第三章
15. 裏切り者を斬れ!①
第三章:裏切り者を斬れ!
1
ポンド・フィールド事件から数日、本部に集まった俺達蒼狼隊の隊士達の前に新メンバー達が集っていた。
総勢、20人程度の新メンバー達が集う中、俺達の前に姿を現したのは、眼帯をした1人の少女だった。
「……オボロです。クロウ先輩の彼女やってます。よろしくお願いします」
「うむ! よろしく頼むよ! オボロくん! 君には、新しく設立した三番隊の組長を務めてもらう!」
アルさんが、そう言っている間に副長隊の隊士達が、口を半開きにして驚いている。あちこちから「副長って、あんな可愛い彼女いたのか?」とか「なんだよ。副長って俺達の仲間じゃなかったのかよ?」とかそう言う話声が聞こえてきたので、俺は奴らに聞こえるくらい大きな声で咳払いをして黙らせた。
――いや、てかなんだ……その俺達の仲間って……お前ら、いつからそんな謎の徒党を組みやがったんだ? 隊の風紀が乱れてやがんな……。
と、思っているとその時ふと……何処からか、強烈な殺意を感じたので、俺が顔を上げてみると……なんと、俺の事を殺意の眼差しで睨みつけるエリカの姿があった。
「……ヒッ!」
なっ、なんだぁ……? あのナマハゲみてぇな顔……。こっわ! 目つき悪いし……まさか、寝不足か?
――と、そんなこんなで総勢20名の新隊士を迎えて、彼らを見渡しながらアルスさんが告げた。
「……みな、よくぞ集まってくれた! どれだけ時代が経っても……こうして国王陛下のため戦う気持ちを同じくして集まって来てくれる事が、俺は嬉しい! これから皆で頑張ろう!」
「「おぉ……!」」
保安官バッジを身に着け、新しく隊士となった様々なカウボーイ、カウガールの格好をした剣士達。彼らを見渡しながら俺は、感慨にふけっていた。
――ポンド・フィールド事件の後、俺達は、王都中の有名人になった。勿論、相変わらず悪い噂や嫌な評判、誹謗中傷は絶えないが……そんな中でも各地にいた元冒険者達が、話を聞きつけてこうして隊士に志願してくれた。
「これから大変になりそうだな……」
アルさんが、俺の右隣でそう言う。彼の横顔は、これから先の未来をとても楽しみにしているみたいだった。
「あぁ……これからもっと頑張らねぇとな!」
俺は、そう告げると今度はアルさんの隣に立つレミ姐さんが告げた。
「……2人とも、気合いれていくわよ?」
彼女は、いつものクールなお姉さんっぽい雰囲気とは、少しかけ離れた気合とやる気に満ちた様子でそう言っていた。
「「おぉ!」」
俺とアルさん、そしてレミ姐さんの3人が、互いに顔を見合わせる。確かにこれから幹部としての仕事も増えてきそうだ。単なる見回りだけじゃなく……これからは、隊士達を鍛えてやったりする必要もあるだろう。ポンド・フィールドの時は、怪我人も多かったしな。隊のレベルアップは、必要事項だ。
――“副長であるお前が、心を鬼にしなければならない!”
ダリウスさんの言葉が、頭の中で思い出される……。確かに、隊士達も増えてきたし、俺ももっと心を鬼しなければな。
と、決意を新たに隊士達の様子を眺めていると、その時ふとある事に気付いた――。
「……あれ? そういえば、ダリウスさんは……」
あの人の姿が何処にも見えない。少ししてからダリウスさんの率いる二番隊の隊士達が、オドオドし始めた――。
「お前ら、何か知ってるか?」
すると、隊士の1人が俺の傍までやって来て、耳元で囁いてきた……。
「なんだと……!?」
その言葉に俺は、大きく驚いた。
――まさか、ダリウスさんが……。
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