NTR(なんの変哲もない・ただの・ラブコメ)
@Rabukomesukiyo
第1話 縁はパーマのように絡まっている
九州出身の俺、陽賀薪は圧倒されていた……東京の建物の高さに。
東京ヤバすぎだろ。ここって本当に日本なのか? 全てが綺麗にキラキラ光っていて、華やかな街からは文明の力を感じる。
俺は高層ビルに囲まれた道を歩きながらそんなことを考える。
よし、着いた。ここが若者に人気の美容室『Hair Magic』か。
「すみませーん、11時に予約していた陽賀です」
「どうぞ、こちらでお待ちください」
俺は今日、ついに念願のパーマをかける。進学に伴って上京したので心機一転して高校デビューというわけだ。
「金髪にしてください」
美容師さんに案内された椅子に座りながら店内を見ていると、女性の声が聞こえてきた。
その声のする方に目を向けると、そこには黒目黒髪の「THE・清楚系」みたいな美少女がいた。
あの顔は反則だろ、美しすぎる。絶対金髪の姿も似合うんだろうなー。大学生なのかな?
「お待たせしました、陽賀様」
これから金髪になる予定の美少女に見惚れていると、美容師さんから準備が整ったことを告げられた。
初めてのパーマだ。俺に似合うかな? 少し緊張するけど楽しみでもある。
俺はドキドキとワクワクを噛み締めながら、美容師さんに着いて行った。
▪️
美容室に行ってから一週間後。
「そのパーマ格好いいね。似合ってるよ」
「え、マジ? ありがとう。君の茶髪も似合ってるよ。俺の名前は陽賀薪、君の名前は?」
入学式を終えて、教室で座っていると隣の席の男子が話しかけてくれた。パーマ掛けてて良かったー。
「俺の名前は道角俊介。よろしく」
「こちらこそよろしく」
俺と道角君は握手を交わす。道角君、カッコいいな。茶髪が似合っていて平成のアイドルみたいだ。
「ねぇ、邪魔なんだけど」
道角君と握手をしていると金髪の美少女が俺達をキツく睨みつけながらそう言ってきた。
俺達は席と席の間の道を跨いで握手をしていたため、通行の邪魔をしていたようだ。
「あー、ごめん。ご迷惑をお掛けしました」
俺はそう言いながら手を引いて、道を通行出来るようにする。
「……」
金髪ガールは空いた道を無言でスタスタと歩いて行き、そのまま席に座った。
あの金髪ガールどっかで見たことある気がするんだよなー。どこで見たんだっけ?
俺は本人に気づかれないように注意しながら金髪ガールをチラチラ見る。
「あ、美容室だ!!」
点と点が線で繋がった。あの金髪ガールは美容室で見た「THE・清楚系」の人だ。
うっわー、金髪が凄い似合ってる。めちゃくちゃ可愛いんだが? キラキラ光る綺麗な金髪、真っ白な肌、整った顔立ち……完璧かよ。
「おーい、どうした陽賀? あの金髪の子に睨まれておかしくなったのか?」
唐突に「あ、美容室だ!!」と大きな声で言ってしまったせいで周囲の人からは変な人を見る目で見られてしまった。
以降、クラスでの俺のあだ名が「嗚呼、美容室」になりましたとさ。
▪️
高校が始まってから一ヶ月くらいが経った。現在は五月だ。
教室では「美容室君」とか「嗚呼」とか「陽賀美容師」なんて呼ばれているが、友達が出来てバイトもしているのでなんだかんだ充実した生活を送っている。
「陽賀君、ごめんね。急に土曜日にお店入ってもらって。今日来るはずだった子が来れなくなっちゃってさー。あと十五分くらいしたら上がっていいから」
「今日は特に用事も無かったですし全然大丈夫ですよ。配膳行ってきますね」
今日は土曜日だがバイトだ。特に予定がなくて良かった。そんなことを思いながら、俺は料理をトレーに乗せて持って行く。
「お待たせしました、生ビールです」
黒のキャップ帽を被った金髪のお客さんは顎をコクンと下げて「あーっす」と言い、生ビールを受け取った。俺はペコりと礼をして厨房に戻る。
その数分後、金髪のお客さんはまたビールを注文した。俺は再度、金髪のお客さんのテーブルへと行く。
「お待たせしました、生ビールです」
「あーっす」
ポロッ。
金髪のお客さんがさっきと同じように生ビールを受け取ろうと顎を下げた瞬間、彼(?)の被っていた黒のキャップ帽が床に落ちた。
俺は慌てて黒のキャップ帽を拾って金髪のお客さんに渡そうとする。
「どう……ぞ?」
「ありが……と」
「「えっっ⁉︎」」
俺の目の前には同じクラスの金髪ガールがいた。
「お、おい。お前、同じクラスの霧野透だよな⁉︎」
「……ご馳走様でした」
「ちょっと待てよ!!」
霧野透は慌ててレジに行き、料金をカルトンにパッと置いて走り去ってしまった。
同級生がバイト先で未成年飲酒してたとか初めてのシチュエーションなんだけど。アイツ、普通に不良少女じゃん。東京って怖い。
取り敢えず霧野を追いかけて本人から話を聞くか。
「店長、俺、上がります」
俺は急いで私服に着替えて、店を出る。
「すみません、黒のキャップを被った金髪の女の子ってどっちに行きました?」
「あっちに向かって走って行ってたよ」
「ありがとうございまーす」
店を出るなり、俺は通行人に霧野の走って行った方向を聞く。
霧野が金髪で助かったぜ。やはり金髪は街中でも目立つので追いかけやすい。
俺は通行人に質問をしながら走って追いかける。
「金髪の女の子なら地下鉄の方に入って行ったよ」
「分かりました。ありがとうございます!!」
霧野の奴、地下鉄の駅に入りやがった。東京の駅の地下は迷路みたいで複雑なんだよなぁ。
東京の地下を走ること早五分。
「すみません。金髪の女の子がここら辺を走って行きませんでしたか?」
「金髪の女の子なら今さっき、あそこの階段から地上に上がって行ったよ」
「ハァ……ハァ……ありが……とうございます」
汗がめちゃくちゃ出てきて疲れた。もうすぐだ。もうすぐで霧野に追いつく。頑張れ、俺!!
俺は疲れた体で階段を駆け上がる。
見えた。霧野が居た。
「おい、待てよ霧野!!」
「運転手さん。出してください」
俺が階段を登り切ると、霧野は既にタクシーに乗り込んでいた。
霧野を乗せたタクシーは走り出して、東京のビル群へと消えて行く。
「つ、疲れた。もう少しで追いつけそうだったんだけどな……って、あれ?」
冷静に考えたら、学校で霧野に会えるくね? めちゃくちゃ走ったのが馬鹿みたいだ。
月曜日に霧野から話を聞いて、場合によっては警察に突き出すとしよう。
汗だくになりながら賢者モードに入った俺は地下鉄の階段を下り、電車で家に帰ることにした。
▪️
夜ご飯がまだだからラーメンでも食べに行こうかな?
最寄駅に着いて、家路を辿っている最中にふとそんなことを思った。というか、今から夕食を作る体力が無い。
古くなった歩道橋を登る。
これ以上、階段を登りたくない。足が本当に重いんだけど。
ゼーゼー言いながら階段を上がる。すると、そこには天使がいた。
見るものを魅了する綺麗な金髪、吸い込まれそうになる黒い瞳に整った鼻と唇。
そんな天使と見間違えるほど美しい少女は今から本当の意味で天使になろうとしていた。
歩道橋の柵を越えて、少女が天使になろうとしたその瞬間、少女は人間の男に腕を掴まれて人間に引き戻される。
「おい、待てよ。未成年飲酒の非行少女」
俺は柵の内側から霧野の手を全力で掴み、飛び降りれないようにする。
『なんで俺の最寄りに?』『なぜ自殺しようと?』など疑問は多々あるが、今はどうだっていい。絶対に飛び降りなんてさせない。
「君、しつこいよ。ストーカー? 別に非行少女が飛行少女になるだけでしょ。アハハハッッッッ!!!!」
霧野は俺の掴んだ手を離そうと体を全力で揺らす。
「黙れ、酔っ払い。そんな簡単に自殺なんかするんじゃねえっっ!!」
なんで俺の周りには自ら命を絶とうとする人が多いんだ。……もう人が亡くなるのは見たくないんだっっ!!
「簡単? 今、簡単って言った⁉︎ アンタに私の何が分かるんだよ⁉︎ 未成年飲酒がバレたから死にたいわけじゃない。死ぬには丁度良い機会だったから死ぬだけだ!!」
…………。
「……軽率なことを言った。悪かったよ。でもさ、死なないでくれ」
俺は霧野が何に悩んでいるのかを知らない。これは俺が要求を一方的に押し付けてるだけだ。醜さ極まりない。それでも、自分の目の前で人が死ぬのはもう嫌なんだ。
「誰も私の事なんて見てくれないじゃん!! 私が自分の意思で勝手に消えようとして何が悪いの⁉︎ 誰にも迷惑なんてかけてない!!」
そう言い放った彼女の顔は生に対する諦めを孕んでいた。そして不幸にも生き残ってしまって、死ぬことを許されていない少年はそんな彼女の顔を見て言う。
「いいや、俺にとって迷惑だよ。いくらでも迷惑かけて良いからさ……生きててくれ」
「……っっ、、」
数秒間の沈黙。
車が歩道橋の下を通り過ぎる音と、俺と霧野の荒くなった息遣いしか聞こえない。
「あんたさ、私の人生の責任でも持ってくれるわけ⁉︎ 無責任な言葉で……」
「あぁ、持つさ」
俺は彼女を抱きしめる。彼女が飛び降りないように、強く、強く抱きしめる。そして抱きしめた彼女の体の温かさから生をしっかりと噛み締める。
「……」
「……」
そしてまた、数秒間の沈黙が再び訪れる。今度は車の音とお互いの呼吸音、そしてお互いの体の鼓動が聞こえてきた。
この後、彼女に何と言葉をかければ良いのだろうか。散々、大声で怒鳴り合った後なのでどう話しかければ良いのか分からない。
『『キュー』』
俺と彼女のお腹の音が静寂の中に響き渡る。
そういえば夜ご飯を食べてないんだったわ。でも、これも生きてる証か。
「……俺お腹空いたんだけどさ。一緒にラーメン行かね? 誰かと一緒にご飯食べたい気分なんだわ」
我ながら下手な誘いで思わず笑ってしまう。それでもこれが答えで、これが正解な気がする。
霧野は歩道橋の柵を越えてこちら側に来る。生を諦めた天使ではなくお腹の空くただの人間として。
「……行く。私もお腹空いたし」
月のような髪色をしていて、夜空のような瞳をした彼女は俺を真っ直ぐ見てそう言った。
▶︎作者の後書き
読んでいただきありがとうございます。大学受験が終わったので小説を書いてみたいなーと思って書いてみた次第です。
理系で課題も多いので投稿の頻度が遅めかも知れませんがこれからよろしくお願いします!!
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