アポクリファ、その種の傾向と対策【地上で最も星に近い場所】
七海ポルカ
第1話
――ニュース速報見た⁉
――見た! とうとうユラ君がああああああああ!
――すごい人の数だったな!
――情報屋さんが気合いいっぱいで飛び出して行ってから本当に二日しか経ってませんよ! 本当に腐れノグラント連邦捜査局にユラ君を釈放させちゃった! あの人凄いです!
――あれだろ? 続報だった巨匠二人の会見、情報屋がとんでもない所に連絡したって言ったのってあの二人のことだよな?
――そうだと思います
――すげーとこに直談判に行ったな!
――私音楽詳しくないので、親に聞いてみました。あの二人本当にクラシック界では世界規模で凄い巨匠だそうです。私がログで話してた人があの二人に連絡したんだよ! って言ったら「まさかぁ(笑)」って鼻で笑われました!
――www信じてもらえないレベルか
――俺は高校まで吹奏楽やってたから、ちょっとは指揮者とか知ってる。
アーサー・ブレナンとラグ・ベルファナスは冗談じゃなく国際的巨匠だよ。
練習の為に借りて聞いてた音源、大概この二人のどっちかが指揮してたわ
――本当に情報屋スゴイとこ行ってたwww
――あいつ本当にすごいな行動力。ダルムシュタット国立大の件もあいつが結局一人で学生会長に直談判に行ってくれたからこんなに急激に事態が動いた。
俺、思うんだけど、例え放送権を情報屋に託しても、あいつがテレビ局に持ち込もうとしてもたついたり、上手く活用してくれなかったら、まだユラ・エンデは不当拘留の最中だった可能性全然あると思うぜ。
――本当ですね。いえ、今までもこのログで情報屋さんは【グレーター・アルテミス】公演の時もすごく尽力してくれたので、みんなでこの人ならって確信があってあの人を選んで放送権託したわけだけど、間違いじゃなかった
――情報屋は人を見る目あるんだよな。最初からあいつシザとユラ応援してたし。
ここのログ、気に入ってくれたし。あいつもいい奴だけど、あいつの友達もすげぇ いい奴ばっかりで、情報屋にいつも協力してくれてるしな。
アレクシス・サルナートのファンだしさ
――うわああああああああああああん! そうだったああああああああ!
――ここにも一人ファンが……
――いや一人どころじゃない。俺も一番の推しはアレクシスだ。
アレクシス・サルナートの引退会見が情報屋を本気にさせてくれた。
あいつがこんなに頑張れたのはアレクシスのおかげだ
――情報屋今どこにいるのかな。案外あのノグラント学生連合の群れの中にいて、一緒に友達と喜んでるのかもしれないな
――本当によくやってくれた……
――今度情報屋が戻ってきたらみんな盛大に労ってやってくれ
――はい! いっぱいありがとうって言いたいです! いいか! 今言っても!
情報屋さんありがとうございます!
――情報屋ぁ! ありがとうな!
――ありがとう!
――ユラ君おめでとうーーーーーーーーーーっ!
――本当だな(T_T)
――それが一番だ……三カ月以上だぞ……信じられん。
――あの学生連合のリーダーのカリスマ性が凄すぎる……
あれで二十一歳だとよ……何者だあいつは……
――ネイト・アームステッドさんはダルムシュタット国立大の法学部に在籍していらっしゃるとのことです。つまり、正真正銘のシザ・ファルネジアの直属の後輩と言っていいでしょう
――さすがシザ・ファルネジア後輩まで強かった
――何故俺は三十近いのに全然カリスマ性がないのか
――www
――安心しろ。大概の人間はあそこまでのカリスマ性はない。
俺はさ、ああいうの、ある意味人間の「能力」だと思うわ
――本当ですね。あの人とか情報屋さん見てて心底思いました。
アポクリファだから優性だとか、有利だとか、全然そんなことないです。
非能力者でもすごい才能を持った人は本当に凄い。
情報屋さん言ってたじゃないですか「自分には貴方たちみたいな能力はないけど、それでも
貴方たちを驚かせてみせます!」って。本当にそうなった。
凄い才能持ってる人にアポクリファとか非アポクリファとか、全く関係ないんですよ
――確かに。あの学生連合のリーダーどれだけアポクリファが束になって掛かっても絶対論破出来ねえと思うわ
――本当になwww
――一方でノグラント連邦捜査局みたいに非アポクリファでも救いようの馬鹿もいるしな
――全くだ
――本当に人間としての賢さに能力者とか非能力者全く関係ない。
要するにアポクリファ特別措置法とか、本当に必要ないって思いました。
ネイトさんが言ってたように、知恵を出し合えばもっといい法が生み出せるって僕でも思ったし、それは、能力があるってことは違いではあるけど、今回のダリオ・ゴールドみたいに、力を持たない非能力者でも、シザ・ファルネジアのような強力なアポクリファを、少年時代なら虐待してたりするし。
非能力者だって人を殺すし、犯罪も犯す。意図したり、意図しなかったり。
俺は本当は同じ法律でも裁けるんじゃないかって思った
――本当だな。能力者だから厳罰にするとか、本当に間違ってるんだよ。考え方。
――みんな、学生連合はユラさんが釈放されても廃止法案出すそうですから、出来ればこれからも応援してあげてください。そもそもはあんな法律があったから、ユラさんが不当に逮捕された。
あれさえなければ、ユラさんを連邦捜査局は逮捕出来る理由一つもなかったんだから
――本当だよな……。そもそもはあれが原因なんだよ
――何が出来るかは分からんがとにかく俺は応援する
――アレクシスのファンの俺も廃止法案活動応援する。二度とユラちゃんにあんな不自由な公演はさせねえ……!
――ユラ君本当に本当にもう自由なんですよね?
――起訴が取り下げられたから、大丈夫。今すぐ帰国も出来るし、世界のどこでも行ける。
――やったああああああああああ!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
――正義の勝利だあああああああああああああ!
――すぐ【グレーター・アルテミス】に帰って来てほしい……。お兄ちゃんが……お兄ちゃんが首を長くして待ってます……
――そうか、そうだな! 今俺全然シザとユラが兄弟だってこと忘れてたわ(笑)
ユラの本拠地【グレーター・アルテミス】じゃねーか!
――そうですよ。だから本当はあの公演の時、里帰りしたようなものだから、唯一の家族であるシザは勿論だけど、友人、知り合いに会ってもいいはずだった。
――連邦捜査局めえええええええええええええ!!!
――ユラ君自由になって嬉しいし、情報屋さんもネイトさんもありがとうなんだけど、 あいつらの意味不明な逮捕のせいでシザが死ぬほど苦しんだし、あんな公演をさせなければアレクシスは今もまだリーグに留まっていてくれたかもしれない。
あいつらだけは末代まで呪います
――ユラ君も本当に一人で怖い思いを三カ月もした 俺も連邦捜査局はこれでいいみたいにする気にはならん。やっぱりライルを派遣して連邦捜査局本部だけは陥没崩壊させておくべき
――待て待て陥没崩壊は器物損壊罪だぞ。乱暴はいかん。
形は保て。アイザック・ネレスを派遣して連邦捜査局の外観全部氷漬けにしてあいつらが外に一切出れないようにしろ
――いいですね! 閉じ込めてやりましょう! 三カ月!
――あいつらが三カ月もユラ君を不当逮捕しておきながら夜には家に帰って家族とか恋人に普通に会ってたかと思うと無茶苦茶腹立ちますわ 好きな音楽とか聴いて出勤してたとか思うと往復ビンタ食らわせてやりたくなります あいつらは人間のクソです
――先生! ユラ君が学生連合の人達と向かった場所は天文台って言ってましたけど、ダルムシュタット国立大の敷地なんですか?
――そうです。皆さんご存じダルムシュタット国立大は地上に三十二校しかない【ゾディアックユニオン】加盟の正真正銘の名門なので、まあ月の系譜に関わるということで、非常に優れた設備の天文台を保有してます。
それがあの山の上にある天文台で、山ごとあの大学の敷地です。
――リッチ!
――サイト見て来ました! 一流ホテルか! っていうくらい綺麗な設備です
――まあ状況が状況なので、一度落ち着ける所に移動したんだと思います。
ほら、街中のホテルだとメディアとかも当然集まって来ちゃうだろうし、全然ユラ君安心できないから……
――さすが学生連合リーダー抜かりないな! 名門の秀才で気遣いも紳士ってどんなハイスペックやおまえは!
――気になったから私も今サイト見て来ちゃいました! 天文台の中綺麗です!
幾つも建物あるんですね。地上からは分からないけど
――山ごと大学の敷地ですから、大学の許可がないとあの上空も飛べないんですよ。
だからヘリとかも来ないし、ユラ君も安心して休めると思います
――【グレーター・アルテミス】公演から本当に姿を見てないから心配だった……。
あの日は本当に最後まで頑張ってくれてたけど、絶対必死に気丈に振る舞ってたんだと思うよ……。
――あとでまた公演の映像見て来るわ うちの兄貴が突然妹がある日クラシックの曲を聞きまくり始めたから最近怯えてます。
――www
――うちは一回家族そろって全員で聞きました! なんかああいうことしたの初めてだった。何ていえばいいのか分からなかったけど、家族でなんか本当に公演を見に行ったみたいで楽しかった。ユラさんは大変だったから、楽しかったって言っていいのか分かんないけど
――大丈夫。いいんだよ。ユラ君だって楽しんでください! って言ってくれてた。
あの公演を少しでも多くの人が共有して、泣いたり楽しんだりするのが大切なんだから
――はい!
――仲いい家族だなあ。なんかいいねそういうのも
――うち、お父さんは無口ですごく厳格っぽい人なんですけど、あの公演聞いて一番号泣してたのお父さんでした。最初ユラさんのユの字も知らなかったのに、この子十六歳のピアニストなんだよーって教えてあげたら、年齢にとても驚いてた。
――厳格なお父さんも号泣させるとはさすがユラ・エンデ
――実は私今骨折して入院中なんだけど、あの日病院でも演奏流してくれたから、病院でもラウンジにみんなで集まって聞いてたんですよ。
初めての入院でなんとなく落ち込んでたけど、あの時はみんなで聞いて、なんか楽しかった。同室の人とも仲良くなれて。
ユラさんが自由になれて本当に今日は嬉しいです。いつか本当に公演聞きに行きたい!
――また【グレーター・アルテミス】で公演してくれるかなあ……
――してほしい! 絶対見に行く!
――公演とか無くても、好きな時に帰国して欲しい。
――シザといつ会えるんだろう 気になる
――シザ今頃どうしてるかな。今日のこれとか、事前に知ってたかな
――分からないけど、でもユラ君が自由になれたことは絶対喜んでると思うよ!
――そうですね!
――ユラ君が帰国する時は空港に迎えに行ったりするんだろうか……
――ええええええ! 兄弟の再会とか確実に私は号泣します! やめてください!
あの公演の日もユラ君がライルから花を受け取って泣いちゃった所で号泣しました!
もっと言うとその前の挨拶の所で泣いちゃった所で釣られて号泣して、結局その映像夜中まで見てなんでこの兄弟がまた離れ離れにならなきゃならないんだ……ってシザのバイク走行シーンを見ながらも号泣して、翌日顔すんごいことになりました。
やめてください!
――安心しろあの翌日は恐らく【グレーター・アルテミス】国民の八割は泣き過ぎで顔変だったはずだ みんなで変なら怖くない
――取引先相手にも「昨日ちょっとユラ・エンデで泣きまして」って説明したら通じるから大丈夫だ
――天文台だから、星とか見れるんですか?
――見れるみたい。国内有数の高度望遠鏡があると書いてある
――ユラ君が捜査局から出て来る時、上空からヘリは映してるけど、近い映像が全然無いのもなんかいいね。あれって、映さないようにしてあげて欲しい、ってあのリーダーが学生たちに事前にお願いしてくれてたらしい
――素晴らしいな。ユラ・エンデを公演直後に逮捕しやがったどこぞの馬鹿どもに聞かせてやりたい気遣いだ
――この三カ月以上、ユラ君は悲しい顔とか、泣いてる顔とかばかりだった……。
早く笑えるようになれるといいな
――【グレーター・アルテミス】公演で初めて、ユラ君側からシザへの気持ちとかを感じた。それまでシザからはすごく大切に想ってるんだなっていうのは感じてたけど、ユラ君の方が全く分からなかったので。でも公演の最後の挨拶で、本当に仲のいい兄弟で、大好きな人なんだっていうの感じたよ。
だからきっとユラ君も早くシザに会いたいんじゃないかな。
早くこの二人が会えるといいね
――本当に、それです!
――これ以上この兄弟に辛いこととか起きて欲しくない。
幸せになって欲しいよ。
――すごく嬉しいけど、何か一抹の悲しさを感じないか?
――それはやっぱり……。
――アレクシス・サルナートだな……。
――なぁ……みんな今回奮闘してくれた情報屋の為に何かしてやりたいって思わないか
――思います!('◇')ゞ
――あいつが頑張れたの、アレクシスのあの会見のおかげなんだよ……
――みんなで【
――おっ!✨
――待ってましたー!
――ダメもとでもやってみましょうよ!【グレーター・アルテミス】公演の時も、今回も、それでやって結果に結びついたじゃないですか。私はやって来ます。今までこういうの、自分じゃない誰かがやってくれるだろうとか、私一人がやっても意味ないしとか思ってやって来なかったけど。
今回の一連のことで、みんなの声を合わせてこんなに物事が動かせるんだってすごく実感した。
叶わなくてもいいから、でも行動はしておきたいです!
じゃないと情報屋さんが戻って来た時、心からおかえり! ありがとう! って言ってあげられない気がする。
お礼ってわけじゃないけど……復帰を訴えておきましたって言ってあげたいです
――そうだよな あいつならきっと自分でもそういうとこにお願いすると思うぜ。駄目でもやってみようって。それならさ、みんなであいつ応援してやろうよ
――俺はアレクシスが一番好きだからこういうの大歓迎! 勿論俺も書き込みに行って来る
――まず書き込んで、それでも事態が動かなかった署名だ! そんでも駄目なら集会を開くぞ!
――すっかりこういう手順覚えましたね 私たちも( *´艸`)
――よーし! やるぞぉー! 待ってろ情報屋! お前の英雄を必ず俺たちが連れ戻して来てやる!
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