第3話
少し陰のある顔で説明された事例。
退かなかったというより、直ぐに退けなかったという諸々の理由で、車を退けなかった所有者。
それを見兼ねて車を降りた女がのしのしと威圧感高めに、車の運転手へ罵倒を飛ばした。
それだけに留まらず、男の無礼に男の職場を特定して嫌がらせをしたらしい。
それはそれは、随分と香ばしいぞ。
なんという傍若無人な事件なのか。
その人は今なにをしているのか調べて欲しいと頼んだ。
ルウナはお人よしでもなんでもないが、そんな被害者がいるのならば、己の出来るようななにかをしたい。
とはいえ、やるのは自分じゃなくて、周りの大人になるけど。
幼女に雇用はまだ無理でしょ、ははは。
「お調べになってどうするのですか」
「調べてみないと分からない」
その場の内容で、決めるのみ。
今からでも少しは予測して考えておきはするが。
フェルナンデス達にもその人を調べたらこちらへ寄越してもらえまいかと、聞く。
外へ出ると、やはり色々刺激があって創作意欲が湧く。
後日、例の車事件の人が連れてこられた。
やはり、女性に恐怖を抱いているらしい。
とても、とても、怯えていた。
怯えないでくれとハーブティーを用意したのだが、口をつける様子はなく参ったなとこちらも話す機会を失う。
すかさずフォロー役に回るウチの優秀な執事達。
「ルウナ様は性格破綻者ではないです。そう怯えないでください」
他の女性達を言外に破綻者って言っちゃってる!!
苦笑して、こちらからいうことはなにもないので、執事に任せることにした。
男同士の方が話しやすいだろうし。
説明はされているのだろうかと顔を向けると、他の執事らが頷く。
ちゃんと話しは通しているが、恐怖で身動きが取れないようだ。
こちらは女なので、なんとも口に出来ない。
女性に対して完全にトラウマを発動させていて、下手に話しかけられない。
私は怖くないよと言ったとしても無駄なことである。
なぜならそんな安易に解ける問題ではないから。
彼は、やはり怯えて震えている。
でも、食べ物を薦めるとおずおず食べた。
まずは彼の精神的な部分を調べてみましょう。
いくつか、男性使用人にやってもらう。
ルウナがちょっとでも話すと、すぐに体が硬直して会話が進まなくなるから。
ルウナはそれから、ずっと確認するようにその人を見た。
人となりを知るにはやはり、確認は必要だ。
ルウナはこちらを確認しながら、尋ねる使用人たちに目で合図しながら質問を加えていく。
彼女はそれから男達と協力して、その人を分析していった。
とは言え、この世界にはそんな精神分析のような概念は無いので、自分の独学である。
素人丸出しのことではあるが仕方ない。
この女社会において、精神分析など何の意味もない。
男達の精神よりも、女達の精神の方が1番優先されるからだ。
男たちの精神を気にしていては、子供の数など増えるわけがない。
傷つけられようが何をされようが無罪だ。
優しい世界ではあるものの、やはりそこは生存競争において、何よりも女性が優先される事は揺るがない。
それに関していろいろ言いたい事はあるが、違う世界からやってきたので御門違いかなとは思う。
法律でも女性が優先されるので、自分が口を出しても何か変わる事は無い。
しかし、作ることに関しては、己が一番優先されるので、女たちに邪魔される事は無い。
この世界において、この世で1番の武器であり、防御である。
女優先の世界なので邪魔されたらそこで終わりと言うのは、男たちにとってかなりの損失になる。
ルウナは女たちに邪魔されないと言う鉄壁の防御力を持っているのだ。
それは子どもたちにとっても、これから男たちのためのゲームも守れるということ。
自分が持つ一番のアイデンティティーだ。
男性証人たちは、質問の意図がわからないまま、男に質問を続けていく。
男もなぜこんなことを聞かれるのだろうかと疑問に思いながら答えているのがそばから見てわかる。
正直、自分にも質問したからといって解決できるとは楽観的には思えない。
だが、女の自分がいても安心だと言うことを知って欲しい。
せめて、この家の中は。
それによって、ゲームの制作への道はかなり進むだろう。
ルウナと男たちは、質問を終えると、休憩を挟んだ。
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