重大発表?

「重大発表?」

「なんとなんとー、今日、あたらしくマネージャーがきます!」

 姫田くんがパチパチと拍手をしながら言う。佐場くんが口笛を吹いた。

 マネージャーか。どんな子なんだろう。

「この前近所に引っ越してきた子でさぁ。あ、5年な」

 姫田くんが、ぼくの思ったことを察したみたいにおしえてくれる。

「ちょっとめんどくさいけど、いいやつだよ」

「めんどくさいのに?」

「悪いやつじゃないって言い方が正しいかもしんない」

 佐場くんは、何がおもしろいのやらわからないけど、けらけらと笑った。

「あ、あとおれは見逃さなかったからな。芳野佐場バッテリー」

「なにを?」

「おまえらまた変化球練してたろ。骨に負担かかるからダメって監督言ってたじゃん」

 姫田くんは、この感じでけっこうまじめだ。

「でもチェンジアップだよ。いつもはツーシーム。大丈夫」

 チェンジアップは、骨に負担が少ないと言うし。

 それにツーシームも変則ストレートだし、大丈夫だろう。たぶん。

「それにおれたち、もともとリトルリーグに入りたかったんだし」

 リトルリーグは変化球がありだと聞くし。佐場くんの言葉にふかくうなずく。

「試合では使わないし」

 これは、重要だ。

 チェンジアップも、ツーシームも、試合では使わない。ストレート一本勝負。

「野球、できなくなってもしんないぞ」

 姫田くんは軽くため息をついた。ぱっつんの前髪がゆれる。

「とにかく、おれは注意した! あとで後悔しても知らないぜ」

「あとで後悔は二重表現になるから、間違い」

 佐場くんは、そう言ってから、なぜか笑った。

「そうだそうだ、先に後悔なんかできないよ」

 よくわからないけど、ぼくも乗ってみた。

 姫田くんは、またため息をついた。こめかみをさわる。

「姫田ぁ! 芳野ぉ! 佐場ぁ!」

 グラウンドの入り口から、聞き覚えのある、というか聞き慣れた声がした。

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