アポクリファ、その種の傾向と対策【傷ついた本能】

七海ポルカ

第1話





『ノグラントに派遣する特別捜査官を決めたわ』


 翌日9時59分きっちりにアリア・グラーツから電話があった。

 本当に粘れるところまでは粘った感じだ。立体電子画面現われた表情にそれが現われている。メールをしたというのでそれをPDAで開いて確認した。


『アレクシスの方は手を尽くしたけど、連絡取れなかった……。

 もう一般人ですからとか言ってGIDACギダックの奴~。話の分かんない連中ね!

 ちゃんと社名もスポンサーとして出すわよって言ったのに頷かなかった……。大きな広告になるっていうのに! アレクシスを派遣したら会社の株価だって世界中で爆上がりよ⁉ 断るとか信じられない!』


 随分な重い決断を下したような声で彼女は言ったが、何故そんなことでそこまで深刻になれる人間が、人間の繊細な心の機微にこうも無神経でいられるのかと不思議に思う。


「……まあ彼らの場合会社の株価爆上がりとかはどうでもいいんですよ多分」


『なんでよ!』


「株価の話はいいですから、一言いいですかアリア・グラーツ」


『あらなによ。あんたの要望には全方向から思い切り応えたわよ⁉ 本当は応えたくなかったけど! もっとやりたいこといっぱいだったけど! 泣く泣く応えたわよ! 最大でも六人! ユラ・エンデとの関係性を考慮して【処女宮バルゴ】のルシアとメイ! ユラと同じ闇の変化能力者【天蝎宮スコーピオ】のジャニナ・バルマーも入れたわ! リーグはこの特別部隊がノグラントから帰還するまでニュートラル措置! ランキング変動なしでルシアも同意したし、全員の合意取り付けたんだから! 何の文句がある⁉』


「いえ。彼女達には一切文句はありません。他の二人も護衛として問題ないですし。

 ただなんでライル・ガードナーを入れて来るんですか」


『貴方と同じ【獅子宮レオ】所属の人間がいた方がユラも安心するでしょ? 考慮したのよ』


「ライルを入れたのをユラへの考慮だと力説する貴方が僕は怖いですよ……。

 僕は別に、僕と同じ【獅子宮】の人間がいるかどうかとかどうでもいいです。

 アイザック先輩はユラと面識があるから推したまでなんで。

 このライルの部分アイザック先輩に変えてください。それなら完璧なチームですから」


『嫌よ。アイザック・ネレスみたいな地味系アポクリファ連れて行っても【アポクリファ・リーグ】のいい宣伝に少しもなりゃしない』


『――誰が地味系アポクリファだ。殴るぞグラーツ』


「なんだ。そこにいたんですか先輩。だったらその人どうにかして下さいよ。

 ライルを単独でユラに会わせるとか絶対僕はお断りします。

 絶対あいつユラを苛めますし、いつも僕にして来る品の無い質問とかもしますし」


『しねーって』


 映らないところで笑い声がした。


「なんだ。あんたもいたんですか」


『大先生の中で俺のイメージってどうなってるわけ? 俺ってすっごくいい奴じゃん』


「うん……なんかいちいちそうやって腕組んで威圧するように見下ろしてくる感じもユラ怖がりそうだし。いいじゃないですかライル。護衛とか貴方面倒な仕事嫌いでしょう。その人がまるで僕が貴方にノグラントに行って欲しいって言ってるみたいな説明受けたかもしれませんけど、そういうことは僕一切言ってませんから。むしろ1ミリたりとも行って欲しくないです。

 いつも通り面倒くさがって貴方は【グレーター・アルテミス】で留守番しててください」


『そんなことない。俺元警官だから護衛とか無茶苦茶得意だし。

【アポクリファ・リーグ】は国際法に引っかかって普段配信出来ねえだろ。

 世界に俺様のカッコ良さをアピールするいい機会だから行って来るわ。

 お前はこの隣のおっさんと留守番してろよ』


『誰がおっさんだライルてめー。いよいよ見事に四十歳達成して慣れない年齢の十の位に今一番敏感になってる先輩に向かって』


『あんたたち鬱陶しいわね。場所弁えなさいよ。誰の前で小競り合いしてんの』

『一番場所弁えてねえのこいつ! 見ろ! こんな色々動物連れて来やがって!』

 アイザックがパソコンの向きを無理に変えて、映っていなかったライルを映した。

 例によってテーブルにヘビだの、ハリスホークだの、イグアナだのが闊歩している様子が映し出された。


『ユラちゃんの為にどれか一匹連れて行ってあげようと思ってさ。

 俺はやっぱりこの色白美人連れて行くべきかなと思ってるんだけど』


 ライルが首に悠々と巻いた白いヘビを撫でている。

『一応お兄様の意見も聞いてやるよ。この中ならユラちゃんどの子が好みよ?』

「アリア! 考え直してくださいよ! 護衛ならルシア・ブラガンザ率いる後の五人でも充分でしょう! 【獅子宮】の人間とかもはやいいです! 五人編成で行ってください!」


『ヤダ。ライル見栄えがするもの。分かってんの? シザ。

 本来ならあんたを私は連れて行きたいのよ。あんたがユラの兄だからじゃないわ。

 あんたとライルはこの! 私がスカウトした特別なタレントだから!

 ライルのプロフィールにもその旨きちんと明記するからね!

 本当はあんたとライル二人とも連れて行って私のスカウト能力を世に知らしめたかったのに……。【グレーター・アルテミス】から一歩も出られないくせに私に反抗的な態度ばっかり取るんじゃないわよ!』


「僕が【グレーター・アルテミス】を一歩も出られないことに対して他人に色々言われたことはありますが、そういう観点で文句を言われたのは初めてですね」


『おまえ……シザの事情を知っててよくもそんな情けの無いことを言えるな……。

 お前が【グレーター・アルテミス】最強の鬼軍曹とか言われるの絶対そういう所が理由だよ』


 遣り合うアリア・グラーツとシザを眺めながら、ライルが無遠慮に笑っている。


「アイザック先輩お願いですからその左右の二人説得してくださいよ。

 ベテランで離婚も経験してて四十歳にもなっていて、この世の酸いも甘いも嚙み分けて来た先輩なら出来るでしょ」


『うん。頼りながら無意味に俺を傷つけるのやめてくれるかシザ君』


『決めたわ。今回ハリスホークにする。こいつ見栄えするしさ。

 んじゃ今度俺向こうで乗るバイク選ぶから』

「ライル! 話は終わってませんよ! 何もう行くの決定みたいに言ってるんですか!」

『ん~。文句なら室長に言ってよ。だって俺別に行きます! って立候補したわけじゃねーし。うちの室長から呼び出されて何かなと思ったら、ノグラントに行って護衛をしてくれって頼まれんだもん。

 大体あんたの弟の為に俺ら派遣されるんだぜ。そこはどうもありがとう迷惑かけるねじゃねーのかよ』


「アリア。ライル単独で送り込むなんて貴方頭どうかしてますよ。

 せめてアイザック先輩連れて行ってください。この際バーターでも何でもいいですし。定員オーバーの七人目でもいいですから。アイザック先輩はライルが暴走した時に氷漬けにして止めて下さい」


『うん。誰が定員オーバーのライルのバーターだシザ。おめー今日久しぶりに言いたい放題だな。ちょっとこっち来い。ぶん殴らせろ久しぶりに』

『あんたの能力で果たして俺を氷漬けに出来るかねえ~~~~?』

『ワクワクすんな』

『アイザックとライル二人だけにするとずっとお子様みたいな喧嘩ばっかりしてるから絶対連れて行かない。ライル! 今回はクール路線で行ってよね! 出来る男よ出来る男! あんな頼りになって素敵な男がいるならぜひ【グレーター・アルテミス】に一度行かなきゃ! と思わせるのが今回のあんたの任務よ。分かった? 出来る男は説教とかされたりしない! アイザックは口煩いから連れて行きたくないわ。

 あんたがいると私が必死で選んだ特別部隊が先生に引率される学生みたいな雰囲気になる。そんな感じにはしたくないわけ!』


『誰が引率の先生だコノヤロー。そう見えるのはおめーが若手ばっかり起用してるからだろ! 三十代でもカッコいい奴山ほどいる! 四十代もな! いつから【アポクリファ・リーグ】はイケメンの二十代しか出れなくなったんだよグラーツコラ』


『シザが離脱したあとの【獅子宮】のリーグ見てれば分かるわ。

 あんたとライル二人だけだと突っ込み不在のボケ倒しになるからダメ』


『ボケてねーよ! 俺は不真面目なこいつを何とかしようとナントカ流家元みたいな気持ちで必死に教育してるだろ!』


『オーイ。今のは俺も異議ありだ。誰がボケだよ。俺なんかどこから見てもクールで冴えた突っ込みだろうが』


『いやあんたどう考えてもマイペースで手が付けられないボケ担当でしょ』

『どの辺がだよ。こんなにいっぺんに数々の生物を手懐けて世話してるの絶対頭の回転早くなきゃ無理だろ』

『そう言ってる最中にジャケットのフワフワの部分ハリスホークに突かれてる姿がもはやボケ以外の何物でもないのよあんたは』


『釈然としねえな~~~』


『シザがいたらあんたたちを整理整頓してくれるけど、今回不在だからダメ』


『そんなことねーよ! あいつが犯人見つけて荒くれたドーベルマンみたいに飛んでいくの誰がいつも食い止めてやってると思ってんだ!』

『全くだよな~。シザ大先生頭に血が上るとバイクだろうが車だろうが走行中に飛び降りたりするしさ。全然あの人冷静じゃないよね』

『ホントだよな。ユラがいねえとすぐ制御不能になるしよ。

 全然優秀な司令塔じゃねえよ』

『明日ユラちゃん戻って来るとかなると前日ほぼ使い物にならねーし。

 俺らがいっつもあいつのああいうとこフォローしてやってんだろォ』


「なんでそこ文句大爆発なんですか」


『とにかくアイザック! あんたは口も悪いから絶対ダメよ。インタビューでそんな口利いてみなさい【グレーター・アルテミス】すんごい柄悪い国だって思われるでしょうが‼ シザがたまにこの野郎とか言うようになったの確実にあんたのせいなんだからね!』


『はーい! 俺より口悪いのこいつー! 遥かに俺より柄悪いですー! 茶髪にピアスー! タバコー! 見た目ほぼ不良ー! おめー俺の口の悪さが柄悪いとか文句言うならこいつの喫煙まず注意しろよ! ライル! てめえノグラントではカメラの映るとこでは喫煙一切禁止だからな!』


『あ~っ? 非アポクリファだって喫煙くらいするだろうが』


『まあそれはそうね。ライル。今回はカメラに映る所では喫煙禁止よ』

『なんでだよー。おめーだって喫煙者じゃねえか』

『なんでだよじゃねえ! どこ行くと思ってんだ! 大学~~~~~~~~! お前がこれから行くとこ学生がたくさんいるとこ~~~~~~~!』

『だからなんだよ。学生っつったら喫煙だろ』

『どこの文化だそのフレーズは! 聞いたことねえよ! 学生はまだそんなの吸わないで全然いいの! あいつらにストレスなんかねーんだから!』


『おいおっさん。ムカつく教師にダセぇ制服に腹立つ同級生に偉そうな上級生にちょくちょく現れる面倒臭ぇテスト勉強ってどう考えてもこの世で一番ストレスに晒されてんの学生だろ。なに学生の半端ねえストレスなめてんだ。今すぐ全地上の学生に詫び入れろ』


『なにその考え方!? お前オルトロス警察云々以前に一体どーいう学校に通って来たんだよ!? 不良専門学校の卒業生か!?』


「ライル。あんた喫煙なんかしてユラに副流煙吸わせたら本当に半殺しの目に合わせますよ」

『あっはは! お前一回喫煙疑われたらしいもんな』


 ライルがケラケラと笑っている。


 思い出してシザは額に青筋が立った。

 ライルと同僚になってから、シザは所構わず喫煙するライルの習性にそれはイライラさせられて来たのだが、まあいつも一緒にいるわけではないし、オフィスにずっといるわけではないからと我慢していたのだ。

 それがある日、帰国したユラといい感じの雰囲気でデートをしていたら、ユラが少しだけ心配そうに、シザさん煙草吸われるようになりましたか? と尋ねて来たのだ。

 ギョッとして、いえ人生で僕は一本も吸ったことのない人間ですと妙に慌てて否定すると、ユラがホッとしたような笑顔を見せた。

 どうやら空港で再会してハグをした時に、シザの上着から少しだけ煙草の匂いがしたらしい。

 それで、兄が喫煙しているところなど見たことがなかったユラが、やっぱり多忙になって来たからストレスがあるのかな……と心配する意味で尋ねて来たのだ。

 そんな思い違いをしてまで自分を心配してくれた弟の可愛さはこの際別の話だが、とりあえずしてもない喫煙を最愛の弟に疑われたことに衝撃を受けたシザは、さすがにブチ切れて「お前が喫煙で肺がんになって早死にするのは勝手だが同僚に迷惑を及ぼすな!」とライルに掴みかかったのである。

 アイザック・ネレス曰く「あんなに怒り狂ってるお前を見たのは初めて」というくらい怒り心頭に達した。

 

「そうですよ。今思い出しても腹立たしいです。

 アリア。そいつはそんな命令したって隠れてすぐ吸いますよ。

 なんだ【アポクリファ・リーグ】とか言っても単なる不良集団だなとか世界中の視聴者に思われないようにライルは今すぐ派遣部隊から除名した方がいいですよ」


『いんや。それはない。だって今回の部隊のメンツ見たら断トツ俺が男前だもんよ。

 喫煙ぐらいで俺を【グレーター・アルテミス】に残すうちの室長じゃねえよ。

 なあ? アリア』


「こいつの一体どこが男前なんですかアリア。こんなもん身長でかくて態度もデカいからちょっと他より見栄えするだけですよ!」


『喫煙禁止。クール路線。そこ守ってくれるなら全然いいわよ。

 シザ、あんたの意見は聞いてない。ライルは数字獲る男だから私は使う。

 何故なら私は【アポクリファ・リーグ】の総責任者だから。

 普段の言動がどうとか全く関係ない』


『さっすが室長~! あんたのそういうところ俺最高に好きだな~!

 俺を見込んでくれる限り俺はあんたにずっと付いていくわ』

『数字録ってよ! ライル。期待してるんだからね』

『おお任せとけ。俺に不可能はない。俺は普段大概気のいい男だが今回はクール路線で決めてやるから期待しろ』

「アイザック先輩貴方が無力なせいですよ」

『なんでだよっ!』

「あんたが素敵でカッコいい四十歳だったらアリア・グラーツ如きにこんな論破されることは無かったんですよ」

『俺は十分自分では素敵でカッコいい四十歳のつもりだっ! 生まれながらの美形は黙っとけコノヤロー!』


「分かりました。ではもういいです【アポクリファ・リーグ】の宣伝は宣伝として貴方の好きなようにやってください。その代わりユラの所には訪問とか一切しなくていいです。

 僕から個人的にルシア・ブラガンザとメイ・カミール辺りに時間があったらユラと会って一言元気かどうか確かめてくれって頼んでおきます。

 グレアムには他の人間には一切ユラを会わせないように釘を刺しときますから。

 そっちはそっちで好きにやってください。

 僕は今回ユラをメディアの玩具には絶対させません。

 アリア、僕は僕でドノバンの所から護衛を派遣しますから。

 貴方にはもう頼まない!」


『あらら。シザ大先生いよいよ殻に閉じこもっちゃったよ』


『アリアよぉ……滅多にない【アポクリファ・リーグ】遠征にはしゃぐあんたの気持ちは分かるけど。今回はそういうはしゃいだ空気あんま出すと、シザとかじゃなくて世界中から反感買うぜ。

 ノグラントのあの賢い学生連合の連中ですら、この兄弟に気を遣って、捜査局から天文台に移る時ユラのことあんま撮らないようにしてただろ……。

 それを【グレーター・アルテミス】から来た連中があからさまにメディア路線で行ってみろ。さすがのお前でももしかしたら地球外の辺りから説教食らうことになるかもしれんぞ。月本部辺りからよ。

 頼むから今回は護衛として徹してくれよ。んでユラにあんま精神的負担とか掛けてくれるな。俺も見ててさすがに忍びねえよ。ルシアなんかはそういうあたりきっちり分かってやるタイプだから、俺なんか付いていく必要はないと思ってるけど……。

 お前のそのやたらウキウキした感じが一体何するつもりだってシザを不安にさせてんだよ。

 今回だけはユラの状況優先にしてくれ。

 そこんところどうだ。約束してくれねえなら俺は今からシザとドノバンのとこ行くわ。

 シザの言う通り、リーグの宣伝とユラの護衛仕事は完全に別にした方がいいって頼む』


「アイザック先輩……ありがとうございます」


『現在ランキング十四位で降格圏からちょっと間が空いたくらいのあんたが私に意見するわけ?』


『うるせー! ランキングのことは今言うんじゃねーよバカ! 

 大人として分かったのか分かんないのかだけ答えろ! アリア・グラーツ! 

 俺はもう離婚も経験して失うもの何もないし、お前なんか怖くないからな!

 ユラのこの三カ月見て来ただろ! 可哀想だと少しは思え!』


 アリア・グラーツは反省の色なしでツーンとしている。


『ライルも分かったな! お前のクール路線とかはどうでもいいけど、ユラが困るようなことしたり、気疲れするようなことは絶対すんな。遊びでユラはあそこにいるんじゃねえんだからよ! ってあだだだだだだああああああああ! 今! 俺すっごい青色のでっかい鳥に頭食べられてる!』


『ルリコンゴウインコだそれ。お前が側で五月蠅かったからイラついたんだな。

 イライラすると嘴で色んなもの突いて穴開ける習性がある』


『あっそう! 教えてくれてありがとな動物博士! ルリコンゴウインコもノグラントに連れて行くの禁止だから! ピアノ弾いてるユラが突かれてこんな風に頭に穴開いたら最悪の事態だから!』


『あ~なんだよぉ。綺麗な色だからユラちゃん気に入るかもしんねーのに~』


『とにかく分かったな! アリアも! ライルも!

 今回はユラ優先だ! あいつはシザの弟だけど兄貴と違って人に嫌なことされても殺し屋みたいな目で睨んで不満を訴えられないし、腹立つことあっても一撃で壁とか車とかに穴開けたり出来ねえの! 内に籠るタイプだから! 兄貴と違って!

 そこのところちゃんと分かってあげて!

 ……シザ、こんな感じでどうだ。

 俺の最大に頑張った説教こんな感じ。

 もうこれ以上何も出ない』


「ありがとうございます。アイザック先輩。ちょこちょこ僕の悪口言ってたことは分かりましたけど、ユラを優先してくれという願いが完全に僕と一致しましたので、僕の悪口とかどうでもいいです。今初めて貴方を先輩と呼びたいと心から思いました」


『今初めてって言ったかお前?』


『言いたいことあんたたちそれだけ?』


 不服そうにアリアが頬杖をついた。

 彼女も多少はしゃぎ過ぎたという自覚はあったようだ。

 シザの見た所、問題点はライル・ガードナーだけで他の五人は比較的常識人だ。

 三カ月の不当拘留からようやく解放されたユラに、気を遣えないような人間ではないだろうと彼は思ったので、アイザックがアリアにここまで言ってくれたことで、シザの怒りの留飲は下がった。


「アイザック先輩のおかげで大体不安は払拭されましたけど。

 一つだけまだ文句があります」


 シザが言った。


『なによ。もう話は出尽くしただろ』


 ライルが欠伸をしながら返して来る。


「ライル、あんたあと一回でもユラのこと『ユラちゃん』とかムカつく呼び方したら殴りますよ」


 数秒後ライルが吹き出して、文字通り話はまとまったのである。


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