メフィスト・ワルツ

ウゴ

第1話 プロローグ

 おや、こんなところへ何のご用でしょう? まさか、娯楽をお探しで?

 ならば、ご安心を。私ほどお楽しみを提供するのに長けた者はおりませんから。

 ご紹介しましょう。これは、清らかな魂を持つ少女が、慎ましやかに、愚かしく、そして滑稽に破滅していく物語。

 彼女は何も知らず、何も疑わず、ただひたむきに生きておりました。ああ、それこそが罪深い。

 私はメフィストフェレス。かのファウスト博士を導いた、古き悪魔の一人。そして今もこうして、時空を超えて歩いております。

 私の手を取った少女の結末を、知りたいと思いませんか? おやおや、そんな怖い顔をしないで。私は決して無理強いなどいたしません。彼女自身が選ぶのです。

 名声を求めた者は、自ら名を消し去るでしょう。

 愛を求めた者は、決して愛を得られぬでしょう。

 幸福を願った者は、何よりも惨めな運命を辿るでしょう。

 何と素晴らしいことでしょう!

 "人間の本質"を、これほどまでに美しく描ける場面があるでしょうか? 純真が故に穢れ、誠実が故に欺かれ、希望を抱くが故に絶望へと堕ちる……。

 こんなにも劇的で、鮮烈で、心震わせる物語が、他にございますか?

 ああ、どうかご安心ください。物語の結末には、必ず美しき破滅と絶望をお約束いたします。

 さあ、どうぞご覧あれ。哀れな少女の滑稽な悲劇を。

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