第48話
「ネージュ様……」
まさかこんなことがおこるなんて……
体が小刻みに震える。
妃殿下の『許さない』と言う言葉が頭の中で何度も繰り返し聞こえてくる。
バタバタとお医者様と看護師さんが慌ただしく動き回っているのを壁際で立ったまま見ていた。
わたしのせいで彼が……青ざめたままネージュ様から視線を離せない。
どうか助かってください。
お願い………
どれくらい時間が経ったのか……ふとリュシアンは……と頭によぎるも、マシュー達がそばに居てくれる。そう自分に言い聞かせネージュ様の治療に立ち合った。
「まだ経過を見ていかなければなんとも言えません」
お医者様は精一杯治療をしてくださった。
あとは……ネージュ様の生命力にかけるしかない。
かなりの出血と深く刺さってしまったナイフにより内臓を損傷しているらしい。
この世界の医療はまだまだわたしが生きてきた技術に敵わない。助かるのだろうか?
嫌な予感しかしない。
「………大丈夫ですか?」
「…………」
遠くから声が聞こえた。
意識が…………ぼんやりとしていて……ここは?
確かネージュ様の治療中だったはずなのに……
「あ、あの………」
「倒れられたんですよ」
「たおれた?」
わたしが?ネージュ様は……どうなったのかしら?
「ネージュ様は?」
看護師さんがすまなそうに首を横に振った。
「まだ意識は戻っておりません」
「そうなんですね……」
看護師さんが悪いわけではないのに気を遣わせてしまったことに詫びを入れた。
このままベッドで寝ているわけにもいかず起きあがろうとした時、ザワっとした声が聞こえてきた。
??
騒がしい声の方へと向くと、王太子殿下が「色々すまなかった」とわたしのそばに来てすぐに謝罪の言葉を言われ思わず驚いた。
「頭をお上げください!」
少し大きめの声が出てしまう。
「妻は隠し持っていた金や宝石でそばに居た使用人や護衛達を買収していたようなんだ。その者達を使って外の情報を集めていたらしい。今日ルシナ殿がこの王宮に来ることを知って、使用人達をさらに買収して離宮から抜け出していたんだ。そして君達が王宮を出る時を狙って……危険な目に遭わせてしまい申し訳なかった」
「……妃殿下は今は?」
「牢に入っている。流石にこれ以上好き勝手にさせるわけにはいかないからね」
「そうですか……」
「ネージュはまだ目を覚ましてはいないようだが腕のたつ医者に診てもらっているので必ず助かる」
「私を庇ってネージュ様が怪我をされて……」
殿下を責めても仕方がないことだけどつい酷い言葉を言ってしまいそうになるのをグッと堪えた。
ーーどうしてもっと監視を強めなかったのですか?
ーーもっとちゃんとした使用人を雇うべきでは?
言いたいことはたくさんある。でも………
「私を妃殿下と面会させてはいただけませんでしょうか?」
「もし会えば………妻は君を罵るかもしれない。酷い言葉で傷つけるだろう。やめておいた方がいいと思う」
「それでもお会いしたい。お願いいたします」
私は頭を下げ続けた。
妃殿下がどんな罰を受けるのかわからない。でもこのまま一度も会わずに終われば自分が後悔する気がする。
「私は妃殿下を尊敬申し上げておりました。恨まれるようなことは致しておりません。いくら嫉妬を覚えたと言ってもなぜそこまで……聞いてみたいのです」
王太子殿下の目をしっかりとみた。目を逸らすことなく。
「…………一人では許可できない」
「マシュー………いえ、マティアス小公爵様についてきてもらうように頼んでみます」
「わかった……少し時間をくれ」
「ありがとうございます」
ベッドから起き上がり頭をもう一度深々と下げた。
「ネージュの顔を見てから帰るよ」
少し……ううん、かなり疲れ切った顔をした王太子殿下が私に軽く手を振って部屋を出て行った。
私はその背中を見送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます