第4話 三人で前へ
桜ノ宮学園の高校棟は、放課後になると一気に賑やかさを増した。部活動の生徒たちが校庭を走り回り、教室からは笑い声や話し声が漏れ聞こえてくる。しかし、その喧騒の中には、校則の重圧に耐える生徒たちの姿もあった。高校1~3年生に対する「お漏らし罰則」は、着替えなしで1日下半身裸で過ごすという過酷なものだ。そしてこの日、高校2年生の3人組——藤田麻衣、岡崎由紀、松本梨花——が揃ってその罰則に直面することになった。
失態の連鎖
その日の午後、最後の授業は化学の実験だった。麻衣、由紀、梨花は同じグループで、酸と塩基の中和反応を観察する課題に取り組んでいた。3人は仲良しで、いつも一緒に笑い合っているクラスでも有名なトリオだった。麻衣はリーダー格で明るく元気、由紀は少しおっとりした優しい性格、梨花はクールで頭が切れるタイプだ。
「ねえ、麻衣、これで合ってる?」由紀がフラスコを手に持って尋ねると、麻衣は笑いながら答えた。「うん、大丈夫だよ。梨花が計算してくれたし、失敗しないって!」梨花はメガネを直しながら「失敗したら責任取らないからね」と冷静に返した。
だが、その油断が命取りだった。実験の最後に結果を発表する時間が訪れ、3人は教卓の前に立った。クラス全員の視線が集中し、麻衣が説明を始めた。「えっと、この反応では…pHが…」緊張で言葉が詰まり、彼女の手が震えた。由紀がフォローしようと横に立ったが、彼女もまた足が震えていた。梨花は冷静を装っていたが、心臓がドキドキしているのが自分でも分かった。
そして、ほぼ同時に3人に異変が起きた。麻衣が最初に小さな声を漏らし、「うそ…」と呟いた。次に由紀が「あっ」と顔を赤らめ、最後に梨花が「やばい」と呟いて俯いた。教卓の周りに小さな水音が響き、教室が一瞬静まり返った。
「藤田、岡崎、松本…揃ってやっちゃったか」「うわ、マジかよ」「3人一緒って珍しいな」
クラスメイトのざわめきが広がる中、化学の田中先生がため息をついた。「校則ね。保健室で手続きしてきなさい。」3人は顔を見合わせ、羞恥で頭が真っ白になりながら教室を出た。
下半身裸の現実
保健室にたどり着いた3人は、保健の先生から淡々と指示を受けた。「はい、制服の下半身は全部脱いで。下半身裸で1日過ごしてね。」麻衣は「え、マジで…?」と呟き、由紀は「恥ずかしいよ…」と涙目になり、梨花は無言で唇を噛んだ。
カーテンの裏で、3人はスカートと下着を脱いだ。上はセーラー服のまま、下は完全に裸。鏡に映る自分の姿を見て、麻衣が最初に口を開いた。「これ、ほんと最悪だね…」由紀は「みんなに見られるの、耐えられないよ…」と震え、梨花は「仕方ないよ。校則なんだから」と冷静を装った。
保健室を出た瞬間、冷たい風が下半身を直撃した。廊下を歩くたび、すれ違う生徒たちの視線が突き刺さった。男子生徒が遠くから彼女たちを見て囁いた。「あれ、藤田たちだ」「下半身裸って…やばいな」「ちょっと笑えるけど、すごい勇気だよな」
麻衣は両手で前を隠そうとしたが、由紀が「隠しても意味ないよ…」と呟き、梨花が「歩くしかないよ」と淡々と言った。3人は肩を寄せ合い、放課後の校舎を進んだ。
放課後の試練
放課後、3人は部活動に行くつもりだった。麻衣と由紀はバドミントン部、梨花は図書委員会に所属している。しかし、下半身裸の状態で活動するのは想像以上に過酷だった。バドミントン部の練習場に向かう途中、校庭を横切る際に他の部員たちの視線が集中した。
「うわ、藤田と岡崎だ」「下半身裸でバドミントンって…」「頑張ってるな、ちょっと尊敬するわ」
男子部員が笑いものにする中、女子部員の一人が近づいてきた。「麻衣、由紀、大丈夫?ほんと、この校則おかしいよね…」その優しさに由紀が「ありがとう…」と涙ぐんだが、麻衣は「平気だよ!恥ずかしいけど、負けないから!」と無理やり笑った。
図書委員会の梨花も、図書室で本の整理を始めたが、訪れる生徒たちの視線に耐えきれなかった。「松本さん、すごいね…」「下半身裸でも普通にやってる」そんな囁きが聞こえるたび、彼女は本棚の影に隠れたくなった。だが、「逃げても仕方ない」と自分に言い聞かせ、作業を続けた。
帰宅路の羞恥
放課後が終わり、3人は一緒に帰宅することにした。キャンパスの門を出ると、夕方の街並みが広がった。麻衣が「一緒に帰れば少しマシかな?」と提案し、由紀と梨花が頷いた。しかし、その希望はすぐに打ち砕かれた。
駅までの道のりで、通行人の視線が3人に集中した。おじさんが驚いた顔で立ち止まり、若い女性が「何!?」と声を上げた。スマホを取り出す音が聞こえ、数人の若者が写真を撮り始めた。「やめてください!」由紀が叫んだが、麻衣が「無視しよう」と彼女の手を握った。
「すげえ、3人揃って下半身裸だ」「学校の校則らしいよ」「恥ずかしいだろうな、でも面白い」
通行人の声が耳に刺さり、3人は顔を赤らめた。由紀は涙を堪え、梨花は唇を噛み、麻衣は前を向いて歩き続けた。駅に着くと、電車の中でも視線は逃れられなかった。サラリーマンや学生が彼女たちを見てヒソヒソ話をし、中には遠慮なく写真を撮る者もいた。
「もう…耐えられない…」由紀が呟くと、麻衣が「大丈夫だよ、由紀。私たち一緒だから」と励ました。梨花も「あと少しだよ。家に着けば終わる」と冷静に言った。3人は肩を寄せ合い、電車の中でじっと耐えた。
前を向く力
電車を降り、それぞれの自宅にたどり着く頃には、夜の帳が下りていた。麻衣は玄関で深呼吸し、「なんとか乗り切った…」と呟いた。由紀は部屋で膝を抱え、「恥ずかしかったけど、麻衣と梨花がいてくれて良かった…」と涙を拭った。梨花はベッドに横になり、「この校則、ほんと最悪だね。でも、私たちなら大丈夫」と自分に言い聞かせた。
その夜、3人はLINEでグループトークをした。「今日、ほんと最悪だったね」と麻衣が書き込むと、由紀が「でも、みんなで頑張れたから、少しだけ強くなれた気がする」と返した。梨花が「次は絶対やらないようにしようね」と締めくくり、3人は笑いあった。
羞恥に苦しみながらも、彼女たちは友情でそれを乗り越えた。そして、この試練を忘れられない糧として、前を向いて歩き続ける決意を固めたのだった。
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