第3話(後編)――「北部同盟の形、次の海へ」

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『エルデン公爵家の末子』(第十章第3話)の【登場人物】です。

https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/7667601420296051051

『エルデン公爵家の末子』(第十章第3話)【作品概要・脚注※】です。

https://kakuyomu.jp/users/happy-isl/news/7667601420296095189

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前書き

酋長の身柄確保とヴェルネ家との結びつきが整い、アレクサンドロスは『恐れさせず、守って収める』方針で北部の枠組みを固める。人質の保護、交易の再開、簡単な税の取り決め、通訳と医療班の配置を進め、船団の再配置と偵察で海路も整える。島の北を安定させ、南西のセイラ族、東岸のロカール族との対話に入る準備が整う。


本文


 アレクのものを受け入れたまま、エリザベスは語った。


 「アレク様。伽の相手は、どうして一日にひとりだけなの?貴方なら何人でも受け入れること が出来るでしょう?」


 「一日に何人もするなんて考えたことがなかったな。僕がした相手は貴女を入れてふたりだけ だしな」


 「そうだったの。それなら無理もないわね」


 「それに相手から迫られるのはあまり好きじゃない。自分の方から迫りたいんだよ」


 「それは何となく分かるような気がするわ。征服感がないものね」


 「でもね。征服者とか王様になってしまうと、抵抗する相手なんか居なくなるわよ」


 「抵抗したら殺されると思うからか。王様にはなりたくないな」


 「話は変わるけど、貴方は火の魔術を覚える気はないかな?」


 「僕は、格闘技は苦手なんだけど、魔術系は得意だし、好きなんだよ」


 エリザベスはアレクに姉カトリーナ・ヴェルネ(38歳)の家族(【作品概要・脚注※①】を参照されたい)を紹介することにし、アレクにティアンロン王国から来た交易商人の卵と言う触れ込みの書簡をもたせた。


1144年2月14日午後3時。ヴォルテックス島北部山岳地帯ロルフ・ヴェルネ邸

 アレクは、エリザベスからの書簡「ティアンロン王国から来た交易商人の卵で、風の魔術が得意な、15歳のただのアレク少年と言う触れ込み」を持って、ヴェルネ一家を訪れた。


 アレクがヴェルネ一家の屋敷を訪れると、その美しい容姿に一瞬で一家の目が奪われた。彼の登場はまるで絵画から抜け出したかのような完璧な美しさであり、カトリーナをはじめとする家族全員が驚きを隠せなかった。


 カトリーナ・ヴェルネは、15歳のアレクが持つ静謐な美しさに感銘を受け、その無垢な姿に母性本能を刺激された。彼の青い目が持つ知性と落ち着きに、彼女は息を呑んだ。長年の経験と政治的な駆け引きに慣れた彼女にとって、このように純粋な美しさを持つ人物と出会うのは久しぶりだった。


 ロルフ・ヴェルネは、アレクの姿に戸惑いを覚えた。戦士として鍛えられた目には、この美しい少年がどのようにして力を持つ存在となり得るのか疑問だったが、その目の奥に潜む強さと決意を感じ取り、次第に敬意を抱くようになった。


 リシャール・ヴェルネは、自身が18歳でありながら、アレクが放つ独特の魅力に嫉妬を覚えた。彼は父親譲りの戦術の才を誇りにしていたが、この美しい少年が持つカリスマ性には、自分にはない何かがあると感じざるを得なかった。


 セリーナ・ヴェルネは、アレクの目に心を奪われた。彼の穏やかながらも鋭い視線に、自分の内面を見透かされるような感覚を覚えた。母親と同様、彼の持つ無垢な美しさと知性に強く惹かれ、アレクとの交流を深めたいと感じた。


 アレックス・ヴェルネは、アレクに憧れを抱いた。彼もまた魔術に興味を持つ少年であり、アレクが持つ風の魔術の技量を学びたいと強く願った。彼の中に芽生えたこの憧れは、将来の師弟関係への道を開くかもしれなかった。


 ヴェルネ一家全員が、アレクに対して強い関心と敬意を抱き、彼の存在がこの一家に新たな影響を与えることを予感していた。


 アレクがヴェルネ一家に贈り物(【作品概要・脚注※②】を参照されたい)を手渡すと、一家のメンバーたちは驚きと感動の表情を浮かべた。


 ロルフ・ヴェルネは、名匠が鍛えた高級な剣を手に取ると、その重厚感と細部に施された装飾の美しさに目を見張った。剣を鞘から抜き、鋭く光る刃を見つめた彼は、戦士としての誇りが胸に蘇るのを感じた。彼は深く頭を下げ、「この剣を受け取ることができるとは、アレクサンドロス殿に心から感謝します。これは家宝となることでしょう」と感謝の意を示した。


 リシャール・ヴェルネは、特製の弓と矢を受け取ると、目を輝かせてその弓を手に取った。彼は弓の曲線の美しさと、矢に刻まれた家紋をじっくりと眺め、その軽さと強靭さを確かめるように弦を引いてみた。弓の反応に驚きながら、「この弓で戦う日が待ち遠しいです。アレク様、これを使いこなしてみせます」と力強く誓った。


 アレックス・ヴェルネは、古代の魔術に関する貴重な書物を手に取り、その装丁と内容に目を見張った。彼はその書物を慎重に開き、目の前に広がる新たな知識の世界に心が躍った。「こんな貴重なものをいただけるとは思いませんでした。ありがとうございます、アレク様。これで、魔術の道をさらに進めることができます」と、感謝の気持ちを熱く語った。


 カトリーナ・ヴェルネは、アレクからダイヤモンドのネックレスと指輪を贈られると、その豪華さと気品に圧倒された。ネックレスの大きなダイヤモンドが彼女の首元で輝き、指輪のダイヤモンドが指先で光を放った。


 彼女は目に涙を浮かべ、「これほどの贈り物をいただけるとは……。感謝の言葉が見つかりません。アレク様、心からお礼を申し上げます」と、胸の内から湧き上がる感謝の念を表現した。


 セリーナ・ヴェルネは、ティアラとペンダントを贈られると、その繊細で優雅なデザインに目を奪われた。彼女はティアラを頭に乗せ、ペンダントを胸に飾った自分の姿を鏡に映し出し、自然と笑みがこぼれた。


 「こんなにも美しいものを身に着けることができるなんて…。アレク様、私は夢を見ているか のようです。本当にありがとうございます」と、感激してアレクの手を握りしめた。


 ヴェルネ一家全員が、アレクの贈り物に心から喜び、彼に対する感謝と尊敬の念を深めた。アレクも、彼らの笑顔を見て、贈り物を通じて彼らとの絆が一層強くなったことを感じていた。


後書き

後編の肝は『続けられる支配』の設計。収奪ではなく取引、強制ではなく合意を積み重ねる方針が示された。次回以降は、三勢力との交渉と連携、補給線の確立、拠点港の整備、そして大陸岸へ向けた偵察の具体化がテーマになる。

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