第2話
「グレンツェンさーん。」
「あ、はい!」
さっきの女性に呼ばれ、俺は受付に向かった。
「それではこちらがグレンツェンさんの身分証になります。」
渡されたのは硬い板のような物だった。
「これが?」
「それをこの台に置いてみな。」
「こうかな?………おぉ!?」
俺が板を置くと、上空に俺の顔と名前やさっき書き込んだ文字が浮かんできた。
「そういう感じよ、絶対失くさないでね。」
「分かりました!」
「オホン。それでは、軽く説明を。ギルドでは、登録から一月の間試験を行います。そこで、グレンツェンさんの適正を見極め、合った仕事を振らせていただきます。」
「なるほど…………自分で選ぶ感じじゃないんですね?」
「それはランクエビフを越えてからです。」
「エビフ?」
「エビフとは古代語で数字の五。登録した方は全員ランクネツから始まります。ネツは古代語で十を意味します。」
「なるほど!ランクアップして実力が認められれれば好きな仕事が出来るってことですね?」
「えぇ、理解が早くて助かります。」
「俺、頑張ってみます!」
「はい、それではグレンツェンさん。私共はあなたを歓迎いたします。ようこそ、ギルドへ。」
「はい!」
一月の試験。
その間の宿をギルドが援助してくれるそうだ。
最初の一週間は本人の得意なものや、運動能力など、元々持っている物の調査。
俺の結果はあまり良くなかった。
同時期に入ってきた少し年上の奴に走りや力で一度も勝てなかった。
唯一勝てたのは、短距離走と刺繍と鍵開けだった。
次の週にはギルドから武器を貸し与えられ、好みの武器を選んで訓練。
少し年上の、ランタは斧。
俺はナイフ等の投げ道具を選んだ。
その次の週。教官を交えて、ランタとの訓練やランタと協力して教官を倒す訓練が始まった。
「ダハァー!勝てねぇ!!!」
「あとちょっとだったのに…………」
俺は大の字で横になり、ランタは斧の柄に顎を乗せて休んでいる。
俺が機動力を生かしつつ撹乱し、そこをランタが決めた………所までは良かったのだが、斧の一撃を容易く受け止め瞬間反撃されてランタがノックアウト。
俺に至っては拳一発で伸びてしまった。
勝てない日が何度も続き、三週目の最後の日。
「今日が最後だッ!気合い入れてけッ!」
教官でありランククスイス(六)のバーゲナーさんが声を張り、持っていた大剣構えた。
「グレンツェン、今まで通り行くぞ。」
「え?でもそれで勝てるのか?」
「バックアップは任せた!」
「あ!おい!」
俺の意見を無視するように教官に突撃した。
「くっそ!味方はよく見極めろってわけかよ!」
俺は放物線に手製の煙幕を投げる。
それを片手間で斬り伏せた教官にランタが大振りをする。
「フン!」
ランタは斧ごと大剣で吹き飛ばされるが、壁に激突する前に斧で地面に衝撃を逃がすことに成功した。
「チ………っぱ隙がねぇ………」
「ランタ、俺に合わせてくれないか?試したいことがある。」
「分かった………じゃあ俺は取りあえず、行くわ。」
「は?」
ランタが右足に力を込め、さっきよりもギアを上げて教官にぶつかりに行く。
「何してんだてめぇ!!!!!」
クソッ!人の話聞かなすぎだろ!!
ランタが教官と打ち合いを始め、俺は今の内に教官の後ろに近付く。
気付かれてはいるが、驚異とは思われていないようだ。
俺はランタが離れたタイミングで懐から別の袋を投げる。
「また……むっ!?」
教官が斬ったのは大量の砂入袋。どんなに強くても、視界が悪けりゃ鈍るに決まってる!
「ランタ!」
俺は訓練用のナイフを構えて教官の足を狙う。
それに合わせるようにランタは横に一閃。
決まった!
二人でそう思ったとき、視界が真っ暗になった。
何が起きたのか分からず、身体を動かすと下からジャリという音と共に全身が酷く痛い。
「二人とも見事。第三週の試験は合格だ。今治癒士を呼んでくるから待ってろ。」
教官の言葉で肩の力が抜け、俺は意識を手放した。
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