第26話「ぽっちゃり魔王と魔女のいたずら再来」

魔王の城の昼下がり。ベルファゴールは窓辺でゴロリと寝そべり、もふもふの髪をそよ風になびかせた。ぽっちゃりな腹が満足げに鳴る。

「フン、今日はまったり過ごすぞ!」

 そこへ、聖女ルナーティアが白いドレス姿で現れる。手に持つのは、ふわふわのシフォンケーキだ。

「ベルファゴール様、午後にシフォンケーキはいかがですか?」

 甘いバニラの香りが漂い、ベルファゴールは目を細める。

「最高のケーキを頼む!」

 内心では、「ルナのケーキ……楽しみだな」とニヤリ。7年前、16歳で邪神を倒した幼なじみ夫婦。今は新婚の甘い日々を満喫中だ。

 だが、静かな昼を破る奇妙な笑い声が響く。

「キャハハ! ベルファゴール、久しぶりー!」

 窓から小さな影が飛び込み、紫髪の小柄な魔女シルヴィが現れた。魔界の住人で、以前も城で騒動を起こした張本人だ。杖をくるりと回しながら、ニヤリと笑う。

「シルヴィ様、突然ですわね」

 ルナーティアが穏やかに微笑むが、シルヴィは「退屈だったから遊びにきたよ!」と杖を振る。すると、部屋の家具がふわっと宙に浮き始めた!

「何だ、このちび魔女! また問題起こす気か!」

 ベルファゴールが慌てて立ち上がると、ルナーティアの妹クレアが乱入してきた。ショートカットの髪を跳ねさせ、シフォンケーキをパクリ。

「うわっ、姉貴、美味い! シルヴィ、面白そう! でも魔王さん、ぽっちゃりで魔法止められる?」

「無礼な! 俺の体型は完璧だ!」

 ベルファゴールがムキになって反論すると、ルナーティアがクスクスと笑い、彼は真っ赤に。

 そこへ、重い足音とともに魔界の使者ザルクが登場。

「シルヴィ、また問題を起こしてるのか?」

 黒いマントを翻し、鋭い目で睨むザルク。だが、シルヴィは「ザルク、堅いよー!」と杖を振り回し、ベルファゴールの髪が突然ピンク色に!

「無礼な! 俺の髪を元に戻せ!」

 ピンク髪のベルファゴールを見て、クレアが「魔王さん、似合うじゃん!」と大笑い。ルナーティアも「ふふ、可愛らしいですわ」と微笑み、彼はさらに赤面する。

 騒ぎの中、国王ディオスが慌てて乱入してきた。

「ベルファゴール、助けてくれ! シルヴィの魔法が王宮にも届いて、書類が宙を舞ってるんだ!」

 情けない顔のディオス。シルヴィが「ついでに遊んじゃった!」と笑うと、ザルクが「いい加減にしろ」とため息をつく。

「シルヴィ様、少しお控えくださいね」

 ルナーティアが穏やかに進み出る。彼女がシルヴィの手を取ると、魔女は「ルナーティア、優しいね! じゃあ、ちょっとだけね」と杖を止める。宙に浮いていた家具がドサッと落ち、ベルファゴールの髪も元に戻った。

「フン、ルナがいるから助かったぞ」

 ベルファゴールが呟くと、クレアが「魔王さん、姉貴に甘すぎ!」と突っ込む。ディオスが「助かったよ!」と笑うが、「国家機密を漏らすなよ!」と釘を刺される。

 ルナーティアがシフォンケーキを並べ、「シルヴィ様、ザルク様もご一緒にどうぞ」と微笑む。シルヴィが「やった、ケーキ!」と目を輝かせ、ザルクは「次は抑えろよ」と呟きながら一口。

「……まあ、悪くない」

 ベルファゴールはケーキを頬張り、内心「ルナがいるなら騒がしくてもいい」と幸せを感じる。シルヴィが「また遊ぶね!」と去り、ザルクも後に続く。ルナーティアの手を握るベルファゴールの目は、愛で輝いていた。


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