第18話

「…思ったんだけどさ?何でネフェル達は俺に宣戦布告してた訳?」


「アタシらの先祖は人間の奴隷だったのさ…けど魔王によって誇りと、自分の意志による闘争を得た…支配されてきた過去の清算をさせる戦いさ…」


「…人間嫌いだったんだね。」


「そして何より、魔王に心酔している者が多い。人類に反逆した魔族の長…皆の憧れだったのさ…アンタが戦いをやめるまでは…」


「何か複雑…」


「別に?もう済んだ事さ。アタシは負けて、アンタが勝った……それに、当時の事は全部憶測でしか話せない…」


「そーなの?」


「奴隷だった先祖がいたかどうかすら分からないのに、戦うのは嫌だって甘ったれた連中ばっかりだった…アタシは本能で戦いを望んだけど…既に一族の殆どは腑抜けて、牙が抜けちまったんだよ…」


「道理で、私が魔王として指揮してもやる気の無い連中ばかりな訳だ…」


「…つまり、宣戦布告はほとんどネフェルの考え?」


「まぁ…対等に戦える存在がいなくなる事への八つ当たりさ…悪く思わないでよね?皆の前であんな事したんだから…♡」


「まぁ、猫ちゃんだし仕方ないな!ヨシヨシ!」


「にゃっ…♡あ、アタシは猫じゃない、虎だ…!」


「なでろ」


「…これが多頭飼いというものか…」


────────────────


「こんの…馬鹿モンがぁ!」


「ぴぃっ!」


「あれだけ山に近付くなと忠告していたにも関わらず…!」


ミーティアのギルド内にて、子供達が叱られている…


「子供ってのはどうしてああも考え無しなのかね?」


「…俺の方を見て言わないでほしいな。」


「アンタの子供時代に比べれば、あの子らは可愛いもんだよ。」


「ブルートは魔物を狩りに街を抜け出すし…ギルド長の武器を勝手に持っていって、いつも怒鳴られてましたよね?」


「まだまだ余罪があるんじゃないのかい?」


「まぁ…うん…」


そんな話の最中も、雷の様な説教が続いている。


「しかし…よく生きて帰って来た…誰も怪我無く無事なのは奇跡じゃ。」


「えと…魔王のねーちゃんに助けてもらったから…」


「………え?」


「?」 


「魔王に!?」


「え…あ、うん。青い蛇の…」


「それを早く言わんか!?ぐ、具体的にどういう…」


子供達は魔王との交流を語った…


「なんと…わざわざ子供を助ける為に降りてきたのか…!?」


信じがたいというのが普通である。迷惑そうにしながらも、しっかりと街まで子供を送ったというその行動に…


「なんなら…滑るから気をつけろ〜とか…何か分からない木の実を食べない〜とか…お母さんみたいでした…」


本来それは素晴らしい行いであるが、魔王という立ち位置がその行動を不気味な意図を想像させてくる。


───────────────


「それにしても、ガキが襲われてるからって飛び出していくとは思わなかったよ。」


「当たり前でしょ〜?あんな所で死なれたらこっちも迷惑するからね!虫の死体とかがそこらに落ちてたら見るだけでげんなりするからね。」


「…虫扱いとはね…」


「例えだよ例え!まぁ後、子供を助けたってのが噂になれば人って案外すぐに手のひら返して友好的になるかもしれないし…情けは人のためならずって事だよ。」


「かえって舐められるだけだとも思うがな…」


「まぁそのくらいの方がいいでしょ、現状では買い物すら出来ないんだから…砂糖と塩を体が求めているんだよ!」


「自分で作ろうとは思わんのか?」


「そこまでして欲しい訳じゃないんだよね〜…服とかお布団は無いと死活問題だから即席で何とかしたけど…」


「…私達よりも?」


「何だ急に!?面倒くせぇ〜…そういうのには答えられないよ!例えるなら…心臓と脳みそのどっちを壊した方がマシなのかって言ってる様なもんだぞ?どっちも無くなったら死ぬでしょ!?」


「ふふ、そうか…♪」


「…悪い気は…しない…かな…」


「それは何よりだよ…んん?」


(あれ…棚の鍵開けっ放しにしてたっけ…?)


「まぁいっか…寝よ寝よ…」


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