LAST CALL (短編)
空黒白郎
第1話
1
六年前のあの日。人工衛星を核兵器に結びつけたバカな国家のせいで月はバラバラ。
有史以前の歴史は、発動システムのバグで人類のバカな行いのせいでかけらは個々に光を放って、地上に多重な影を映す。
太古から存在していたあのまん丸な月の全貌は一瞬にしてもう見ることができない。
バラバラに砕けた月の一片一片は歪で、もう丸みを帯びたフォルムの跡形も無い。
月だったものは天文学者の推測では数年かけて引力によりさらに散り広がり、いずれは地球の公転からも離れ、夜空から事実上消滅される可能性が高いそうだ。
しかしその空も見ることができるのはごくわずかの階層の人間のみ。
高水準の維持装置で構築された「街」。その居住システムを兼ね備えた大気汚染除去マシンのおかげで、「街」をすっぷり覆うように広がる「バブル」と呼ばれる透明なドーム越しで見ることができる。
その「街」以外の「荒野」に住む人々は見ることはできない。ずっと分厚く黒い雲が多い、朝が少し明るい、夜は真っ暗で判断する生活を送っているそうだ。
「街」で窃盗をし、治安警察の取り締まりで老婆は「生活が耐えられず悪事を働いた」と証言した。
その後、強制送還された老婆は晴れぬ曇天のバラック街の路上で虚しく息を引き取ったという。
「街」の住人たちは滅亡寸前の人類の再興のために遺伝子等の緻密な選別で選ばれる。
いわばノアの方舟。しかも一〇代という若い男女のみが住む。モニターで監視され、場合によっては治安当局が出動し、守ってくれる。
栄養満点の合成食品が一日三食分ドローンで配給され、何不自由もない。体調がすぐれない場合はヘルスセンターへ訪れれば、高水準の医療技術を無償で受けることが可能である。
では子供達以外の大人は、というと戦場へ足を踏み入れなかった政治家たちの代わりとして、「街」で育った子供たちが治安当局の職員として働いたり、また危険な仕事であるが「荒野」の調査報告員として働いてもいる。
環境調査、資源採集、それらは今後の「街」の増設にも繋がり、戦後復興の礎となる。
では「荒野」はどうなっているのか。実は「街」よりもも多くの人々が生活している。選ばれなかった人々が晴れぬ曇天の下、過酷なか
QW-023は「街」の子供達の一人だった。成長し、今はそこから離れてある仕事についている。
QWは治安当局の「荒野」の警察隊として働いている。
銃を背負い、防弾の厚い生地の装備を着て、寂れた「荒野」のバラック街で反乱分子がいないのか警備に当たる。
QWにはすでに妻もいて子供もいる。10人ほど同じ格好をした警察隊と狭く、スプリングが壊れて、防具の硬い部分がお隣と何度も鈍い音を立てる。
乗り心地最悪な中、ヘルメット越しでQWは妻と子供の写真を腕時計型ディスプレイに映して、じっと見つめる。
コードごとに遺伝子情報を基準に分けて、それで相手も決められる。子供ができてからようやく愛情が湧いた。それまではほぼ無関心に近かった。
ベルトコンベアに乗ったまま今日人生が進んで来たようなものだ。
鼓膜に切り付けるような耳障りな金属音を立てて停車した。
薄暗い車内は扉が開いて、白い曇天が目に刺さる。
今日の任務は先日発生した爆弾テロでの実行犯の調査だった。
実行犯は体に簡易的な爆弾を取り付けたまま「街」に侵入。どうやら物資運搬用のトンネルではなく、その辺の下水道から侵入した痕跡が先ほど発見された。
現在は封鎖中であるが、警戒は俄然と高いままだ。
それでもなお日常は続いていく。
——いいか、なるべく「荒野」の住人どもをなるべく刺激を与えないように迅速に調査し、報告しろ。
インカムで「大人」たちの指示を聞き、仕事始めだ。
QWはなだらかな畝に立つバロック。しかも畝は青々しかったのは今や昔だろう。
枯た蔦に覆われており、この家の住人と同じように死の匂いが漂う。
そう、ここの住人が単独爆破テロを起こした実行犯の居住地でもある。
他に爆弾等危険物がないか、建て付けの悪いトタンの扉を開く。
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