能力至上主義の世界で実力を示す

夢人

第1話 一変

 この世に能力と呼ばれる現象が発現して数年

 能力至上主義の世界となり、世界は変わってしまった。

 能力と実力が全ての世界!

 そんな中で底辺を過ごす中で……


 この世に能力と呼ばれる現象が発現して数十年

 強い者が世界を牛耳り、弱い者は爪弾きされた。昔の政治体制も無くなり新たな政治体制が敷かれた。

 それは、能力至上主義

 能力と実力が強ければ強いほどその人物は評価される。

 実力と言っても様々ある。

 戦闘・知能・技術、そして能力……

 あらゆる分野で優れた者が勝ち上がる。

 強きが世界を統べ、弱きはただ従うのみ。

 最初、そんな政治はまかりり通る筈が無いと誰もがそう思っていた。

 だが、違った。


 一人の天才がいた。早ノ瀬楓夏


 この人がいる事でどんどんとその罷り通る筈が無い筈のものが通っていった。

 民衆を促し、政府関係者を説得し、共感させ、能力の有用性を世間に知らしめてきた。

 それにより、賛同者増え能力至上主義社会は順調に進展していった。

 それでも、至上主義の考えに反対の者も少なからずいた。

 能力を扱えない者、能力を持たない者は能力至上主義社会に反対した。

 無能力者、落ちこぼれ

 そう呼ばれる人達が申し出たがもう既に聞き入れようとする者はいなかった。

 強行手段に出ようと考えたが相手は能力者揃い。

 力で勝てる筈もなく、あっさりとこの世界は能力至上主義の世界へと変わっていった。

 これがたった数年前の出来事だ。

 それから世界は瞬く間に変わっていった。



 キーンコーンカーンコーン



「おーい!帰ろうぜ!」


「部活行こう!」


 そんな声が響く夕日が照らす校舎の放課後。

 授業が終わり、帰路に着く者や部活で汗を流す者。様々な放課後を過ごしている。

 そんな中僕は……


「……はぁ……痛っつつ……」


「今回もこっ酷くやられたな……」


 校舎裏に連れて来られ虐めに遭っていた。

 この世界では無能な奴には与えられるものなんてほんの僅かだ。人権もその一つである。

 だからこそ、能力を駆使し実力をつけ評価を得られる。

 僕みたいな弱者には相応の評価しか得る事しか出来ない。別に能力を持っていない訳ではない。

 ただ、扱いこなせていない。能力が発動する時も有ればしない時もある。

 つまりは、生まれたての赤子も同然という訳だ。

 能力を扱えない僕は無能の烙印を押されている。それも当然だ。この世界は能力至上主義社会。


「はぁ……帰るか」


 痛む身体を起こしながら、そう呟き帰路に着くのであった。


「夕飯は弁当でいいか……」


 そんな事を呟きながら家に帰っていると、


「また酷くやられたわね」


 その瞬間、僕の前方から瑞々しい声が響き、渡った。

 そこには、とても綺麗な女性が立っていた。

 スラリと伸びた脚にこちらを見つめる青い瞳。

 一上 和奏(いちがみ わかな)それが彼女の名前だ。

 彼女も又この世界に取り残された普通の高校に通っている無能力者の一人だ。


「一上さん」


「もう!和奏で良いって何時も言ってるじゃん!」


「そういう訳にはいきませんよ。一上さんは年上なんですから」


「む〜……」


 頬を膨らせながらこちらを青い瞳が見ている。

 いくらそんなに頬を膨らせても名前呼びはしませんよ。可愛いな。


「そんなに睨んでも呼びませんよ」


「……今はそれで良いわよ。それより傷の手当てしないと」


「大丈夫ですよ。ご飯食べて、1日良く寝れば治るので」


「貴方はそうかもしれないけど……普通はそんな一瞬じゃ治らないのよ」


「……そうなんですか」と途中立ち寄ったコンビニで買ったコーヒーを飲みながら聞いていた。そんなにおかしいかな?


「兎に角、取り敢えずは消毒だけでもいいから傷の手当てしないと……」


「……分かりました」


「だったら早く入って」


「え?」と困惑しているとしばしの沈黙が流れた。

 それもそのはずだ。僕は今実家暮らしではない。一人中学校近くのマンションに暮らしているのだ。何で中学生が一人暮らししているんだって思う人もいるだろう。僕もそう思う。


「どうしたの?」


「どうしたのって、僕の家ですよ!?」


「?そうだよ?」


「何当たり前だよみたいに言ってるんですか……」


「いやだって、その通りだから」


 さも当然の様に言って……


「……はぁ、いいですよ。今に始まったことじゃないですし」


 そう言いながらドアを開け、一上さんを家の中へ招き入れた。

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