第13話 Flame


この世界に絶対は無い。

私は前世の記憶を思い出さなければ良い様だ。

そう思いながら私は放課後になってから帰宅をした。


その時に私は消防車とすれ違った。

それどころかパトカーとも何台もすれ違った。

何か大きな事件が起こっているのか?、と思ったが。

そんな事を考えている余裕が当初はなかった。


だけど流石に繰り返してすれ違うので私はゆっくり目の前を見る。

初めて気が付いたが火災が発生していた。

それも建物から火が出ている。

私は「...?」となりながら目を凝らす。

その建物は...私の家だった。


「な」


私は「!?」となりながら通学鞄をその場に落として駆け寄る。

それから熱気を感じながら私は火災のあっている家を見る。

消防団員の人が「近付かないで」と言う。

ちょっと待って...何が起こっているの。

私は横に居た近所の人に聞く。


「どうしたんですかこれ...」

「ゴミ袋への放火らしいよ。...誰がやったか分からないらしいけど」

「放火って...え」


じゃあ私の家族は?

そう思いながら私は駆け出す。

それから裏手に回ってからそのまま炎の中を見る。

そして誰かが燃えて死んでいるのが見えた。

母親だった。


「...え」


私はその場で涙を流しながらどうしようもなく燃え続ける業火を見る。

こんな馬鹿な事。

鬼畜すぎる。

そう思いながら私は涙を流していると野次馬の中で違和感のある人物が居た。

私はとっさにその人物の肩を掴んでから顔を見る。


「...貴方...!?」


それは山郷剛だった。

私を見てから「...」となっている。

なんでコイツがここに?


「待って。貴方はなんでこの場所に」

「...」

「たまたまにしてはおかしいでしょう。なにかタイミングが合わないんだけど。何をしているの貴方」

「...」

「何をしたの?一体何を」

「俺はただ単に大地を守りたくてな」

「それはどういう意味」

「俺も前世の記憶を持っている。お前が屑だって事も知っている」

「じゃあまさか火を放ったのは」

「言っておくがあくまで大地を守る為だったからな」


そう山郷は言いながら私を見る。

幸助を守る為に火を放ったってか?

そんな馬鹿な事って。

思いながら私は「噓でしょ...」と絶句する。


「俺は大地を裏切ったお前を許さない」

「...」


私は涙を浮かべてから口元を抑えていると「やっぱりそういう事か」と声がした。

背後を見るとそこに幸助が居た。

山郷を見ながら「お前。ここ最近こそこそしていたのはこの放火の為だったのか」と言いながら幸助は山郷を見る。

すると山郷は「大地。俺は...」と言う。

そんな山郷に対してじわりと涙を浮かべた幸助。


「なんでこんな手段しかやれなかったんだ」

「俺はお前の前世を気にかけていたんだ」

「...1つ聞いても良いか。お前の意志なのかこれは?それとも奴に操作されていたりするのかお前自身が」

「...」

「お前はこんな事をする人間じゃなかった。昔は」

「それは前世の事か」

「そうだ。お前は留学していたじゃないか」

「俺は友人だったお前をずっと心配していた」

「ふざけるな。もう警察に捕まるぞお前」

「どちらにせよじきに捕まる。俺は復讐を終えた。だから問題はない」

「...」


私は山郷を平手打ちした。

それから「返して...私の家族を」と言う。

山郷は「返さない。俺はいずれにせよお前に復讐は終わったと思っている」と言う。

私は山郷を睨む。

そして状況を見ていたのか警察が彼を連れて行った。



何が起こっているのか分からない。

そう思いながら俺は前世の記憶を必死に思い出そうとする。

華凛は家族を失った。

というかこれだと悪いのは誰なのかという事になるんだが。

そう思いながら警察署から出てから華凛を見る。


「華凛」

「...」


華凛は俯いたまま何も話さない。

俺はそんな姿を見ながら「オイ」と聞く。

すると華凛は「...戻る」と言った。

それからそのまま警察署に戻って行く華凛を見る。

父親に連絡を取る為にだが。


「...」


俺はそんな華凛を見ながらそのまま盛大に溜息を吐く。

それから俺は寒さも若干感じる空を見てから歩き出した。

山郷剛は器物損壊罪で今のところ捕まった。

だが...未成年である。

放火殺人は...どうなるのだろうか。

素人なので分からないんだが。


「クソ」


そう呟きながら俺は目の前を見る。

するとそこに誰か立ってこちらを見ているのに気が付いた。

それはしっぽの生えた小学生低学年ぐらいの和装の女児。

何だこいつは。


「誰だ」

「うむ。初めまして。私は能力を与えた神様だ」

「...という事は榎本和樹に力を与えた人物か」

「うむ。まあそうなる」

「神様。アンタのせいで大変な事になっているんだが。どう責任取るつもりだよ」

「あの日、神社は実は暦の重なり、天候不順の雷などで特別な力を纏っていてな。偶然に居合わせた神社に居た榎本和樹に力を与えてしまった様なのじゃ」

「それで。アンタは何が言いたい」

「ああ。すまぬ。実は榎本和樹が支部山華凛に何度も力を暴発させて世界を繰り返したせいなどもあって世界、人間、環境の均衡バランスが崩れていると言いたい」

「...榎本和樹が力を得たのは偶然なのか」

「そういう事になる。まあまさかこんな風に力を使うとは思わなかったのじゃが。愛とは恐ろしいのう」

「...」


俺は静かに神様を睨む。

その神様は「この世界はもう恐らく元には戻らない。榎本和樹の偶然の力も一時的なものであって失われた様じゃから。私にも戻す力はない」と言う。

その言葉に俺は「華凛はどこに行っても浮気しているのか」と聞く。

すると神様は「そうじゃな。浮気性は全然治ってない。偶然この世界で性格がリセットされたみたいじゃが」と答える。


「俺はどうしたら良いんだ」

「お主にこうして接触したのには理由がある」

「...?」

「お主の記憶。前世から持ったまま何故こっちに来ているのかという謎があってな」

「俺は華凛に浮気されて自殺した」

「そうじゃな...お主も多分、奴の影響を受けているのかもしれんのう」

「...」


その言葉に俺は神様を見る。

神様は俺を見ながら「まあとにかく」と言う。

それから「すまぬ」と言った。

そして頭を下げた神様。

俺は「そうされても許せない」と言ってから神様を見る。


「華凛もそうだが。...アンタのせいで全て壊れていっている」

「...確かにな」

「もう帰れ。俺はアンタの顔を見たくない」


そして俺は街灯に照らされている神様の横をすり抜けた。

それから帰宅した。

嫁も神様も。

とんだクソ野郎だな。

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