34ブレス<<< オレは抱きしめてなでまくる!

「ばばあ!

ぐみゃ!?

なんでずっと座ったままだったのに頭突きするの!?」


厳しい視線でイーラと睨み合ったままオレの腹にめり込むシャオちゃんの側頭部。


「どんな時でも禁句は禁句ね!」


「あら♪

アナちゃんこんにちは♪」


オレの顔を見た途端、張り詰めていた空気を溶かすシャオちゃんとイーラ。

こんにちはってのどかなこと言ってるし。


「戦場のど真ん中で二人でなにしてんのさ!」


「シャオお姉様がここを通してくれないのよ♪」

「アナちゃんを待てたね」

「なんでオレを?」

「アナちゃんにイーラと戦てもらうね」


「ばばあがやればいいんじゃないの?

ぐみゃ!?」


もう一回腹にめり込むシャオちゃんのおでこ。


「まだ言うか?」

「はい。ごめんなさい」


「戦場でなにを遊んでるのかしら♪

師弟そろっておバカさんね♪」

「おバカなのはアナちゃんね」

「二人してバカって言ったあ。

ふわ〜ん」


「冗談はともかくイーラに提案したね。

アナちゃんと戦て負けたらアナちゃんの女になてもらうとね」


「そんな提案受けるわけないんじゃない!?」


「提案を受け入れたわ♪」

「受け入れていいの!?」


「うふふ♪

シャオお姉様とやり合っても勝てると思うのよ?

だけど万一負けちゃうかもって思うと勝負できないのよね♪

アナちゃんと戦いさえすれば手を引いてくれるって約束してくれたのよ♪」


「万一とは聞き捨てならないこと言ったね?

ということね?

アナちゃんいいね?」


「なんだよ。

いまの感じだとシャオちゃんが普通に戦って勝てばいいだけじゃん。

なんでわざわざオレにやらせるんだよ?」


「うちはもう引退したね。

もう戦わないと決めてるね。

どうしても戦うというなら現役の弟子と妹分がやりあて未来を決めるといいね」


「それじゃあアナちゃん♪

わたしとやりあいましょうか♪

あなたを倒してテルースを支配させてもらうわね♪

きっとわたしの娘に繋がる手がかりが見つかるわ♪」


「一応、聞くけどさ?

娘探しをオレが手伝うから戦争やめてって言ってもダメ?」


「あら♪

優しいのね?

でも探すあてなんかあるのかしら?」

「ない!」


「ふざけんな!

どこぞの姫の娘だかなんだか知らねぇが、てきとーぶっこいてんじゃねぇ!

バカなこと言いやがると殺すぞおらぁ!?」


「うわ!?

イーラがバカって言ったあ。

そんなに怒んないで!?

まるで別人みたいなんだけど!?

ぐっすん!

姫ってなに!?」


「あいや〜。

言うなて言たのに怒ると約束忘れるね。

こっちがイーラの本性ね?」


見事に編み上げられたオレンジの長髪を龍気で振り乱すイーラ。

白い肌を真っ赤に怒ってる。

さっきまでの優雅な微笑みはどこいった?

人相変わってるよ?

水着のようにぴっちりしたワンピースのアーマードスーツ。

前ががばっと開いて丸見えなひらひらレースのスカートをひるがえして、大きく開いた両袖のひらひらレースが舞うように拳をかまえてる。


めっちゃ怖い。

いつだかクインが言ってた通り怒ると豹変するってこれのことか。


「やんなきゃダメみたいだな?」


オレも龍気を体内で内転させる。

先制攻撃するか?

かまえた型からすると古武術エンシェントアーツだよな?

隙がないなあ?

やっぱりここは魔装龍甲術ドラクーンアーツが得意としている虚実を活かした感じでやってみるか!


「いくぞイーラ!」

「かかってこいやぁ!」


殴り合いが始まる寸前。


「にゃんにゃんにゃ〜〜〜♪」

「「「にゃ?」」」


とっても緊張感のない声に三人で振り返る。


四足歩行で走るとっても小さなかわいい姿。

ミサイルをするりと爆炎を突き抜けてやってくる。


「アーレ!?」


「アナーーー!」

「クイン!?」


とってもびっくりどういうこと!?


先っちょが黒いでっかいにゃんこ耳にふさふさしっぽ。

黄色い体毛に黒い水玉模様。

その背中にクインが乗って猛スピードでこっちに向かってくる。

いくら小柄なクインでも重くない!?

なんだか慌てた様子が変?


「イーラ、ちょっとストップ!」

「……にゃんこかわいい」


走るアーレを見て怒りの表情が和んでるし。

にゃんこ好きか!?


「アナおねえちゃんにおとどけかんりょうにゃ!」

「アナ! 大変なの!

聞いて!」


目の前で急ブレーキして止まるアーレ。


「ちょっと待った!

アーレがにゃんこ!?

なんで!?」


「アーレ、わくちんうっちゃった!

ノアちゃんみたいににゃんこににゃりたかったのにゃ!」

「わたしがワクチン接種した時に勝手に持ち出したみたいなの。

気づかなくてごめんなさい!」


「それならオレも気づかなかったけどさ。

体は!?

拒否反応とか大丈夫なのか!?」


「うん♪ にゃんともにゃいのにゃ♪」


にゃんこ語になってるしにこにこしてるし。

アーレってばずっとノアちゃんの姿をキラキラ見てたし。


「アーレってもしかして?」

「うん生まれつきインネイトかもしれない。

ワクチンで活性化したのかも」


「マジか!

クインも元気になって良かった!

心配してたんだぞ!

だけど戦場にきたらダメだろ!」


クインとアーレを抱きしめてなでまくる。

もふもふ!


「ごめんなさい!

なんとか生きてたよ。

でもまだちょっと辛くて。

そしたらアーレがまかせろって、わたしを抱えてノアを飛び出しちゃったの。

インカム通信でもよかったのに死ぬかと思った!」


「マジか!

アニマルタイプのドラゴンか!

小さいのににゃんこすごいな!」


「たぶんサーバルキャットだと思うんだよね?

運動能力と野生の血が能天気のアーレにぴったりすぎよね?

だけどわたしもドラゴンになれたからなんとかなったわ」


「アーレもドラゴンになっちゃたんだな?

なんのドラゴン?」


クインもビキニタイプのアーマードスーツを着てるけどヒトのまま。


「わたしも炎なんだ♪」


「マジか! なんの炎?」

みんなはどうした?」


「それはあとでね。

ノアは戦闘に巻き込まれないように避難したの!

大変なのよ!

ノアが高濃度のソウルの発生を検知したの!」


「それがどうかしたんか?」


「アビスがあくのよ! ここに!」

「なんですって!」

「アビスって大穴だよな?

なんで?」


「ノアが教えてくれた!

大量破壊兵器ケイオスによるものだって言うの!

このあたり一帯がアビスで飲み込まれるかもしれないの!

シェルターも! テルースも全部!

みんな逃げないと!」


「なんだって!?」

「アビスが発生するのね♪

こうしてはいられないわ♪

異世界に行く準備をしないと♪

アナちゃんバトルはまたの機会にしましょう♪

シャオお姉様もごきげんよう♪」


「待つね!

死んでしまうようなとこにはいかせないね!

イーラが思てるよりアビスは危険よ!」


踵を返したイーラの前に縮地で立ちふさがるシャオちゃん。


「ああん!?

ふざけたこと言ってんじゃねぇよ?

わたしの娘に会う邪魔をするってのかい!

引退したばばあはすっこんでろ!

ぐは!?」


イーラの腹に突き刺さるシャオちゃんの頭突き。

うん。

スピードが早すぎて見えない。


「引退しても聞き捨てならないことは許さないね?」


おおう。

二人の龍気がほとばしって髪がゆらめいてるし!


「シャオ様! イーラ!

そんな悠長なことを言ってるヒマはないのよ!

あれを見て!」


宇宙ソラを指差すクインの行く手を見る。


昼なのに濃いめの青い空には銀河がよく見えて瞬いている。

手を伸ばせば届きそうに感じる宇宙ソラ

天から一筋、黒くて細い光のようなものが地上に降りていた。


「なんだあれ?」

「大きいクイン。とうとうやてしまたか」


「大きいクイン? とうとう?

シャオお姉様? どういうことですの?」


「大きいクインは後悔してたね。

イーラに女帝の座を奪われたことを。

戦いで夫を失て仲間の命を散らしたことを。

そしてカントリーという独立自治体が争て、世界を分裂させたままでいることを嘆いていたね」


「敗者の泣き言ですわね♪」

「そうね。

小さいクイン、力が欲しいと言ていたね?」


「は、はい」


「大きいクインも同じだたよ。

クインはうちに言たね。

世界を統べると。

大量破壊兵器ケイオスを使うことでよ」


「お母様……なんてことを……

やっぱり母はケイオスを見つけていたと!?」

「最後に会た時は探している途中だたね。

ただ、カケラを見つけたとつぶやいてたね」


「カケラ?

……もしかして?」


「長話はうんざりですわ!

わたしはアビスに行きます!

そこをおどきなさい!」

「どかないね!

うちはイーラも死なせたくないね!」

「この、ば……ロリっ娘があ!

そこどけやあああ!」


言い直してるし。

イーラにとってもばばあは怒らせたくない禁句か。





大気が静かに震えた。

みんなが突然の現象に一点に視線を向ける。


天から降る黒い光が少し太く拡張した。

地面にあふれるソウルの塊が目に視えるほど濃くなって黒いもやがあふれ出す。

中心に小さな穴が開くと大気を吸い込み始めた。


アビスであることに気づいた近場の軍人たちが逃げていく。

テルース、カントリードームからサイレンが鳴り響いてる。


「アビス♡

あの穴の向こうに娘が♡」


戦うことも忘れてうっとりするイーラが歩き出す。

体で止めるシャオちゃん。


「クイン。

ほっといたらどのくらいの大きさになる?

あの穴をふさぐ方法はないのか?」


黒い光を凝視したままクインに尋ねる。


「もしも大戦時の記録と同じならユグドラシルフォレストも飲み込むくらいだと思う」

「そんなにか!?

貧民街もおっちゃんもレイナの仲間もテルースの人たちもみんな死んじゃうじゃん!

時間は!?」


「分かんない。

でも穴が大きくなる感じからするとそんなにかからないと思う」


さっきよりも黒い穴の半径が大きくなってる気がする。

ほんとにそんなに時間がないのかもしれない。


「カケラってなんのことか分かるか?」

「ほんとかどうかは分からないんだけど。

ケイオスには本体とは別にいくつもの拠点があるらしいの。

その一つを見つけていて操作しているとしたら……」





また大気が震えた。

振動の発信源は?

見上げる。

大昔の大戦のせいで近くなった宇宙ソラ

黒い光の先にかすかに見える黒い天。


「あれは……衛星!?」


「エイセイ?

あの黒い光の先にケイオスのカケラがあるんだな!

そいつを壊せばいいってことだろ!」


「でもどうやって宇宙までいくの!?」


宇宙ソラにはきっといけるさ!

ノアがあるだろ!」



☆次回<<< オレ、一人でいっちゃうな!

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