犬猿の仲と呼ばれるライバル校のアイドルとギャルと仲良くなった
もぶだんご
第1話 ライバル校のアイドル
俺(相澤伊織)は今、返されたテストの間違いを正していた。
間違ったところは一つだけとはいえ、こういうミスはすぐに直さなければ、癖となってこれからも間違い続ける。
クラスでは今回のテストの話をしながら、多くの人が盛り上がっていたり、逆に点数を落とし嘆いてる奴らもいた。
(うるさい奴らだ)
「では、皆さんお疲れ様でした。テストが終わりましたが、来月には模試があります。絶対に翔猿学園の生徒には負けないように!」
翔猿学園とは、この学園の近くにある...というより川の向かい側にある学園だ。
ここの学園は犬谷学園...進学校なのだが、翔猿学園も進学校という事もあり、ライバル校として教師も生徒もバチバチ状態だ。
(ライバル校だから負けるなとか...)
俺としてはそんな事関係なく、模試で上位に入るつもりなので、この熱気はウザいと感じている。
そんな態度を取っているからか、俺には友達がいない。
そもそも、勉強の邪魔になるので作ろうとも思わない。
(家に帰ったらうるさいのがいるし...いつもの場所行くか)
本来なら家に帰って勉強と言いたいのだが、集中出来る場所じゃない為、俺はいつもの喫茶店へと向かっていた。
「いらっしゃいませー。あ、伊織君、いつもの席空いてるから使っていいわよ」
「ありがとうございます」
「飲み物はいつもので大丈夫?」
「はい」
ここの喫茶店も常連なので、顔と名前、そして注文までも覚えられていた。
俺としては楽なのでいいのだが、いつも席を開けてもらっているのは、悪いと思っている。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
俺が飲むのは決まってアールグレイの紅茶。
別に紅茶が好きな訳では無いが、ここの紅茶は格別で、1度飲んだ時から忘れられず、それ以来ずっと同じものを頼んでいた。
紅茶を半分ほど飲んだ時、1つ席を開けたところに人が座っていた。
制服を見れば、翔猿学園の生徒だった。
(絡んでこなければいいけど)
俺らの学園とは文字通り犬猿の仲と呼ばれる為、突っかかる人も少なくは無い。
だが、俺の予想に反してその生徒は絡んでくる事はなく、勉強を進めていた。
「うーん、ん?もー、何これぇー」
だが、勉強をするにはうるさすぎる。
その生徒は何か悩んでいるところがあるらしく、ずっと頭を唸らせていたのだ。
そして俺には3つの選択肢がある。
1つ目 集中出来ないから帰る。
2つ目 うるさいと注意する。
そして3つ目...教えてあげる。
1つ目の案を採用したいところだが、家に帰っても勉強の続きは出来ない。
なら、2つ目の案はどうだろうか。
うん、ただの迷惑客だろう。
うるさいとはいえ、常識といえばギリギリ常識の範囲だ。
俺はため息をついて、その生徒の方を向いた。
そこにいた生徒は綺麗なピンク色の髪をしていて、容姿端麗な美少女。
髪を三つ編みして2つ分け、それをおさげのように前に垂らしている。
俺でも噂に聞いた事がある翔猿学園のアイドル、神野綾華。
確かに目を奪われるアイドルのような見た目だが、俺には特に響く訳でもない。
「さっきから何悩んでいるの?」
「え?」
神野さんから誰だこの人という視線を受けて、気づいてしまった。
普通に考えれば、こんな話しかけ方は有り得ないだろう。
人とのコミュニケーションを怠った弊害がまさかここで出るとは思ってもみなかった。
「いや、さっきから唸り声が聞こえていたから、何か悩んでいるのかと」
最悪の出だしというか、普通にナンパかと思われるかもしれないが、俺の心地の良い勉強の為に多少の非難は受け入れよう。
「えっ、あの...犬谷学園の人?」
「そうだけど...どうかした?」
「...な、何をしようと?」
どこか警戒しているような神野さんだが...ああそういう事か。
犬猿の仲という認識はあちらも同じ、つまり、俺は突っかかってきたと思われているのか。
「最初に1つ、俺は犬猿の仲とか呼ばれる関係は興味が無い。だから警戒しなくていい」
こうして宣言することはとても大事だ。
その証拠に、さっきまで挙動不審気味だった神野さんは、少し落ち着きを取り戻していた。
「悩んでいるというか...勉強が分からなくて」
やはりそういうことだったか。
教えれる範囲なら教えようと横目で神野さんの開いている教科書を見たのだが...
「え?1年生の?」
普通に声が出てしまった。
俺の記憶が正しければ、翔猿学園のアイドルは俺と同じ学年のはず、1年の頃に騒がれていた事を考えれば間違いない...だとしたら...
「留年したのか?」
「違います!」
流石に違ったようだが、だとしたら何故...
俺は考える人のようなポーズを取るのだが、全く分からない。
「何?犬猿の仲とかどうでもいいと言いながら、馬鹿にしてくる人なの?!」
「いや、すまない。本当にそんなつもりはなくて...」
「信じられない!だって私の事馬鹿にしたじゃん!」
「本当に申し訳ありません」
自分に非があることが分かっているので、俺は深々と頭を下げることしか出来なかった。
(ミスったか....)
どうやら俺の取る選択肢は、1番目の帰るだったようだ。
やっぱり見知らぬ人に声をかけるのは良くないな。
こうして、今日は無駄になって終わると思っていたのだが、ここで救いの手が差し伸べられた。
「お客様、どうされましたか?」
「あ、店長さん...ごめんなさい」
「俺が余計なことしてしまって、怒らせてしまいました」
うるさくし過ぎたのか、店長さんがここまで来て仲裁をしに来たが、本当に申し訳ない。
とりあえず迷惑をかけたし、神野さんのお代も払ってここは許してもらおう。
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