第八話 能力測定

 苦行(記者会見)の日から3日がたち、各都道府県に覚醒者ギルドの支部が設置された。その覚醒者ギルドの総本山は東京に設置されるとのことだ。


 この日から、全国の覚醒者たちの能力測定が開始された。僕の能力測定が行われるのは一番最後なので、その日までは普段通りの学校生活を送っていた。


 ちなみに、能力測定が完了した覚醒者のスキルや魔力量はネットで見れるらしい。もちろん、住所などの個人情報は氏名を除いて、しっかり保護されている。すでに能力測定を終えた覚醒者の人の魔力量とかを見ていると大体100〜700ぐらいの範囲に入っているようだ。


「……あれ、すごい魔力量を持っている人がいるなぁ……。え、三神?」


 僕の目に映っているのは『三神奏 魔力3000  スキル魔剣召喚』という文字だった。今確認できる他のどの覚醒者よりも高い数値だ。そのことにも驚いたが、何よりも僕が驚いたのは、その覚醒者の名前だった。


「かな……ちゃん?」


 その名前は、昔一緒に過ごした友人の名前と同じだった。”三神奏”は多分、僕の幼馴染だ。ずっと前に地元から引っ越して行ったきりあっていないけど……。まさか、この名前をもう一度見ることができるなんてね……。


 まぁ、かなちゃんが覚えているかどうかは分からないけどね。もし覚えてくれているなら、昔みたいに過ごしたいな。


**************************************


<side:三神奏>


「嘘……でしょ?」


 私は、テレビで放送されている記者会見に釘付けになっていた。なぜなら、記者会見に出ているうちの一人の顔に見覚えがあったからだ。


「そーちゃん?」


 彼は私が子供の頃に一緒に過ごしていた幼馴染の子だろう。パッと見では、少女に見えなくもない優しげな顔といい、緊張のしすぎで真っ青な顔をしながら全身を小刻みに震わせている様子といい、間違いない。


 その後に発表されたことに、私は言葉を失った。


「そーちゃんが……SSランク!?」


今までの人生の中で二番目に驚いた。今までで一番驚いたのは、両親から急に『引っ越すよ』と軽く言われた時だった。


「あ、そうだ!」


 私はとあることを思いついた。もしかしたら、もう一度そーちゃんに会えるかもしれないアイデアを。


「私もダンジョンの探索に行こう!」


 そう考えて、すぐに両親の説得に向かった。お母さんは多分すぐに許可してくれるだろう。問題はお父さんだ。あの人は頑固だし、過保護だ。普通に説得したら断られるに決まっている。でも、大丈夫。私には秘策がある。


「ねえ、お父さん」


「なんだ?」


「私もダンジョンに行きt『ダメだ。』……だよね」


「そんな危険な場所に行かせるわけがないだろう」


やっぱりダメだったか。ならば、秘策を使おう


「お父さん。これなーんだ?」


「……ッ! どこでそれを手に入れた!?」


 私がお父さんに見せたのはとある通販サイトの購入履歴だ。そこには数万円もするトレーディングカードを何十回も購入しているという事実があった。ちなみにお母さんには内緒で購入していたのも、私は知っている。


「これをお母さんに見せたら、どうなるかなぁ?」


「そ、それはダメだ! そんなことを知られたら、どんな目に遭うか!」


 お父さんがここまで怯えるのには理由がある。お母さんは家のお金の扱いにとてもうるさい。日常生活に必要なものであれば、無断で買っても何も言わないが、トレカのように日常生活で必ずいるものではないものを無断で、それも数十万円もかけて購入していたことを知れば、間違いなく激怒するだろう。そうなったらどんな目に遭わされるか、考えるだけでも恐ろしい。


「ねえ、お父さん。これ、お母さんに見せられたくないよね?」


お父さんがものすごい勢いで首を縦に振った。


「それなら、私をダンジョンに行かせて?」


「だ……だが、奏を危険な目に合わせるわけには……」


「一人では行かないから。さっきのテレビに映っていた人と一緒に行くから」


「テレビに映っていた人? ……ダメだ! 男ではないか!」


「さっきの人、そーちゃんだよ?」


「そーちゃん? もしかして、奏真くんか?」


「……気づいてなかったの?」


「昔の記憶と全然違ったからなぁ……。まあ、彼であれば大丈夫か。何やらSSランクという大層な肩書きを持っていたし.…。仕方ない。許可しよう。だが、くれぐれも気をつけるんだぞ」


「わかってるよ」


よし。一番の壁は突破した。あとはお母さんに言うだけだ。


「いいわよ。ダンジョンに行くことを許すわ」


 突然後ろからお母さんの声が聞こえてきた。振り返るとお母さんが笑顔で立っていた。でも、何だろう。目が笑ってない気がする……。


「あ…ありがとう。というかいつからいたの?」


「少し前からよ。何やらが聞こえてきたからね」


嫌な予感がする。どうやらお父さんも不穏な空気を感じとっているようだ。


「ちなみに、いつから聞いていたの?」


「奏がお父さんに『これなーんだ?』って言ってたあたりからかしら?」


やっちゃった。お父さん、ご愁傷さま。


「お父さん。何やら面白そうなものを買っていたのねぇ。私にも詳しく聞かせてほしいわぁ」


「こ……これには深いわけがあってだな……」


「うふふ……。詳しく聞かせてもらいましょうか? ……奏、部屋に戻っていなさい。私は、お父さんとしないといけないから。……ね?」


お母さんの声には有無を言わせぬ威圧感があった。私は素直に従うことにする。


「は、は〜い」


 私は自分の部屋に静かに戻って行った。階段に差し掛かったあたりで、悲鳴が聞こえた気がしたが、聞こえないふりをした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る