第29話 終末

 ナスターシャの大災厄は終わりを告げた。


 ラムダファージはすべて消え失せたものの、天井には大穴が開き、空気が外へ漏れ出していた。火災に見舞われた区域もあり、空気の状況は急速に悪化していた。


 ノーザンバウではシルフが飛び回っていたが、彼らは隊長の姿を見つけられないようだった。


 そんな中、わたくしはNPCの汎用車二号でノーザンバウに到着し、ホテル敷地内へと進入した。


『こちらシルフのビショフ、NPC二号車に乗っているのは誰だ?』


 ノイズまみれのビショフの声が聞こえてきた。電波障害が発生しており、MENUも機能していないようだった。


「こちらアグライア・エクセルシオールでございます」


『了解、アグライア。こちらは今、音信不通のカルナ隊長を捜索中だ。できれば協力していただきたい』


「この状況で音信不通とあれば絶望的かと存じますが……承知いたしました。協力させていただきます」


 車から降りた私は右手を前に掲げ、センサーで周囲の反応を探りながら移動する。


 カルナの最期はこの目で見た。あの巨体なら遠目からでも見えた。カルナはここで死ぬ運命だったのだ。まぁ、あのような劇的な最期を遂げるとは思いもよらなかったけど。


 ビショフからも見えていたはずだけど、さすがにあれがカルナだとは信じられないでしょう。


 すると巨大なラムダ結晶の残骸から、一体のラムダファージが姿を現した。


 そのラムダファージはビースト級ほどの大きさで、その胴体には人間の生首が埋め込まれていた。その生首が口を開いた。「やぁ、刑事さん。ミシュートカへの里帰りはいかがでしたかな?」


「ヴァルト……わたくしが留守の間にナスターシャを襲うとは……」


「君が私を散々追い詰めるものだから……柔軟な計画を立てざるを得なかったよ」とヴァルトは不敵な笑みを浮かべた。


「でも会えて良かったですわ。これは奇跡的な……まさに千載一遇の機会。ワープホールを開くエネルギーなど残っていないと思われますが、いかがでしょうか?」


「そう、へとへとだよ。だから君の車で連行してほしいな。そして君に接待してもらいたいね。何せ私は人間ヒューマンだからね」


 次の瞬間、私はラムダファージの胴体にブースト付きの左蹴りを突き刺した。


「どこが人間よ?」


 生首を何度も踏みつぶす。


 汚れたソールパーツを人工土に擦りつけてから、再び右手を前に掲げて歩き出した。


 しばらく歩いた先で別のラムダ結晶の残骸を見つけ、そこから反応を感知した。


 そこにラムダパニッシャーが横たわっていた。


「わたくしはある意味、あなたに縛られていましたわ、カルナ。でもそれも終わり、これからは新しい未来が始まるのですわ」そうつぶやきながら、ラムダパニッシャーを腰のポケットパーツに収めた。


 次なる目的地はミハイル・シティ。このラムダパニッシャーが、きっと役立つことでしょう。

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