転生魔法使い、現代日本で勇者になる!?

DAI

第一章

第1話 記憶と魔法


目が覚めると、そこは、ベッドの上だった。


そう聞くと、誰もが普通のことだと思うだろう、けど、違う。

僕には、この場所が何処なのか、全く記憶がなかった。

一体、何が起こったのか。僕は起き上がって、周りを見まわした。

どうやら、一軒家の寝室のようだ。



そして、愕然とした。

・・・僕は、一体、誰だ?

そう、僕は記憶を失っていた。

何か手掛かりになるものはないかと、

ベッド脇にあるテーブルをみると、そこには運転免許証があった。

僕の名前は「菰田 博(こだ はく)」というらしい。

年齢は25歳。

僕は、他の手掛かりを探すため、家の中を探索することにした。

居間に行くと、大きなテーブルの上に「菰田博」宛の郵便物を見つけた。

どうやら、この家は、自分の家のようだ。

他の部屋も探してみるが、特に手掛かりになるようなものは無かった。


それにしても、一人で住むには、大きすぎる屋敷だ。


頭が痛い。

様々な映像が意識に現れる。

巨大な翼を持つ黒い竜、涙に濡れた顔の女性、人懐っこい笑顔の金髪の少年、燃え盛る炎。

過去の何かを思い出せそうだけど、まるでテレビのザッピングのように様々な絵が脳裏に浮かんでは消えて行く。


『ハク、、、ハック。ハック!』

頭の中で誰かが僕を呼ぶ声がした気がした。

が、その声もすぐに消えてしまう。


次の瞬間、急に、頭の中がクリアになった。

そして、ある記憶が鮮明によみがえった。


この世界ではないどこかの世界。

僕は、マントを纏い、手には杖を持っている。

その杖を振ると、杖の先から、炎が真っ直ぐに放たれた。

その先には、巨大なドラゴンが。

ドラゴンは、炎を弾き飛ばすと、僕に向かって手を振り下ろした。

僕は避けられずに、そのままドラゴンの手に圧し潰されてしまった。


「・・・死んだのか?僕は。」

僕は呟いた。

じゃあ、今の自分は何なんだ?


その時、頭の中で、自分では無い女性の声が、はっきりと聞こえた。

『あなたは、大魔法使い ハック・フォクサー。

あなたは、この世界に転生しました。』

どういうことだ?

僕は魔法使い?

転生した?

頭が混乱していた。

僕は、魔法使いで、菰田博として転生した?

そんなことがあるのか?

もしかして、僕は、魔法が使えるのだろうか?

僕は、試してみることにした。


家の外に出ると、鬱蒼とした森が広がっている。

僕は両手を前に突き出して火のイメージを頭に浮かべて、念じた。

・・・何も起きない。

考えるだけではダメなのか。なら、声に出してみよう。

でも、今の僕には呪文なんてわからない。

僕は、火が出るイメージをそのまま声に出して言ってみた。

「炎よ、出ろ!」

すると、頭から腕まで電気のような何かが走っていく感覚がした。

手のひらが光り、中心が熱くなる。

ゴーッ!

手から一筋の炎が出て、正面の木に向かっていった。

「うわーっ!?」

慌てて手を引くと炎は消えた。

目の前の雑草が焦げて燻っている。

魔法が使えた!

僕は、魔法を使えたことに驚きと、安堵のような複雑な気持ちを抱いていた。


一度、魔法を使ったことで、魔法に関する感覚と記憶が少しずつ戻ってきた。

僕は、思いつく限り、色々なことを試してみた。

ファンタジー作品で見るような魔法を適当に唱えてみたり、使えると分かった魔法を他に応用できないかやってみたり。

どうやら、魔法は、詠唱の必要はなく、頭の中で言葉とイメージを思い浮かべるだけで発動するようだ。

僕は、火・水・風・土の4系統の魔法が使えるということが分かった。

この世界で、どう役に立つかは分からないが。

そもそも、外で大っぴらに魔法を使うと大騒ぎになるだろう。

僕の覚えている限り、この世界に魔法使いや魔物はいない。


どうやら、僕は記憶が無いと言っても、自分自身の記憶が断片的なだけで、この世界についての知識は残っているようだった。

この屋敷は、森の中にあるので、僕は、近くの町に出て情報収集することにした。

町までどれくらいの距離があるか分からない。

何があっても良いように、屋敷にある物で準備を整える。

魔法は非常時以外は使わないことに決めた。

無用なトラブルは避けたいからだ。

まずは、自分の記憶を取り戻すことが先決だ。

ちょっと寒いな。。。

居間には小さな暖炉がある。

僕は火をつけてみようと思った。

「炎よ。でろ。」

両手を暖炉に向けると、手から炎が飛んでいき、暖炉に火がついた。

「便利だな。」

魔法も使いようか。


僕は、リビングのテレビをつけた。

テレビの情報によると、今は21世紀。

ここはちいさな島国、日本。

僕は何故、魔法使いの力を持って、日本に転生したのか?

きっと、何か理由があるはずだ。

いずれにせよ、明日は、町に出て情報を集めよう。

僕は寝ることにした。



僕は、夢を見ていた。

ここは、エルドランドと呼ばれる世界。

僕は、魔法使いとして、勇者パーティに同行していた。

ついに魔王の城に向かう。

いよいよ最後の戦いだ。

金髪の勇者ユウ、赤髪の戦士コウ、紅一点のヒーラーのオウカ、そして、魔法使いの僕・ハック。

僕達は、あと一歩で魔王に辿り着くところまで来ていた。

そこに、魔王の側近である闇竜・ダークドラゴンが立ちはだかった。

僕は渾身の炎の魔法でダークドラゴンを攻撃するが、炎は簡単に弾き飛ばされる。

次の瞬間、ダークドラゴンの手が振り下ろされた。

そして、目の前が真っ白になった。

『ハック、ハック!』

遠くで、僕を呼ぶ声がする。僕は声のする方に手を伸ばした。




「うわーっ!!」

僕は、そこで目覚めた。びっしょりと汗をかいていた。

やはり、僕は前の世界で、死んでしまったのだろう。

その後、勇者は魔王を倒してくれただろうか?

しかし、今の僕は、菰田博だ。気にしても仕方ない。

日本で、菰田博として生きて行くしか無いのだ。


屋敷の周りを見たが、自動車やバイク、自転車すらない。

町までは歩くしかないようだ。

居間にあった地図によれば、町までは、10キロくらい。

歩けない距離ではない。

僕は準備していた荷物を持って、町に向かって歩き出した。


しばらく歩いて、町に辿りついた。

それなりに建物はあるが、郊外の小さな町と言う感じだ。

町外れの小さな神社には、不似合いなくらい立派な桜の木が立っている。

駅と線路が見えるので、電車も通っている。

まずは新聞を買いにコンビニを探す。

駅前にコンビニがあった。

新聞を買って、今のニュースを把握する。

やはり、魔物も、魔法も、妖怪も、新聞には出ていない。

元の世界での、魔王討伐の結果は、気になるが、今の僕はここで生きるしか無いのだ。

せめて、ここで自分を取り戻そう。


コンビニを出ると図書館が見えた。

あそこなら、いろいろな資料があるだろう。

僕は図書館に向かった。

町の歴史のコーナーにある本は、いろいろ参考になりそうだ。

しばらく通うことにしよう。

僕は、それから毎日、図書館に通い本や資料を読み、家で魔法の鍛錬と記憶の回復に努めた。

どうやら、僕が転生するまでの「菰田博」の知識は残っている。

そして、転生前の「ハック・フォクサー」の記憶と知識は曖昧だ。

時々、突然、フラッシュバックのようにして思い出す。

魔法についても、今は、初期に覚える魔法しか思い出せないし、使えない。

魔法は頭に思い浮かべるだけでも使えるが、強い魔法は、恐らく詠唱が必要らしい。

魔法の杖のような道具があれば、魔力の増強も可能だと思うが、この世界にそんなものは存在しないので、自力で魔力を高めていくしかない。

マニュアルのようなものでもあれば良いのだが、それももちろん存在しない。

僕の頭と体の記憶だけが頼りだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る