第19話「潮に挑む拳」
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観客席から、いろはの名を呼ぶ声が上がる。
「拳、届いてるで!」「高知、やったれー!」
けんど、拳の主は、眉を寄せながら立ち上がっちょった。
「……拳、重ねたはずやに……」
さっきの一撃。確かにミナトに触れた。
けんど、それでも“崩れん”かった。
むしろ、ミナトの“潮”はさらに深うなっていくようやった。
「はぁ……はぁ……」
一方のミナトも、肩で息をしていた。
その目はなおも静かで――けんど、どこか熱を帯びちょった。
「拳、軽ないよ。けんど……」
「波の先を、見せてもろたけん」
そう言って、ミナトは再び鎖を巻き上げる。
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「――来るき!」
いろはは鞭を再び腕に巻き直す。
けんど今回は、肘のあたりまで逆巻きにして――
「“しなり”を斜めに変える」
「これで、引き潮ごと打ち込めるかもしれん!」
ぐっと拳を握る。その姿に緊張が走る中――
「ふふっ……どうよこれ……!」
自分で考えた逆巻き仕様に、思わず頬がゆるむ。
「今だけは“ミソメンタル”ちゃう。これは“発明メンタル”やき!!」
鞭のしなりと体重移動の加速で、潮の“間合い”を詰めはじめる。
――まるで、拳そのものが“吠えてる”ようやった。
拳と潮が、再びぶつかる。
ゴッ!
鞭の“巻き方”を変えた打撃が、ミナトの鎖の流れを一瞬だけ“止めた”。
観客席がどよめく。
「高知、止めた!?」「え、拳が潮を裂いたんか!?」
「巻き方ちょっと変えただけやのに、めっちゃかっこよない!? うち、天才やない?」
「ふふ……おもろい子やなあ」
観客席のやちよが頬杖をつきながら笑う。
「拳やのうて、考えも混ぜよる。やるやん」
隣のせつなは無言のまま、ゆっくり頷いた。
⸻
「……やるね、桂浜さん」
ミナトが言う。
「けど――それでも」
その鎖が、真横に走った。
いろはの視界が、一瞬で水のように揺れる。
「なっ……!」
横薙ぎの“返し潮”。
咄嗟に拳を交差させてガード!
バンッ!!
衝撃。体が浮きかける。
「っぐ……けんど、下がらんき……!!」
拳を踏み込ませ、逆巻きの鞭に体重を乗せて打ち返す!
ガシィン!!
鎖と拳が、真正面からぶつかり合う!
砂煙が舞い上がり、観客が一斉に立ち上がった。
⸻
「……なんか、見入ってしもうた」
せつなが、ぼそりと呟いた。
「拳も潮も、ただの攻防やない。“意思”や」
「うん、なんか……ぶつかり合いながら、心、通わせよる気がするよな」
やちよが目を細めた。
⸻
闘技場の中心。
ふたりは、もう言葉を交わしていなかった。
拳と錨。土と潮。
どちらも汗にまみれて、呼吸は荒く、けれど――
まだ終わらんと、目で語っていた。
いろはは拳を握る。
「うちは……高知代表やき」
「ここで止まるわけには、いかんがよ!」
次の一撃で、決着がつく。
それが、会場中の誰にも分かった。
【To Be Continued】
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いや~今回のうち、ちょっとすごなかったろ!?
鞭の“巻き方”ひとつで、拳のしなりも重さも変わるって気づいてしもうて――
うち、天才やない?まじで。
“ミソメンタル”どころか、今日だけは“天才メンタル”やき!!
……でも、正直な話な。
ミナトの拳は、やっぱすごかった。
静かなのに、なんかこう、どんどん満ちてくる感じで、
どれだけ叩いても、その奥にまだ“潮”がある感じ。
拳をぶつけよったら、怖さもあったけど、
ちょっと……嬉しかったがやき。
うちは、もっと強くなりたい。
巻き方だけやない、拳そのものを。
次回――いよいよ、決着。
負けたくないき。
全部、拳に込めてぶつけるき。
また来てよー。まちゆうき!
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