【短編】森尾君にだけ優しい春風さん

奏流こころ

第1話

 不思議だなって思っている。


 苦手ならとことん避けるはずなのに。


 なんでだろう…?


「おはよう森尾もりお君。これ新しいお菓子なんだけど食べてみない?」

「ありがとう、春風はるかぜさん」

「どういたしまして」


 笑みが優しい春風 美優みゆさん。

 声色も優しい雰囲気で、耳に心地よい。


 だが、彼女には弱点がある。


「春風、ちょっといいか?」

「ごめんなさい」

「まだ何にも言ってないんだけど」

「ごめんなさい」


 男子生徒の話をよく聞きもせず、春風さんはツンとした態度で彼から離れていった。


「チッ…何なんだよ」


 男子生徒は怒ってどこかへ行った。


 春風さんは男子には厳しい。苦手なのだろう。

 ここで疑問が生まれる。


 、だ。


 のだ。


 分からない、何で優しくしてくれるのか。

 俺は何にもしていない、はず。

 記憶にない、だから優しくしなくても良いのだ。


 春風さん、どうしてなんだ?

 と聞いてみたいが、緊張するため聞けないでいた。

 誰か間に入ってくれるといいのにな。

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