魔女と憐れみの花
林健太郎
第1章:ポルト・ルミナス
真珠色の光を放つ紺碧の空には、柔らかな綿雲が静かに浮かび、陽光はまるで名匠の筆致のように、街並みを鮮やかに染め上げていた。ここは、絵画から抜け出したかのような美しさを湛える街、ポルト・ルミナス――。
人口五千人のこの街は、緑豊かな丘陵に囲まれ、穏やかな気候に恵まれています。丘の背後では、銀葉のオリーブの古木が風に揺れ、麓にはオレンジやレモンの果樹園が太陽を浴びて輝いています。
目前にはエメラルドグリーンの海が広がり、波は白砂の浜に優しく打ち寄せ、心地よい潮騒が響きます。
ポルト・ルミナスの朝は、活気に満ちた漁港から始まります。東の空が茜色に染まる頃、漁船が次々と帰港し、新鮮な魚介類が威勢よく競りにかけられます。市場は活気に包まれ、賑やかな声が街に響き渡ります。
街の中心にある石畳の小路には、古都の面影が色濃く残っています。カフェやシーフードレストラン、職人の工芸店が軒を連ね、テラス席では談笑する人々が見られ、芳醇なコーヒーの香りが漂います。
ここに暮らす人々は、陽の光のように明るく、海のように寛容です。迷える旅人には笑顔で道を示し、時には自宅に招いて温かいお茶を振る舞います。困っている人には、老若男女を問わず手を差し伸べます。
まさに地上の楽園のような場所です。しかし、その境界には、昼なお暗い森が広がっていました。
森の木々は天を突き、複雑に絡み合う枝葉が光を遮ります。足元は湿った落ち葉に覆われ、歩を進めるたびに沈み込むような感覚が伝わります。夕闇が迫ると、蝙蝠が舞い、森の奥からは梟の声がこだまします。
この森はいつしか「魔女の森」と呼ばれるようになり、人々はその名を恐れ、決して足を踏み入れることはありませんでした。
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