第19話 『門の向こうへ』

因果の門の拒絶が引き金となり、塔全体が激しく揺れ始めた。

空間は瞬く間に歪み、無数の光線と闇が渦巻く中、陣は自らの決意を改めて確認する。拒絶という選択を貫いたその瞬間、塔はまるで生き物のように反応し、内側から新たなエネルギーが湧き出すのを感じた。


「……これが、新たな始まりか」


陣は、両手を広げ、震える足取りで因果の門の前に立った。

その門は、かつて見たことのないほど美しく、そして恐ろしい光景を放っていた。

無数の幾何学的模様が、金色と漆黒のコントラストを成し、刻々と変化する様は、まさに“未来そのもの”を象徴しているかのようだ。


突然、門の奥から、かすかな囁き声が響き出した。

その声は、過去の記憶と未来の断片が混ざり合ったような、不思議な調べを奏でる。

陣の心臓は激しく鼓動し、時空そのものが静かに波打つのを感じた。


「……この門が、世界の運命をも決めるのなら」


その瞬間、門の表面が大きく震え、光の壁が一瞬にして剥き出しになった。

空間は、あたかも自らの存在理由を問い直すかのように、次第に透明度を増し、内側に隠された“最深核”が顔を覗かせ始める。

それは、塔の奥底、すべての因果を司る究極の存在——


「……」


突然、柔らかな声が響いた。

闇の中から、かすかに浮かび上がる一体の女性が現れた。

その姿は、以前にも現れた《セファラ》の面影を残しているが、今はさらに神秘的で、ほとんど霊的なオーラを纏っていた。


「……あなた、選ばれなかったのに、門を動かしたのね」


その声は、塔の因果の流れと共鳴するかのように、静かに、しかし確固たる響きを持って陣に告げた。

《セファラ》は、かつて塔の契約者として自らの存在を捧げ、失われた過去と未来を背負った存在。

彼女の瞳は、優しさと厳しさ、そしてどこか哀しみに満ちていた。


陣は、しばしの間言葉を失った後、深く息を吸い込むと、ゆっくりと顔を上げた。


「……さあ、続きを始めようか。神様」


その一言は、挑戦と覚悟の証。

陣の声は、かすかに震えながらも力強く、塔の全体に届くように響いた。

彼は、自らの選択に責任を持ち、これから待ち受ける未知なる試練に立ち向かう決意を固めたのだ。


《因果の門》は、陣の意思表明に応えるかのように、光と闇の渦をさらに激しく回転させた。

その中で、時空の壁が次第に薄れ、未来と過去が混在するような映像がちらつく。

そして、門は新たな形態を取り、まるで一枚の大きな絵画のように、未来の断片を映し出し始めた。


「ここにあるのは、すべての可能性……」

陣は自らの内面を見つめ、己の未来がどのように変わるのか、確信を深めた。

選ばれる側でもなく、選ぶ側でもない。

ただ、俺は俺の意志で進む。

その選択こそが、未来をも変える力だと信じている。


空間に漂うエネルギーが、徐々に穏やかになり、因果の門は静寂を取り戻す。

だが、その後も、塔の最深核からは微かな光が漏れ、全体に新たな可能性を示唆していた。


「……これから先、何が待っていようとも、俺は進むだけだ」


陣は、未来を見据えるように前を向いた。

その瞳は、確固たる意志と共に、これまで以上に輝きを増していた。


そして、因果の門の向こう側に、新たな階層への道が開かれた。

その道は、過去の記憶と未来の希望が交錯する、未知なる世界への扉だった。


「さあ、次のステージだ。俺が、俺の未来を切り拓くんだ」


陣は静かに、しかし力強く歩み出した。

その足音は、塔全体に共鳴し、未来の選択をも刻むかのように、闇夜に響き渡った。

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