04話 怒り

 この世界にやってきて初めて出会った人間。それが原因でカオリは怒っている。人間ではないがルカという初めて友達のような存在と出会いに喜んでいたのも束の間、それを邪魔した存在。なによりルカに向かって問答無用で攻撃を仕掛けてきた。この始末どうしてくれようか。


≪……完了。戦闘サポートに移行≫


 何かが完了したようだ。戦闘開始といわんばかりにUIがいつもの淡々とした口調から殺意を感じる声色で反応した。するとカオリの視界にはターゲットマークのようなものが表示された。それはわかりやすく色分けされている。


≪ターゲットを表示しました。赤く表示されている者は最優先せん滅対象です≫


 表示を見てわかったが赤く表示されている人間は弓を持っている男だ。それ以外は黄色に表示されている。つまりルカを狙った弓矢を持っている男をUIが最初に倒せと言っているということになる。黄色ターゲットはその後でいいだろうという判断だ。この判断にカオリはおおむね同意した。だがなんとなくであるがUIの私情っぽい何かが絡んでいる気がしないでもない。


 カオリはUIの指示を尊重し先ほど掴んだ矢を弓を持つ男に向かって思いきり投げつけた。矢は男が放った時よりも明らかに早い。その証拠に男の胸に直撃した時に、ブンッ!という矢にありえない音が遅れて聞こえたのだ。カオリの投げた矢はそれだけでは留まらない。投げた矢は刺さるのではなく身体を見事に貫通した。矢は勢い止まらず貫通したまま草原のはるか後方へと飛んでいった。


「……ん?」


 矢を受けた男はまだ絶命していない。それどこか何が起きたのか理解していない様子だ。そして数秒後、矢が刺さった胸を中心に血しぶきを上げながら倒れた。


「な、なんだ!?」


 射手が突然血を吹いて倒れたことによって残った男3名はパニックを起こしていた。


 男3名がパニックを起こしている原因はカオリが何をしたかわかっていないからだ。カオリは矢を投擲したがその動作は0.5秒というとんでもない速さで動作し、人の目にはあらかじめ注視しないと正しく認識できないほどの速さだ。さらに矢は貫通している為、どのようにして男が倒れたかもわからないはずだ。


≪優先ターゲット殲滅を確認≫


「お、おい……やばくねぇか?」

「な、なにを言ってんだよ……」

「おかしいだろうが!いきなり血しぶきを上げて倒れたんだぞ!?お、俺は抜けるぞ!」


 そういって一人がこの場から逃げ出した。


 ≪可能であれば一人を行動不能にし、他はせん滅してください≫


 カオリはうなずくと真っ先に逃げ出した男に目掛けて近くに落ちている小石を投げつけた。狙いは極めて正確かつ強烈。逃げ出した男の額に石が命中するとまるでスイカのようにはじけ飛んだ。そして残った二人のうち剣を持った男がそれにびびり一瞬ひるんだ。カオリはその隙を逃さない。


 すぐさまカオリは剣を持っている男に目掛けて肉薄した。重心を左脚から右脚を移動させつつ水平に放つ。ロボットであるカオリの重量は人間と比べとてつもなく重い。かつ人間では不可能な正確性と素早い動き、それが合わさることでコンクリートを容易く粉砕する破壊力を持つ。それは強烈という言葉ではもの足りないぐらいに。そんな兵器級の蹴りを賊の腹部に炸裂させると、鈍い音とともに男の身体が宙を舞い面白いほど吹っ飛び木に激突した。その衝撃で木がへし折れるほどの威力だ。


 カオリにしては無意識に加減したのだろう。男は内臓損傷程度で済んだが、口から血を吐くとそのまま絶命した。


 残った男はすでに逃げ出していたが、ルカがそれを許していなかった。逃げようとした先をルカが先回りして逃走を阻止していたのだ。男の逃げた方向に即座に先回りし威嚇をする。違う方向に行こうとすればまた先回りをして次はもっと強い威嚇をする。そして最終的には『これ以上手間をかけさせるなら嚙み殺す』と言わんばかりの殺意全開の行動を行っていた。これにより生き残った男は完全に戦意喪失、何もする気も失せる状態に。


 複数ではともかくサシであればルカの方が分があるという判断だったのだろう。ルカのおかげ生き残った男を意識がある状態で捕まえることが出来た。まさに僥倖。


 カオリはその男の目の前に立ち、男を見下ろした。男はカオリを見上げる形になったが、カオリの表情は男の目にはどう映っていたのだろうか?いや、表情など関係ないだろう。男の顔はすでに恐怖に染まっているのだから……。


≪この戦果は非常に大きいです。男が知っている情報を聞けるだけ聞き出すことを推奨≫


「……さあいろいろ聞かせてもらおうか。なんせ私は知らないことが多くて困っているのよ。……協力してくれるわよね?じゃないと殺すよ?」


 カオリは男の髪の毛を鷲掴みにして持ち上げた。そして顔を近づけると鋭い眼光で男を睨みながら言った。男は怯えたようにうなずいている。これはいい情報が得られそうである。

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