大切な嫁が寝取られたので俺は鬱になり首を吊った。そして死んだ後に俺は何故かあの日の高校時代に戻っていた

楽(がく)

第一章 究極のタイムスリップ

9年

第1話 自殺後のタイムスリップ(改稿)

クソ嫁が絶対に許さない。

いつか2人の間に出来た子供と一緒に暮らそうと約束した場所だが俺はその場所で俺は首を吊る決意をした。


何故かといえば新婚なのに妻が浮気した。

たった3ヶ月で見知らぬ男のチン棒を咥えていた。

なんで分かったかといえば追跡して外でそんな事をしていた。

中身はクソ不倫女だった。


「あばよ現世。クソ食らえ。幽霊になったらクソ嫁を呪ってやる」


そう呟きながら俺は嫁の浮気後にうつになった顔を見る。

会社にも行けなくなって無精髭の生えたその顔を見た。

それから三途の川を渡る為に椅子に乗った。

そのまま俺は椅子を倒してあの世へ行く。


筈だった。


ノイズ音が聞こえた。



「?」


やけに視界が眩しい感じがする。

俺はゆっくりと薄目で目を開ける。

桜が咲いている。

それが風に乗って舞っていた。


「...???」


自殺した筈だった。

なのになんでこんな場所に俺は立っているのだ。

そう思いながら俺は顎を撫でる。

あれ?髭が無い。

俺は驚きながらうっすら視界に入った俺の服装を確認してみる。

これ...。


「あ?」


ブレザーだ。

高校の制服を着ている。

何だこれは...え。

ちょっと待てオイ。

どうなっている。


その中で俺はハッとした。

確か俺が死んだ筈の季節は12月だった筈。

だけど今俺が立っている場所ではいつか見た桜が並木道を彩っている。

オイオイ。


「まさか」


俺は青ざめながらとっさにスマホを取り出す。

いつも癖で右側に入れていた。

無いかと思ったらあった。


それから確認する。

古いスマホに20XX年3月。

それは俺が死んだ時から約9年前に遡っている。

つまり。

いや...俺が持っているスマホが結構前のスマホでもある。

これはまさか。


「つまりこれはタイムスリップなのか?」


これは現実か?

じゃあ俺は死んでから記憶を持ったままタイムスリップしたと?

まさかそんな事が?


そう思いながら呆然と立ち尽くしていると「オイオイ?大地。何をしているんだ?」と優しげな声がした。

背後を見るとそこに3年前に貿易会社に勤めていて外国に転勤して行った山郷剛(やまさとつよし)が居た。

俺の親友である。

そんな俺の唖然とした顔を「?」を浮かべて見ながら顎で指差す山郷。


「さっさと行こうぜ」

「あ、ああ」

「というか何をボーッと突っ立ってたんだ?」

「い、いや。すまない」


俺は学校に行く為にゆっくり山郷と一緒に歩き出す。

その全てだがなかなか理解が進まないまま。

過去にタイムスリップか...そんな馬鹿な事があるなんてな。

ってか記憶持ったまま昔に戻るなんて思わなかった。



放課後になってから俺は帰宅する為に教室を出て廊下を歩く。

山郷は部活で教室を先に出た。

なので俺は帰宅部らしくおとなしく帰宅する。

しかしやっぱり過去に帰ってきたんだな。

末期癌で死んだ筈の教員が居た。

ここまできたら信じない訳にはいかないだろう。


「自殺すると非現実的な事が起こるんだな...」


死んでみないと分からない事だ。

皮肉なものだな。

そんな事を考えつつ歩いていると俺と同じ高校の女子高生が2人の男達にウザく絡まれていた。

女子高生は恐怖に怯えていた。

実に不愉快極まりない。

イラッとした。


俺は「オイ」と3人に声をかける。

3人は一斉に俺を見る。

そして男達が不愉快そうに俺を見る。


「何だテメェ?」

「痛い目に遭いたくなかったらその子を今すぐ放せ。俺の彼女でね」

「...」


俺は彼女の腕を引いた。

それで抱き寄せる様にする。

俺は無言で2人を威嚇しながら見る。

すると2人は「クソが。男連れかよ」と唾でも吐く様に悪態を吐きながら立ち去って行った。

良かった。

柔道の技を使うまでもなく解決した。


「あの」


無言で2人が去った方角を見ていると現実に引き戻された。

とっさに「彼女」と言って抱き寄せてしまった女子は黒色の瞳をした銀髪の...クォーター?だった。

腰辺りで銀髪を結んでいるアイドルという感じの猛烈に可愛い子だった。


嫁もそこそこ可愛かったけどまさかそれ以上とは。

俺はドギマギしながら「すまない。咄嗟に誤解される嘘を吐いてしまって」と言う。

その子は無言のまま胸の辺りで手をクロスする。

それから意を決した様に顔を上げた。


「是非お礼がしたいです」

「は?いや。たまたま見かけただけだから。状況も状況だったからな」

「その分、お礼をしないと気が済まないです」

「...!」


俺は彼女を見る。

彼女は感謝する様な顔をしながら俺を見る。

これで断るのもあれか。

そんなつもりは無かったんだが。


「私...その。九條恋(くじょうれん)って言います。貴方は...」

「俺は大地だ。大地幸助」

「大地幸助...じゃあ大地さんですね」


それから九條さんは俺に微笑んでから「お礼...その。この近所に私しか知らないクレープが美味しいカフェがあるんです」と言う。

九條さんは西の方角を指差す。

駅からは少し離れた場所。


その場所は俺が自殺する前の世界。

つまり嫁に浮気された未来で店の主が年齢の都合で閉店したカフェだった。

マスターもこの過去の世界では若かった。

その姿を見てから俺は(過去に帰ってきたんだな。やっぱり)とまた自覚した。



「凄く怖かったんです」

「良かったよ。ちょうどあの場所を歩いていて」

「本当にありがとうございます」

「何というか君を助ける事が出来て本当に良かった」


それから俺は九條さんに笑みを浮かべる。

出されたコーヒーが相当に懐かしい味だった。

確か閉店したのはこれから3年後だったな。

余計な事は考えたくないけど。


「その。もっとちゃんとしたお礼がしたかったんですけど...すいません」

「これで充分だ。お礼になってるよ」

「...あ。そうだ。その制服確か水間高校の制服ですよね?」

「え?あ、ああ。確かにな」

「私、今日転校して来たんです」

「...」

「貴方の様な優しい方も居る高校かぁ。ウフフ」


九條さんは嬉しそうにはにかむ。

この子の事を今思い出しはじめた。

他のクラスで直ぐに引っ越して行ったから印象に残ってなかった。

卒業アルバムにも載ってない。

まさかこうして九條さんという人物に再び関わる事になろうとは思わなかった。

そう思いながら目線を逸らして考えていると九條さんが「あ。その。...大地さん。もし良かったらこの後、時間あります?」と聞いてくる。


「え?あ、ああ。まあ」

「ゲームセンターに行きませんか」

「え?それは君と?」

「そうです。私...家に帰るのが嫌なので」


その言葉を聞いてから九條さんの事を思い出してきた。

この子の家は確か財閥の家だった。

いわば大金持ちの家だ。

俺の実家とは天地の差がある。


そんな彼女の口癖でこんな事を耳にした事がある。

それは「家に帰るのが嫌」だと。

完全に思い出した。


九條さんは家族の居ない寂しさ故に俺が死ぬ前の世界で今から1か月後ぐらいに確か自殺未遂を起こした。

電車に飛び込み下半身不随になったのだ。

確かそれが俺が死ぬ前の彼女。

その後に水間高校はバリアフリーと人間関係の問題があり車椅子生活になってしまった彼女は静かに水間高校から去った。

それが恐らく結末だった。


「分かった。付き合うよ」


その言葉に「あ、ありがとうございます!」と笑顔になる九條さん。

俺はそんな嬉しそうな姿を見ながらまた考える。

自殺未遂か。

こんな良い子がそんな真似をするなんて...いや。

この世界では自殺をさせない。


「九條さん」

「はい?」

「こんな事を聞いても良いのか分からないが。...君は今の世界で寂しい思いをしてないかい?」

「え?それはどういう...」


九條さんは驚いた感じで目を丸くする。

俺はそんな言葉を発しておいてなんだがハッとしてから「いや。すまない。忘れてくれ」と否定をした。

それから俺は彼女から視線を外す。

すると彼女は「ですね。寂しいです」と答えた。


「色々あって」

「...そうなんだね」

「でもなんでそんな事を突然私に聞いたんですか?」

「いや。何だか顔に出ていた感じだったから」


そして俺は苦笑する。

九條さんはまた目を丸くしつつ次はクスッと笑った。

それから「大地さんってとっても不思議な人ですね」と言いながら「なんだかカウンセラーみたいです」と花が咲く様な笑顔になる。


享年27歳の大地幸助。

そんな俺がその魅力的な顔に不覚にもドキッとしてしまった。

それも女子高生に対して?そんなのあってはならないだろう...。

あくまで30歳にほど近かった様な人間だぞ。

キモいな俺...平常心平常心。

煩悩は捨てないと。

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