ラーメンとライバル
中村ラーメン、龍鳳高校近く、千葉
中村ラーメン、キャプテン中村陸の家族が経営する居心地の良い店は、龍鳳高校から歩いてすぐの場所にあった。龍鳳バスケ部はテーブルを寄せ合って座り、白陽との激しい練習試合の勝利の余韻に浸っていた。昼時の店内は、シチューの香りが漂う中、妙な緊張感が漂っていた。チームは試合後の学生服やジャージ姿で、箸を手にラーメンを待つ。テーブルの端には背の高い人物が座り、広い肩と刈り上げの黒髪が目立っていた。1年生の中島優斗、西田健太、佐藤陸が怪訝な視線を向ける。
中島優斗が佐藤陸に身を寄せ、囁く。「あのオッサン、誰だ?」
佐藤は箸をいじり、チラリと見る。「さあ。座るまで気づかなかった。」
西田健太が耳をそばだて、呟く。「石橋先輩の知り合いじゃない?試合中に話してた。」
キャプテンの中村陸が箸をテーブルに叩きつけ、灰色の目を細める。「おい、なんでチームの昼飯に紛れ込んでんだよ?」
背の高い男がニヤリと笑い、首を掻く。「悪い、自己紹介まだだったな。」
中村の眉がピクつく。「そこじゃねえ!カウンター空いてんだろ!カウンター!」カウンターの空いたスツールを親指で指す、店の賑わいが背後に響く。「それに、極円のエースがなんでここにいるんだよ?」
1年生たちが一斉に叫ぶ。「え、なに!?」
石橋春樹、トゲトゲの髪が揺れ、口を開く。「実はな—」
男が手を振って遮り、ニヤリ。「いや、俺が言うよ。極円高校、立花黒樹だ。」短い黒髪、両サイドと後ろが刈り上げで、大人びた顔は高校生らしからぬが、目は少年のようなイタズラで輝く。
空気が重くなる。2年以上のメンバー—中村、工藤大知、葉山翔吾、森啓太—は目を細め、立花を即座に認識。去年の大会で極円に叩きのめされた記憶が、腹の底でまだ疼く。1年生たちはそのエリート校のオーラに縮こまる。白根レンジと田中瞬が好奇の視線を交わし、ラーメンを待つ。
立花、空気を読まず、声を張り上げる。「よし、話すぜ。マジでラーメンが食いたくてさ、中村ラーメンが千葉一ってブログ見て、近所だし『行ってみっか!』って。そしたら龍鳳の体育館からすげえ歓声—スニーカーのキーキー、ボールのバウンド!バスケバカの俺、絶対見なきゃって!気づいたら忍び込んでた、ヤバい奴みたいに!」大声で笑う、遠慮なし。「みんな試合に夢中で気づかねえけど、石橋さんに見つかった。『頼む、置いてくれ!』って。無断侵入で捕まりたくねえからさ。で、彼がOKしてくれて、こうしてラーメン食いに来た!」
中島が目を細める。(普通なら帰るだろ?)
佐藤がニヤニヤを隠し、箸をくるくる。(なんかコイツ、バカっぽいな。)
西田が首を傾げる。(怖くねえな、意外と。)
山田海斗、白陽戦の審判を終えたばかりで水を飲み、眉を上げる。(コイツ、試合よりうるせえな、) と首を振る。
斎藤春人、審判の汗を拭きつつ、山田の隣で小さく笑う。「よくこんなとこに来たな。」
立花の視線がレンジに止まり、箸で指す。「お前、名前は?最後のダンク、なんか変だったな。バレーのスパイクみたい、でもマジかっこいい!」
レンジが目をパチクリ、自分を指す。「俺?」
瞬が鼻で笑い、肘で突く。「お前以外いねえだろ、レンジ。」
立花がニヤリ、名前を拾う。「レンジ、ね。いいな。よし、俺とお前、1対1、今やろうぜ!」店が凍る、箸がカチャリ。1年生が目を丸くし、2年以上の目が鋭くなる。
立花が手を振って、大声で笑う。「冗談、冗談!みんな試合でクタクタだろ、わかるよ。また今度な。つーか、ここにいるんだし、極円と練習試合はどう?面白そうじゃね?」
店が静まり返る。中村の顎が締まり、工藤の箸を持つ指がピクつく。葉山と森が警戒の目を交わす。(コイツ、頭おかしい、) 森が思い、ポニーテールを振る。
立花の笑みが揺らぎ、空気を感じる。(ヤバ、まずったか?) 「いや、マジで冗談!」と慌てて笑う。「勝手に決められねえよ。さっきの試合でテンション上がっちまっただけ!」
中村が身を乗り出し、灰色の目が光る。「いいぜ。去年からリベンジしたくてウズウズしてた。どれだけ成長したか試すにはバッチリだ。」
空気がビリビリ。立花が目を丸くする。「お、マジ冗談だったって!それに、リベンジが練習試合じゃ味気ねえだろ?」2年以上のメンバーがムッとし、工藤の拳が白くなり、葉山の緑の目が細まる。
立花、汗をかき、手を振る。(おいおい、火つける気なかったって!) 「よし、ラーメンはまた今度!コートで会おうぜ。早々に負けんなよ?」ニヤリと立ち上がる。
中村の声が切り裂く。「見てろよ。」
立花がドアに向かい、肩越しに叫ぶ。「ツケにしといて!次払うから!」
中村の眉がまたピクつく。「おい、先に払え!注文して逃げるな!」(コイツも工藤と葉山のバカどもと同じだ、) と睨む。
工藤と葉山が凍り、顔を見合わせる。(今、コイツの心読まれた?) 工藤が思い、箸を落とす。
1年生たちが一斉に息を吐き、緊張が解ける。中島が額を拭う。(息止めて死ぬかと思った。)
店が静まる。中村の母がキッチンからラーメンの丼をトレイで運び、温かい笑顔で気まずさを切り裂く。「さ、食べな。腹ペコじゃバスケできねえよ!」
瞬が飛びつき、ニヤリ。「いつも最高だな。日本一のラーメンだろ!」
チームがズルズル食べ始め、レンジの好奇心が静けさを破る。「あの立花って、どれくらい強いんだ?」
1年生たちがラーメンを喉に詰まらせ、咳き込む。(もうその話終わっただろ!) 西田が顎のスープを拭い、思う。
森啓太、ポニーテール揺らし、背を反らす。「千葉はすごい選手だらけだ。だから毎年インターハイに2チーム出せる。その中でも、立花は神聖高校の霧島陽司と並んでトップだ。どっちも最強。」
工藤大知が低く頷く。「忘れんなよ、地区のトップ選手たちとやってんだ。」
葉山翔吾がニヤリ、緑の目が光る。「16年も交互に優勝してる。それが奴らの強さの証明だ。」
レンジの箸が止まり、黒い目が細まる。(千葉のトップ選手、か。早く上達して、そいつらに備えなきゃ。)
瞬がズルズルすすり、ニヤリ。「心配ねえよ。龍鳳にもバケモノ揃ってる。先輩たち、レンジ—お前もバケモノだろ、どんどん強くなってく。」
中村の母がカウンターから笑う。「大口叩くねえ、調子に乗んなよ。ラーメンおかわり?」
森が丼を掲げ、ニヤリ。「お願いします!どんどん持ってきて!」
チームがどっと笑い、気まずさがスープの温もりと談笑に溶ける。窓から差し込む陽光が、チームの笑い声を照らし、これからの戦いに向けた絆を固めた。
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