第35話「ぽっちゃり魔王とタクミの村お手伝い」

魔王の城の朝。ベルファゴールは寝台でゴロリと寝返りを打ち、もふもふの髪が朝陽にキラリ。ぽっちゃりな腹が静かに鳴る。

「フン、今日は優雅に過ごすぞ!」

 そこへ、聖女ルナーティアが白いドレス姿でそっと現れる。手に持つのは、ふわっとしたパンケーキだ。

「ベルファゴール様、朝食にパンケーキはいかがですか?」

 メープルシロップの甘い香りが漂い、ベルファゴールは目を細める。

「最高のパンケーキを頼む!」

 内心では、「ルナの朝食……楽しみだな」とニヤリ。7年前、16歳で邪神を倒した幼なじみ夫婦。今は新婚の甘い日々を満喫中だ。

 だが、静かな朝を破る元気な声が響く。

「魔王さーん! 村で手伝ってよ!」

 城の門から叫びながら突進してきたのは、村の少年タクミ。木の剣を手に、キラキラした瞳で訴える。

「タクミ様、朝からお元気ですわね」

 ルナーティアが穏やかに微笑むが、タクミは勢いよく続ける。

「村の川が詰まって、畑に水が行かないんだ! 僕が直すって約束した! 魔王さん、教えて!」

「フン、ガキが川直しだと?」

 ベルファゴールが呆れ顔で呟くと、ルナーティアの妹クレアが乱入してきた。ショートカットの髪を跳ねさせ、パンケーキをパクリ。

「うわっ、姉貴、美味い! でもタクミ、生意気! 魔王さん、ぽっちゃりで川仕事できる?」

「無礼な! 俺の体型は完璧だ!」

 ベルファゴールがムキになって反論すると、ルナーティアがクスクスと笑い、彼は真っ赤に。

 そこへ、国王ディオスがやってくる。

「ベルファゴール、タクミが川を直すって聞いて、村人たちが応援してるんだ。一緒に見てあげてくれ」

 穏やかな笑顔のディオス。村人たちはタクミのやる気に感動し、「タクミ、頼んだよ!」と川辺に集まっているらしい。

「フン、ガキの挑戦か……ルナが行きたいなら行くぞ」

 ルナーティアが「ベルファゴール様、タクミ様の努力、見守りましょう」と微笑むので、一行は村の川辺へ向かうことに。

 川辺では、タクミが小さなスコップを手にキリッと立つ。川が枯れ葉や枝で詰まり、水が流れていない。村人たちが「タクミ、頑張れ!」と声援を送る。

「よーし、僕が直す!」

 タクミがスコップで葉っぱを掘り出すが、大きな枝が動かず、「うーん、重い!」と悪戦苦闘。クレアが「タクミ、弱いじゃん!」と笑う。

「タクミ様、落ち着いてくださいね」

 ルナーティアが穏やかに声をかけ、そっと手を振ると、聖なる光が川を包む。詰まっていた枝がふわっと浮き、流れが少し動き出す。

「ルナーティアさん、ありがとう! でも、僕も頑張る!」

 タクミは諦めず、村の子供たちと協力して残りの葉っぱを片付ける。ベルファゴールが「フン、悪くないな」と呟くと、タクミが「魔王さんみたいに、村を守るんだ!」と目を輝かせる。

 ベルファゴールは7年前を思い出す。ルナーティアと出会い、「守る強さ」を学んだ日々。タクミの姿に、自分の過去を重ねていた。

「タクミ、強さは力だけじゃねえ。仲間と協力することも大事だ」

「うん、わかった! みんなで村を守る!」

 タクミと子供たちが最後の枝をどかすと、川が「ゴーッ」と流れ出し、村人たちが「タクミ、すごい!」と拍手。ディオスが「畑が助かったよ!」と笑う。

クレアが「タクミ、成長したじゃん!」と笑う。

 城に戻ると、ルナーティアがパンケーキを並べる。

「ベルファゴール様、タクミ様、立派でしたわ」

「……まあ、悪くない」

 ベルファゴールはパンケーキを頬張り、内心「ルナとガキの成長を見るのも悪くねえ」と幸せを感じる。ルナーティアの手を握る彼の目は、愛で輝いていた。


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