第2話 神様、和解しようや

「はるくんさ~何してるわけ?」


「なにしてるって普通に課題ですけど?」


 日本に来てから二日。

 俺の隣には一歳年上の可愛いギャルの先輩がいた。

 なんで?


「あれ? うちん高校課題とかあったっけ?」


「どうでしょう。俺は新入生なのであるだけかもしれないです。冷夏先輩は無いんですか? 課題」


「わっかんない。春休み入ってからカバンとかあけて無いし! そんなつまんない話よりなんではるくんがこっちに来たのか教えてよ! 一人暮らしまでしてさ」


 どうやら俺は課題に集中できないらしい。

 後ろからがしがし背中を叩かれて俺は諦めてペンを置く。


「おっ! 話してくれる気になったのかな~嬉しいねぇ~お姉さんに何があったのか言ってみなさいな」


「お姉さんて。まだ出会って二日目ですよ? しかもなんで出会って二日目の男の家に上がり込んでるんすか? 少しは危機感とか持ちましょうよ」


「いやいや、君無害そうだし大丈夫っしょ。それとも君は私を襲う勇気があるん?」


「いえ、無いので安心してください」


 俺はチキンだった。

 いやっ!?

 俺にはなぎちゃんという心に決めた存在がいるのであってそれが無ければ……いやなくてもそんな勇気なかったわ。

 どこまでいっても俺はチキンだった。


「でしょ? じゃあ話してよ! はるくんがなんでこっちに引っ越して来たか気になる!」


「そんなに気になるもんですか?」


「うん! 気になるから早く話して!」


「わかりましたよっと」


 ペンを置いて冷夏先輩に向き直る。

 てか、この人改めて見るとめっちゃ美人だな!?

 なんか意識するとドキドキしてきたんだが……

 いかんいかん。

 俺にはなぎちゃんがいるんだ!


「まずですけど俺って外国から来たんですよ」


「えっっ!? そうなん? でも、名前はバリバリ日本人じゃない?」


「あっもともと外国にいたわけじゃなくてもとは日本にいたんですけど小さいころに親の仕事の都合で外国に引っ越したんですよ」


「そうなん!? 帰国子女って奴じゃん! なんかかっこいい!!」


 冷夏先輩が目をキラキラさせて詰め寄ってくる。

 なんか、反応が良くて話してて気持ちいいな。


「あれ? でもはるくん一人暮らしじゃん? 両親はどうしたん?」


「両親はまだ外国です。俺だけわがまま言ってこっちに戻ってきたんですよ」


「それまたなんで? なれない土地での独り暮らしなんて結構大変くない?」


「まあ、不安は少しあるんすけどこっちに昔住んでた頃の幼馴染と結婚の約束をしてまして。それを守るためにこっちに戻ってきました」


「それめっちゃロマンチックじゃね? めっちゃ尊いんですけど~」


 なんか冷夏先輩ってギャルってわりに結構オタク用語というかネットスラングみたいなものを言ってるんだよな。

 まあ、おかげですこしだけ親しみやすくなったんだけどさ。


「どこにいるか今はわかってないんで見切り発車なんすけどね」


「それでもいいじゃん! うちそう言うの大好きよ!」


「見つからない以上はどうしようもないんですけどね」


「見つからなかったら来た意味感じ?」


「その通りです」


「あちゃ~それは確かに少し見切り発車が過ぎるかもね~」


 冷夏先輩にも呆れられてしまった。

 無理もないか。

 ヒントもほとんどなしで人探しなんてはっきり言って正気の沙汰じゃない。

 この反応が普通なのかもしれない。

 わざわざ海外から引っ越してきたのならなおさらだ。


「それでも、俺はあいつに会いたいんです」


「ふ~んぞっこんだね。うちも探すの手伝ってあげよっか?」


「いや、こういうのは自分で探すから意味があるもんでしょ。頑張ってみます」


「そう? まあ何かあったら言ってよね。せっかく知り合ったんだから協力するし!」


「ありがとうございます」


 やっぱりこの人は見た目はギャルギャルしいし距離感の詰め方はかなりバグってるけどねは良い人のように思える。

 思えるというかいい人だ。

 神様、さっきはごめんな。

 今度なんか供えるから和解しようや。


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