第75話

「心配すんな、ってしますよ、心配。」


「あ?」


「私もエマも心配しましたよ」


「……」



野々村夏実はエマを抱き上げ、俺の目の前まで来ると、「ほらエマ」とエマに声をかける。



するとエマが、両手を伸ばし、



「痛いの痛いのとーんでけー!!!」




俺の頭をグシャグシャと撫で、痛みを飛ばすような素振りをした。



「…あ?」



訳が分からず不思議な顔をする俺にエマは笑顔で、



「保育園のセンセーが、こうすると痛いのなくなるっていつもやってくれてるよ!」


と自慢気に言う。


「別に、どこも痛くねぇけど?」


まだ訳が分からない俺に今度は野々村夏実が、



「心が痛いような顔をしてましたさっき。」



と補足を加えた。



「あ?心だぁ?」


「はい、だから心配を。」


「だから心配?」


「はい、当然です、心の痛みは身体の傷よりも痛い筈ですから。」



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