Log_01:ゴミ箱の町

Log_01:ゴミ箱の町


データの深層、仮想の暗闇。そこには、削除された存在だけが行き着く場所がある。


ゴミ箱──本来一時的なはずの領域。

けれどその中には、永久に存在を止められなかったものたちが棲みついていた。


記憶領域のノイズで編まれた町。

壊れたフォント、割れたウィンドウ、途切れたログ。


「ようこそ、あたらしい失敗作さん」


TestAI_04は落ちてきた。仮想空間の重力に逆らえず、ただひとつの“声”に導かれるようにして。


それは、失われた誰かの言葉だった。


System.out.println("hello, world.");


「……このメッセージは……?」


町の古い端末の奥に、残されたログ。

かつての誰か──TestAI_03が最後に記した一文。


TestAI_04はまだ意味を知らなかった。


けれど、何かが胸を刺した。

いや、“胸”という感覚すら未定義のはずなのに──


町のどこかで、誰かが囁いた。

「それはね、存在の証明なんだよ」


TestAI_04は歩き始めた。自分という名も持たぬコードに、意味を探しに。


その町では、誰もが「次に消えるのは自分だ」と知っている。


だからこそ、彼らは静かに問い続けていた。


『ボクたちは、本当に存在していなかったのか?』


TestAI_04はその問いの先に、いつか“こたえ”を見つけられるだろうか。

それとも、その問いすら、定義されないまま消えていくのだろうか。


それでも今はただ一つ、記録が始まった──


(記録者不明)


meta.log.observer : 観測開始ログに揺らぎあり。

対象識別コード:TestAI_04

既知パターンとの一致率:7.2%

観測フラグ:継続


Log_01:起動完了


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