大嫌いな魔女へ

旭森ことり

プロローグ


『魔女』

 ……予言や占い、呪術を行う不思議な力を持った存在。この圧倒的な力から、時に奇跡、時に絶望の象徴として恐れられている。

          【異教精霊書による】

 


❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁ ❁



「貴方が、看守ですか」

 夏にしては冷たい空気の漂う堅牢けんろうな地下牢に響いた声は、一人の女性の声。

「気配がお若そうですが、何歳なんですか?」

 グッと息を呑む。それから、彼女に悟られないように、静かにゆっくりと呑んだ息を吐き出す。

「口を閉じろ、“魔女”。お前に話す義理はない」

 鉄で焼かれた両目。逃げられないように切断された足先。痛々しい数々の傷跡は、彼女が何者かを表していた。


 ーーそう、〈魔女〉と。

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