圧倒的な文量で描かれる本作は、少年アレンの成長と喪失を主軸に、村から世界へと広がるスケール感が見事でした。兄を喪った哀しみが村の空気と家族の心に影を落とし、その喪失感をアレンが錬金術という希望に変えていく過程が丁寧に描かれています。師匠オーウェンや仲間たちとの出会い、禁書「永遠の輪」など王道ながら魅力的な展開が続き、ラストの旅立ちに至るまで一貫してテーマがぶれず、読後感も良いです。導入章として非常に完成度が高く、続きを読みたくなりました。

百鬼清風

ヘルメスが繰り返すのはただ一つ。
「最愛の人を救いたい」という、たったそれだけ。
それだけなのに、世界が狂い、自分自身も消えていく。

何度やっても思い通りにいかない過去改変と、
それでも諦められない愛の描写が、とにかく痛いほどリアル。