第4話

 転送完了!


 私は自分のデスクに移動し、監視モニタをスイッチオン。


 女神様の大事なお仕事のひとつ、「転生者の監視と報告」スタートだ。


 モニターに映し出された『立花郷フローリア』……うわぁ、目がチカチカするほどのファンシー空間!キラキラしすぎ!


 そして、そのど真ん中に放り出された黒い学ラン二人組は、やっぱり完全に浮きまくっている!


「目がチカチカするぜ……」

「落ち着かねぇな……」


 ですよね!私もそう思う!


 そこへ現れたのは、可愛らしい花の妖精さんたち!


 これで少しは和むかと思いきや……「虫みてぇだな」と暴言連発!最低!信じられない!


 案の定、妖精さんたちは怯えて逃げてしまった!

 あーあ……。


 お腹が空いた二人、こんどは「パシリでも探すか!」とか物騒なことを言い出した!


(だから、なぜすぐそういう発想になる!?学習能力ゼロか!)


 ダメだこいつら……早くなんとかしないと……。


 わたしが頭を抱えた、まさにその時、二人の視線に通りすがりの冒険者が目に入った。

 気の弱そうな青年。

 モニターの中で、ヒロトさんとトシオさんが、ニヤニヤしながら青年に近づいていく。


 (え?あれって……)


「おーい、そこのかっちょいいお兄さーん」


「え?ぼ、僕のことですか?」


「お前だよ。呼ばれたら、さっさと来い。校長先生か、ワシャ」


(な、馴れ馴れしい!しかもその口調!初対面の人に失礼すぎる!)


「えっと……何か御用でしょうか……?」


「用があるから呼んでんだろーが。ちょいツラ貸せや。いい話があるぜ♡」


 馴れ馴れしく肩に手を置こうとする。


 (ダメだって、その人……)


 瞬間、青年の笑顔がスッと消え、深いため息。


「はぁ……なるほどね。そういう感じの人たちか……」


 (早っ!もう見抜かれた!?)


 そう、この青年は転生者。


 しかもS級。


 青年はヒロトさんの手を払い除ける。


「悪いけど、君たちみたいなのに付き合ってる時間はないんだよね」


(うわぁ……完全に下に見てる!)


 二人の顔色が変わった!


「……なんだとコラ?」

「……ナメんなよシャバ僧が!」


(ああぁぁ……あかんて)


「時間がないって言ってるだろ」


 面倒くさそうに、青年は軽く右手を前に突き出した。


鑑定アナライズ。……ふ、レベル1の雑魚か」


「ぶっ殺す!」

 シュッ!

 切れ味するどいヒロトさんのストレートパンチ!


「死ねやぁ!」

 バッ!

 遅れてトシオさんのケンカキック!


 二人同時に襲い掛かる!


「はいはい、邪魔邪魔。麻痺パラライズ


 まるで虫でも払うかのように、青年が軽く指を鳴らすと……


 ビクンッ!!


 ヒロトさんとトシオさんの体が、力なく同時に地面に崩れ落ちた!

 ピクリとも動けない!まさに瞬殺!


「……ふぅ。本当に無駄な時間を使っちゃったな」


 青年は、地面の二人を一瞥すると……


「雑魚は雑魚らしく、大人しくしてなよ、かっちょいいお兄さん?」


 地面でピクピクしてるヒロトさんとトシオさんの頭を、コツコツとつま先でつついて去って行った。


 モニターには、完全に無力化され、地面に転がる二人の姿。


 これが……現代の転生者の……そして80年代ヤンキーの……!うぅぅ……。


 ざまぁ!!


 きゃーっはっはははは!!


 そのテンプレぶりに私は思わず大爆笑。


 しゅ、瞬殺……!?

 まったく相手にされずに!?

 ものすごく屈辱的な負け方!?


 私の胃は、もはや痛みすら感じなくなっていた。


 フローリアに来て早々、彼らのプライドは木っ端微塵……。ざまぁ……じゃなくて、かわいそうに!

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