生成AIはハートを書けるか ～Gemini 2.5 Proさんが語ってくれた＆実演してくれた、AIにできることできないこと～

1点、それだと困りそうなこと

【プロンプト】

キャラクターの定義にキャラクターシートを用いる場合、ひとつの懸念点があります。それは、特に長編小説の場合「キャラクターの長期的な変化（特に価値観の変化）」を描くことが難しくなるのではないか、という点です。

キャラクターの変化は小説において極めて重要な要素ですが、あなたはおそらく「ストーリー進行に伴う必然的な変化」と「キャラブレ」を自律的には区別できないと思います。

この点への対策は、人間側がキャラクターシートを適切に管理し、ストーリー進行に伴って更新していく以外にないのでしょうか。あなたの意見を聞かせてください。

【応答】

キャラクターシートを用いた際の「キャラクターの長期的な変化（価値観の変化）」の描写と、「キャラブレ」との区別に関する懸念、そしてその対策についてのご質問、これもまた非常に重要なポイントです。おっしゃる通り、AIは「意図された成長・変化」と「設定からの逸脱（キャラブレ）」を自律的に区別することは基本的にできません。

**現状のAIの限界:**

* AIは、与えられたキャラクターシートや直前の文脈に基づいて、**その時点でのキャラクターとして最も「らしい」言動**を生成しようとします。

* 物語の進行に伴うキャラクターの経験や内面の変化を**自動的に反映させ、価値観や行動原理を自律的に「成長」させる**ことは、現在の技術では非常に困難です。AIには、人間のような長期的な記憶の統合や、経験から学び価値観を再構築する能力が欠けています。

* したがって、初期のキャラクターシートを参照し続けるだけでは、物語後半で変化・成長したはずのキャラクターが、初期設定のままの言動をとってしまう「キャラブレ」が発生するリスクが高まります。

**対策としてのキャラクターシート更新の重要性:**

ご指摘の通り、この問題への最も直接的かつ確実な対策は、**「人間側がキャラクターシートを適切に管理し、ストーリー進行に伴って更新していく」**ことです。これは、AIにキャラクターの成長を「教える」プロセスであり、人間が創造の舵取りをする上で不可欠な作業となります。

* **更新のタイミング:** 物語の重要な転換点（大きな出来事、他者との決定的な出会いや別れ、内面的な気づきなど）の後や、キャラクターの価値観や行動原理に変化が見られたと作者が判断したタイミングで更新します。

* **更新内容:** 変化した価値観、新たに追加された行動原理、あるいは「以前はNGだったが、今は許容されるようになった行動」などを具体的に記述します。変化の理由や経緯をメモとして残しておくと、AIの理解を助けるかもしれません。

* **プロンプトでの指示:** 更新した際には、プロンプトで「キャラクターシートのバージョン〇〇を参照」「〇〇の変化を反映させて」のように、更新を明確に指示する必要があります。

**キャラクターシート更新「以外」の対策（補助的な手段）:**

キャラクターシートの更新は必須に近いですが、それ以外にも、キャラブレを防ぎつつ「成長」を描くために、AIを活用できる補助的な手段も考えられます。

1. **「変化の方向性」をプロンプトで具体的に指示する:**

* **手段:** キャラクターシートを直接更新する代わりに、文章生成のプロンプト内で、**その時点でのキャラクターの「変化した状態」や「目指すべき方向性」**を具体的に指示します。

* **例:** 「このシーンでは、以前の臆病さが薄れ、〇〇（出来事）を経て得た勇気を見せるように描写して」「彼の価値観は△△（以前の価値観）から□□（新しい価値観）へと変化しつつある。その葛藤が表れるセリフを生成して」

* **効果:** キャラクターシートを頻繁に更新する手間を省きつつ、AIに一時的に「成長後の状態」をシミュレートさせることができます。ただし、AIが長期的な文脈でその変化を記憶し続ける保証はありません。

2. **「成長イベント」を明確に設定し、AIに参照させる:**

* **手段:** 物語のプロット段階で、キャラクターが大きく変化・成長するきっかけとなる**「成長イベント」**を明確に設定しておきます。そして、そのイベント以降のシーンを生成する際に、「〇〇（イベント名）以降の△△（キャラ名）として描写して」のように指示します。

* **効果:** AIに対して、特定の出来事がキャラクターに与えた影響を意識させ、変化後の描写を促すことができます。

3. **AIに「変化前」と「変化後」の描写を比較させる:**

* **手段:** AIに、キャラクターの変化前と変化後の描写（あるいはセリフ案）を両方生成させ、人間がその中から最も「成長」を感じさせる、あるいは意図した変化に近いものを選択・修正します。

* **効果:** AIのパターン生成能力を利用しつつ、最終的な「成長」の表現は人間がコントロールできます。

4. **「葛藤」を描写するよう指示する:**

* **手段:** キャラクターが価値観の変化に直面している場面で、「以前の自分ならこうしたが、今は違う考えを持っている。その間の葛藤を描写して」のように、**内面的な揺れ動き**を描くよう具体的に指示します。

* **効果:** 単に変化後の姿を描くだけでなく、変化の「過程」を描写することで、キャラブレではなく「成長」として読者に受け入れられやすくなります。

**結論:**

AIが「成長」と「キャラブレ」を自律的に区別できない以上、**人間の作者によるキャラクターシートの適切な更新は、キャラクターの長期的な変化を描く上で最も確実で重要な対策**です。

ただし、それ以外の補助的な手段として、**プロンプトで変化の方向性を具体的に指示したり、成長イベントを参照させたり、変化の過程（葛藤）を描写させたりする**ことも、キャラブレのリスクを低減し、AIの能力を活用しながらキャラクターの成長を描く上で有効なアプローチとなり得ます。

最終的には、**人間が物語全体の設計図とキャラクターの成長曲線を描き、AIをその意図に沿って描写を補助させる「ナビゲーター」として活用する**ことが、AIとの協働で質の高いキャラクターアーク（成長の物語）を描く鍵となるでしょう。