転生したら魍人と呼ばれる存在だったので魔王討伐します。
ゴーヤチャーハン
異世界へ
俺はいつも通りの時間に、いつも通りのタイミングで歩き慣れた道を歩いている。全く…俺は一体どこで道を踏み間違えたんだろうか。
「くっっっっそ…」
俺はいわゆる社畜という人種だ。同じ事を年金を貰える年まで繰り返す。そういう人生だ。オマケに喫煙室に入り浸ってるから肺は保険の教科書に載せれそうなくらい黒くなっている。
「ん…」
俺の目に入ったのは赤信号なのにボールを追いかけて横断歩道に飛び出している子供だった。そして、そこに猛スピードでトラックが迫っていた。その瞬間、俺の体は考えるより先に動きだし、子供の背中を押していた。
「あ…」
そして、俺は吹き飛ばされ、コンクリート製の地面に仰向けになって倒れていた。くっそ…俺は多分死ぬんだろう。身体が燃えるように熱い。
「禁煙なんてクソ喰らえだ…」
起き上がりたいが、足がクソみたいな事になってそうだ。考えただけで気持ち悪くなってくる。学生時代、自堕落な生活を送ってツケが回ってきたのか。胸ポケットに入れていた煙草を最後に吸うか…副流煙なんて知ったこっちゃねぇ。どうせ死ぬんだ。最後くらいいいだろ。
「もうちょっと頑張ればな…」
俺はいつもとは違う感覚に包まれながら、目を瞑った
――――――――――――――――――――――――
……気づけば俺は洞窟の中に居た。目が暗闇に慣れたからある程度が見えるようになったが…いかんせん鍾乳洞とかしか見つからないな…しかも肩に違和感がある…どうなってるんだ?
ポチャンッ――
「ん?何だ?」
俺が足元を見ると、そこには水溜まりがあった。少しばかりだが光を反射している。
「……あれ?」
俺は自分の目を疑った。水溜まりが反射した俺の姿は俺の知っている姿ではなかった。
「………は?!?!」
水面に写っていたのは、皮膚は薄紫色で、眼球は白くなっていて、口元の皮膚の一部は無くなっていて筋肉が露出している…まるでゾンビのような外見。そして2本の腕が、肩甲骨のあたりから生えている異形の姿だった。これが俺なのか…?待てよ…俺の名前って何だっけ…一つも思い出せない…
俺は4本の腕で頭を抱えて悩んでいた。俺はここから出れるのか?もう目が完全に慣れて来た。
「しゃぁぁぁぁぁ…」
「…何だ?」
足元から生物の鳴き声のような音が聞こえて、足元を見るとそこには茶色の皮膚に角が生えた蛇がいた。
ぎゃるるるるるるる
そして、丁度よく俺の腹が空腹である事を知らせてくれた。確かに3時間くらい此処から動かずにいたから腹は減るだろう。
「………ごめん」
俺は蛇を捕まえると、首元?に向かって手刀をした。俺の体が強いのか、蛇の体が軟弱なのかわからないが、手刀で蛇の体を切断した
「腹を括るしかないか…」
俺は蛇のことを食い始めた。食べ始めた頃は生臭さで何度もえずいたが、少し食べ続ける内に意外にも美味しく感じ、数分で食べ切ることができた。
「ご馳走様でした…」
俺は満腹感の後に襲いかかってきた罪悪感に押しつぶされそうになりながらも、感謝の気持ちと蛇に対する謝罪を心の中で唱えながら手を合わせた。
…さて、いよいよやることが無くなってきたな…よし!移動しよう。此処にいてもどうにもならない。僅かに光が漏れ出している場所に向かって俺は四つん這いの状態で足元を確認しながら移動し始めた。
「あそこか!」
俺は光を見つけて、立ち上がると光の発生源へ向けて走り出した。だが、向かう途中で突然、足場が無くなり穴へと落ちてしまう。
「痛ッ!…くない?」
意外にも本来感じる筈の痛みは無く、自慢の感触以外は特に何も感じなかった。
スーッハーッ
痛みを感じなかった事に気を取られていて、気づかなかったが、俺の落ちた空間には明らかに巨大な生命体がいるのは明白だった。
「――ッ!」
落ちた空間には紅い鱗を身に纏ったドラゴンのような生命体が大きな寝息をたてていた。おそらくこんなのとまともに戦えるなどと考えるべきではないだろう。
「とっとと逃げるか…」
俺は小声で呟くと、ドラゴンの横を通って移動して落とし穴の壁まで歩く。周りからしたら足音は無いに等しいのだろうが、とてつもなく大きく聞こえる。
…よし。壁まで着いたぞ…鼠返しの様になってるが何とか登れるぞ…
俺はロッククライミングの要領で壁を4本の腕で攀じ登り始める。右肩の腕が淵を掴んだ瞬間、掴んだ箇所が大きな音を立てて崩れてしまう。
「あ!!」
幸いにも、俺の左肩の腕が淵を掴んだおかげで、這い上がる事自体はできたが、嫌な予感が俺の背中を駆け抜ける。
スーッハーッ
明らかにドラゴンは俺の方を向いて呼吸していた。振り返ると、ドラゴンの冷淡な目は俺の事を見つめていた。
「ぎゃあああおおおおおおおお!!!!」
全長だと10mも超えそうなドラゴンの鳴き声は俺の洞窟内に反響しながら俺の耳にキーンッという音共に耳に入ってきた。危険を察知したのか分からないがコウモリ達が洞窟の外へと逃げ出していった
「くっそ!やってやる!」
俺はドラゴンに対して向き直ると、姿勢を低くして構えを取った。
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