第13話「敗北」

王立陸軍レインジャー部隊の基地ではトミリ達が本格的な実戦訓練を実施していた。


ターゲットに向けてM4カービンの5.56x45mm NATO弾を打ち込むトミリ。


数発は中央に命中したが、他はやや逸れた。


「クソっ!当たらねぇ。」


その隣では、同期で入隊したカーレが、全弾見事に的の中央を射貫いた。


カーレは長身に屈強な身体を持つ若者で、ユーモアのセンスもあり、部隊のムードメーカーだった。


トミリは彼の事が気に入らなかった。


彼が自分より目立つポジションにいる事もさる事ながら、その出自が気に入らなかった。


カーレの父親は新宗ではあるが、母親が旧宗だったのだ。


身分違いの恋の果て。両親は駆け落ち同然で結婚した。そうした経緯がある。


ある日、部隊が建物に突入して敵を制圧する訓練を受けた話だ。


建物内部に突入して、テロリストに見立てた標的を撃って行く訳だが、10の標的の内で6は子供の絵の標的、つまり、撃ってはならない標的だった。


しかし、トミリは、全ての標的を撃ってしまったのだ。


対してカーレは、見事にテロリストの標的だけを確実に仕留めた。


「ちくしょう!こんなはずじゃない!俺は誰よりも優秀なはずだ!」


トミリはその心の中で悔し涙を流した。


初めての敗北、初めての挫折、そして、自分が最も軽蔑する卑しい出自の人物に敗北した屈辱感。


トミリには耐えられなかった。


訓練後、トミリはカーレに近付くと噛み付いた。


「半分旧宗の分際で意気がるんじゃねー!」と。


するとカーレが言う。


「たぶん君は、戦場で真っ先に戦死するよ。チームプレーを尊重出来ないなら、今すぐに除隊する事を勧める。」


トミリはプライドを傷付けられた。何という屈辱。


「てめぇ!」トミリはカーレに掴み掛かりそうになったが、何とか耐えた。


トミリの軍人としてのスタートは順風満帆とはいかなかった。


一方、ヒンロは砂漠のターゲットに向けてAK47Ⅲ型を撃ち込んでいた。


けたたましいフルオート射撃音が砂漠の谷間にこだまする。


その腕前は見事で、全弾がターゲットの中央に命中していた。


ある他国から来た過激派組織のメンバーは敬意を込めてヒンロをこう呼んだ。


「砂漠の狼」と。


射撃を終えたヒンロにサタレが言う「タイプⅢのフルオートで、良く全弾命中出来るもんだ。大した腕前だよ。秘訣は何だ?」


するとヒンロは静かに、しかし、鋭く斬れる言葉で答えた。


「トリガーに憎しみを込める事かな。」


ヒンロは確実に戦士へと変貌しつつあった。


今日も砂漠には焼けるような風が吹き抜けた。

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