悠馬 第十四話
いつか。
いつか必ず。迎えに来るから。
ちゃんと自分の足で立てるようになったら
そうしたら、もう絶対離さないから。
言えない想いを伝えたくて、ゆいの至るところに口づけた。
何度も何度もゆいに触れて、ゆいを揺らして、
溢れるくらい注ぎ込んでも全然足りなかった。
ゆいの中が、俺だけになればいい。
その恍惚とした表情も艶やかに濡れる唇も
どこまでも従順に応える身体も
誰にも見せたくない。誰にも触らせたくない。
待ってろって言いたかった。さらっていきたかった。
でも、できない。
俺には夢しかない。
確かなものが何もない。
疲れ果てて眠るゆいを抱きしめて、何度もキスした。
ゆいの寝顔を飽きるほど見ていた。
静かで、世界中で二人だけになったみたいだった。
このまま朝が来なければいい。
ゆいの身体から自分を離したとき、
あまりに寒くて自分の中で何かが凍った。
ゆいをシーツで包んで、指にキスした。
いつだって。俺の気持ちはここにある。
自分の指から外したリングをゆいにはめた。
もしも。
俺が必要になったら。
可能性を考えて
テーブルの上に携帯電話の番号を残してから部屋を出た。
ゆいが目を覚ましたら、離れられなくなりそうで、
振り切るように駅まで走った。
ゆいに俺を刻み込んだつもりが、
俺がゆいにとらわれていた。
朝もやの立ち込める街は、明るくて眩しくて泣きたくなった。
『IF』 EXZイグズ
作詞・作曲 Yuma 編曲 EXZ
初めてつないだ手が あんまり小さくて驚いた
目まぐるしく変わる君の表情に 僕は魅せられてるんだ
夕暮れの街並み 冷やかしで入る店
散歩の犬とすれ違うたび 微笑む君
もし 今笑っているのなら
君と手を取り合って
青い空のもと 遠くはばたける
きっと 遥か
君を想ってる
いつも いつでも
君のことだけ
初めて聞いた声が あんまり可愛くて照れた
黒板を見つめる君の真剣な横顔に 僕は見とれてるんだ
定番のポップコーン 閉園間際の観覧車
震える君にキスをした 誓うよ
もし 今泣いているとしても
君を抱きしめることも
頭を撫でてやることも
できないけれど
君を想ってる
いつも いつでも
君のことだけ
君を想ってる
いつも いつでも
君のことだけ
どうか僕の歌が君に届きますように
「ユーマ、何見てるの~?」
ニューヨークに来てから、2年が過ぎようとしていた。
英会話、ボイストレー二ング、楽器の練習、曲作り、アーティストのバック演奏、イベント回り、音楽関係者への挨拶、…
マークは、育てたいと思う人材を集めて、養成スクールを経営していた。
バンドデビューを目指すのは俺を入れて8人。
出かける時は4人ずつ、組み合わせを変えて行く。
俺はベースのルーカスと気が合う。
「何もないじゃん。また物思いか~?」
スクールのあるビルから、外を眺めるのが習慣になっていた。
ゆいからの連絡はない。
俺に連絡するような事態にはならなかったということで、
それは多分、安堵すべきことなのだろうけれど、…
「相当好きなんだな」
ルーカスが俺の隣に並ぶ。
俺は携帯電話の番号を変えられない。
ゆいからかかってくることはないとわかっていても、
いつも、今も、もしかしたら、と思っている。
俺の曲は、詩もメロディーもどこかにゆいが入っていて、
バンドのメンバーたちにはそれが筒抜けのようだ。
ゆいの涙が、俺の音を変えたから。
「俺もなー…」
ルーカスは、染谷の娘でモデルをしているリナに夢中だ。
マークがリナの世話も引き受けているようで、
時々、俺たちと一緒になる。
「ユーマに渡したくないよ…」
リナは、俺にあからさまな好意を向けてくる。
はっきり断ったし、俺に好きな人がいると知っているが、
気にする様子は全くない。
「取らねーよ」
俺が言うと、ルーカスは情けない笑みを浮かべる。
それなりに、知り合う女もいるけれど、
なんとなく、ゆいが泣いている気がして、俺は真面目に付き合えない。
「今度、日本の音楽フェスティバル。ユーマ、行くんだろ?」
「絶対行く」
日本で行われる大規模な音楽フェスティバルに出演が決まって、
俺を含めたメンバー4人が行くことになっていた。
2年ぶりの日本だ。
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