第77話 レンタルノート

過去の僕、ありがとう。


ちょっと気になってたから、メモに残してなかったっけと思ったら、やっぱり残してくれていた。


えーと……。


『レンタルノートの性能が拡張されます』


『パーティメンバーはマスタースキルを任意のタイミングで発動できるようになります』


『パーティメンバーの効果期間は168時間になります』


『パーティメンバーの効果が切れた場合はパーティでの戦闘を行うことで再度発動します』


そういえば、そもそも委員長が使えるようになる機能自体が『レンタルスキル』って名称だったんだっけ。


「168時間……つまり、1週間きっかり『レンタル』出来るってこと?」


実際に委員長がダン高ダンジョン高校でスキルノートを使えたってことは、そういうことなんだろうね。


「効果時間……ってことは、もしかしてバフ・・みたいなものってこと? スキルが使えるようになるバフとか聞いたことないんだけど……」


『バフ』というのは、攻撃力を上げたり防御力を上げたり……といった『補助魔法』のことで、それこそ委員長の覚えたスキル『おうえん』や『おまもり』などがそれに該当するようだ。


まあ、ある意味でマスタースキルが使えるようになることは『強化』とも言えるのだろうか。


ちなみに、攻撃力を下げたりするような弱体魔法のことは、『デバフ』というらしい。


こういった用語は、特にオンラインゲームなどをきっかけに、日本でも広く使われるようになった言葉なんだそうな。


「基本的にバフは効果時間があって、その時間内という制限はあるけど、かけた本人から離れても効果が持続するって性質があるんだよ」


確かに、『時間制限』と『強化が持続する』って性質があることからすると、バフに類したスキルって言えるのかもしれない。


一方、委員長のボス戦の時のように、一定の距離を取ることで効果が出なくなったスキル【たたかう】は、バフではないということなのだろう。


「ある意味で、範囲にいるパーティメンバーが効果に巻き・・込ま・・れて・・いる・・感じだよね、【たたかう】の方は」


まあ、他のスキルを知らないから、僕の方には比較対象が無いのだけれど。


ただ、【たたかう】が使える条件とか、範囲とかって辺りについては、ある程度は確定させる必要があるのかなとは思っている。


範囲内にいる人なら無差別に使えるのかとか、範囲に入った瞬間に効果が出るのかとか。


もし勝手に、知らない人が近くに来たことで混ざられたら色々と困るのだけど、でも試しようがないのが難しいところだろうか。


「えーと……結局のところ、スキルの全容が日野くんでも分からないってことと、効果は私が見たままだった、てことぐらいかな、分かったことはといえば」


まあそれでも、僕単体では検証のしようがないからね、色々わかって良かったよ。ありがとう。


「むしろ感謝しなきゃなのは私の方だって。スキルノート? レンタルノート? がもし無かったら、あの的に当てられなくて、Eランクの許可が出なかったところだし」


あれ? でもそういえば、委員長の10層攻略は一応魔石と併せて報告してあったよね。


それなら、Eランク昇格になるんじゃないの?


「あー……ちょっとその辺って微妙らしくって」


──どうやら、ダン高ダンジョン高校の生徒については、冒険者ギルドの管轄から外れているらしく、外部組織による評価は参考・・にまではするものの、実際に昇格するかどうか判定を行うのは学校側になる、らしい。


そのため、委員長がソロでボスを討伐したという冒険者ギルドでの評価記録があっても、それで必ずしも昇格、とはならなかったようだ。


ただし例外として、18才の誕生日を迎えた場合には、冒険者ギルド側の判定も適応されるという。


要は、『ダン高ダンジョン高校の特別措置(18才未満のダンジョン探索権など)についてはダン高ダンジョン高校に裁量権がある』とのことで、その点において冒険者ギルドは一切介入できないんだそうな。


でもそうなると、ギルドの判定を適用できるようになる委員長の誕生日って……


「あ、うん。私って2月生まれだからね……ほぼ卒業までFランクだったかもしれない」


そう、彼女の誕生日はバレンタインデー当日の2月14日らしく、女子の友人たちから冗談半分に手作りチョコを送られていたのを覚えている。


同級生の男子が『一面が百合の花畑だ』とのたまっていて、何言ってんだこいつと思ったけど、後に何かの動画だったかでその意味を知ることになり、ある意味で深く記憶に残った出来事になってしまった。


まあ何にせよ、委員長と引き続きパーティを組めるのであれば、こちらとしてもありがたい。


……何せ、あのハイオーク青オークで散々思い知らされたからね。


僕には『高火力のダメージ技』が足りていないって。


だから、その点において委員長の存在は心強いし、僕に利用価値がある限りでいいから一緒に活動していってほしいと思っている。


しかし、火力の件については、本当に今後の大きな課題ではあるよね。


もし魔力耐性があるモンスターが出て、しかも僕の物理の火力ではダメージが通らない、なんて事態になったら目も当てられないし。


普段から彼女を頼るのであれば、担当する物理攻撃ぐらいは、真っ当に成果を出せるようにしたいところだろう。


それに、あと最低でもあと8カ月ぐらいは委員長が学校に所属しているわけで、その間に試験か何かで不在になることもあるだろうし。


何か・・あった・・・に、それを打破できるだけのチカラってものが欲しい。


……メイス系の魔道具って、あったりするのだろうか?


ギルマスの【アイテム鑑定】に不要のお知らせが叩きつけられたから、そういった相談をしてみるのもいいかもしれない。


まあ、まだ『スキルゲージ』っていう改善できる余地はあるし、16層以降のモンスターからスキルを得られる可能性もあるしで、それでも行き詰まったらかな。お願いするとしたら。


……相当先延ばしにし過ぎて『いい加減にしろ』って言われる可能性もあるか。うん。


まあ、その場合の妥協案もこれにしておこう。


さて、とりあえず委員長が今日会って話したかったのは、この『ソロ申請の結果報告』と『レンタルノートの件』の2つだったようだ。


「ちなみに、だけど」


ん? 何だろう。


「スキル関連で何か他に分かってることってあったりする? 言い忘れてることとか」


……まあ確かに、最初からスキルノートが使えると知っていたら、場合によってはダン高ダンジョン高校でも、もっとマシな立ち回りが出来たかもしれないからね。


「うーん……まあ、出来たとしても、そっちの道を選んだかは微妙かな……ううん、たぶん選ばなかったと思う。日野くんと会った時点でパーティを続けることに辟易としていたから」


……そういえば、嘘をつかれて置いていかれたんだったか。まあ、そりゃそうか。


んー、委員長に関わることで、となると……『うばう』の件はまだ言ってないけど関係ないだろうから後でもいいか……他に何かあったっけ?


あ。そうだ、あったあった。


散々言おうと思って機会を逃していた件が。


でもそうだな……アレを委員長に見てもらうとなると、地上でなるべく誰にも見られない場所ってのが必要になるか。


一応、歩いて行ける範囲に大きめの公園とかもあるけれど、下手に誰かに見られたり、それこそ動画に撮られでもしたら、結構な大問題になりそうだし。


ねえ委員長、この辺りで公共施設でも何でもいいんだけど、なるべく誰にも見られなさそうな会議室を借りられるところってあったっけ?


委員長もこの辺りが地元だし、近場で知ってるなら助かるんだけど。


「会議室? それなら多分、冒険者ギルドの方で貸してくれるんじゃないかな。それこそ、藤箕ふじみダンジョンは元々が高校だし、空き教室は大量にあるはずだから」


──どうやら、冒険者ギルドのサービスみたいなものの1つとして、パーティやクラン向けの会議に使う場所として、大抵はダンジョンに併設された冒険者ギルド内に、20人ぐらいが入れる会議室が2つ3つは用意されているんだそうな。


ここは元・高校だけに、40人単位で入れる教室が大量にあるから、言われてみれば確かに借りれてもおかしくはなかった。


それじゃ、野口さんか甘井さん辺りに聞いてみればいいのかな? とりあえず地上に戻って確認してみようか。

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