。

 このジャファルという男、怪しいな。

 とにかく、今は、バドゥール王女の魔素を吸い出すことが優先だ。



「それでは、アキラあれをお願いしますね。」

「はい、桔梗様。」


 俺は、ユニークスキル撮影者を起動

 換装 如月35−150mm


 レンズを35−150mm F2-2.8に変更。


 35mm F2でバドゥール王女を撮影する。


「あん、あぁん。」


 撮影すると王女様が悩ましげな声をだす。

 苦しんでるわけじゃないよな?


 撮影者による魔素吸収は割合計算なので、

 一度の撮影で吸い出す魔素は1から2%。


 10回ほど撮影する。


「あぁん、もう、ダメぇ」


 王女様がぐったりしている。

 顔がほてっているが、先ほどの死人のような正気のない様子よりは随分マシだ。


「かなり魔素が減ったのじゃ。しかし、また周囲から魔素を吸収し始めておる。」

「これは、王女にかけられた呪いの類か、我がここに結界を張ろう。」


 さすが、神獣たちだ。さらっと解析して対応策を出してくる。


「こほん。王女様から魔素を吸い出し、この部屋に結界を張りました。一時的に王女様の容体は落ち着くでしょう。」


「う、うーん。私は・・・・」


「バドゥール王女。目を覚まされましたか。」


「なんだか、久しぶりに気分がいいわ。」

 グゥゥゥゥゥ


「ち、違うわ。これは、その、」

「王女様へ食べ物をお持ちしろ。」


 ジャファルの指示でバタバタと食事の用意が進められていく。


「このように元気な姫様のお姿を見たのは久しぶりでございます。皆様には多大なる感謝を。姫様はこれらかお食事となりますゆえ、場所を移してお礼をさせていただきます。」


「宰相殿、今は私の結界で魔素の吸収を遅らせているのです。一時凌ぎでしかありません。」


「ええ、わかっております。ですから、早急に、魔法のランプを手に入れる必要があるのです。」


 このジャファルっていう宰相、徹頭徹尾魔法のランプにご執心なのが非常に怪しい。

 そのランプが俺の知っている魔法のランプなら、なんでも3つ願いを叶えてくれる魔神が封印されているはずだ。


「その魔法のランプというものはどういうものなのですか?」


 ジャファルがこちらをギラリと睨む。


「私からもお聞きしても?」

「聖女様がおしゃるのでしたら・・・。王女様の邪魔にならぬように場所を移して説明いたしましょう。」


 ・・・・・


「魔法のランプとはこの地域の魔素を安定させるアーティファクトなのです。魔素を蓄積し、蓄えた魔素で大魔法を発動させることができます。ですが、魔素が過剰に蓄積されると、契約によりこの国の王族に魔素が流れ込み・・・。それが今の姫様の現状なのでございます。」



 ここでも魔素の過剰な供給が起こっているのか・・・

 この国では、年に一度魔法のランプに溜まった魔素を用いて砂漠に雨を降らせていたのだという。王宮に保管されていた魔法のランプ は、1ヶ月ほど前に降雨の儀式の場で盗まれてしまった。魔法のランプを盗んだ犯人は、アラジンという街の冒険者だった。


 しかし、なぜかロケートの魔法により見つかった魔法のランプの場所は砂漠のダンジョンの最奥だった。ただ1人の冒険者がダンジョンの最奥に辿り着けるはずもなく、なんらかの組織の影があるのではとジャファルは考えているそうだ。


 やっぱり出てきたぞ、アラジン。

 というか、魔法のランプ自体が俺の知ってるものとだいぶ違う。

 まあ、この国の騎士団がダンジョンを攻略しているので、俺たちは王宮で待っていればいい。この国の料理なんかも楽しみたいしな〜。


 そう思っていた時期が俺にもありました。


「宰相殿。騎士団が、騎士団の1人が帰って参りました。」

「騒がしいぞ。それで、魔法のランプはどうなったのだ?」

「それが、騎士団は彼を残して全滅。魔法のランプも手に入っておりません。」

「くそ、それでは姫様が助からぬ。どうすればいいんじゃ・・・」



「なに、簡単なことじゃ。こやつにダンジョン攻略を依頼すれば良いのじゃ。」

 師匠〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。そんなお約束なセリフいらないっす。



 当然、宰相をはじめとする王宮関係者の視線が俺に集まる。

 助けて、聖女様。

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