第22話 英誉
「さあ、お入りください。」
扉が重々しい音を立てて開くと、拍手の響きが広間へ広がり、私たちはその先へと導かれた。
一歩を踏み出したその瞬間、視界に飛び込んできたのは、まるで絵画の中の世界のような荘厳な光景だった。
金色に煌めく装飾が壁面を飾り、天井には壮麗なフレスコ画が描かれている。無数の視線が私たちを捕らえる中、広間の空気には重々しい威厳が漂っていた。
赤い絨毯がまるで運命の道筋を示すかのように玉座へと続き、その先では王が燭台の揺れる光の中に君臨している。
王の姿は威厳そのもので、目にする者すべてを圧倒する力があった。
その場の壮麗さに足をすくませるかと思いきや、私の心は確固たる決意に支えられていた。
レオさんとともにこの場に立つ理由──その使命こそが私に勇気を与えていた。
ふと隣を見ると、レオさんの横顔が視界に入る。その瞳には揺るぎない強い意志が宿り、静かな炎のように燃えている。
その存在感が私を奮い立たせる。私たちは共に戦い、この場に辿り着いた。そして、共にこの栄誉を受けるのだ。
玉座の前に進むと、自然と膝を折った。広間に響き渡る王の声が、空気を震わせる。
「おもてをあげよ。」
私は床に目を落としたまま、王の重厚な声に応えた。力強い命令が広間の静寂を切り裂き、威厳に満ちたその響きが胸を打つ。
「良い顔を見せてくれるか?王子を救った英雄の顔を。私の名はルメル・エル・ネル・ローランネシアだ。」
その瞬間、胸の内にはじんわりとした温かさが広がり、心の奥に灯る希望のようだった。
顔を上げると、王との初めての視線が交わる。
白髪と白髭を蓄えた王の姿は、威風堂々としており、頭上の王冠はその威厳をさらに際立たせていた。
「まずは、レオ・キサラギ殿!」
王の呼び声に応じ、レオさんが立ち上がる。
その仕草は力強さと優雅さを兼ね備えており、広間の全ての視線を集めた。その姿は、ただの冒険者ではなく、堂々たる英雄そのものだった。
「そなたは、たった一人で反王政派の賊を数多く倒し、王子を救出した。その功績は、まさに英雄と呼ぶにふさわしい。」
「勿体なきお言葉、感謝いたします。」
レオさんは胸に手を置き、一礼する。
その立ち振る舞いには品格があり、まるで貴族のような風格さえ感じさせた。
(やっぱり素敵だ…。心を落ち着けて、私も頑張らなきゃ。)
「次に──シルファ殿!」
突然名前を呼ばれた私は、わずかに息を飲む。それでも、慣れないながらも勇気を振り絞り立ち上がり、王の視線に向き合った。
「そなたは、王子の近くでその護衛に努め、人質となった王子を無傷で救出に導いた。これもまた英雄の名に値する偉業である。」
「ありがとうございます。」
その言葉に感謝の念を込めながら、私は深く頭を下げた。
「さて、この二人の英雄に、王として報いねばならぬ。まずは、それぞれに金貨50枚を贈ろう。また、他に希望があれば、できる限り叶えるつもりだ。」
王の提案に、広間が静寂に包まれる。その威厳に満ちた視線が、私たちをじっと見据えた。
「では、王のご厚意に甘えさせていただき、一つだけお願いを申し上げます。」
レオさんが一歩前に出て、慎重な口調で話し始めた。
「『
その一言が王の眉をぴくりと動かした。広間の空気が一変し、見守る人々の中にざわめきが広がる。
「メモリーピースとな…。」
王の声が低く響き、その眼差しが鋭くなる。
「それは我が国の宝物庫に眠る国宝の一つで、公にしていない品であるぞ。何故それを知り得たのだ?」
王は少し強い口調でレオさんに尋ねた。
「彼女の能力で知りえました。女神パルナスからの神託によるものです。」
レオさんの堂々たる口調に、広間全体が静まり返る。
王はその言葉を咀嚼するように目を細め、一瞬の沈黙が訪れた。その間、緊張の糸が張り詰めるような空気が広間を支配した。
「女神パルナスだと?…ふむ。」
王は再び玉座に深く腰を預け、思案するように目を伏せた。
その瞼の奥にどのような計算が巡らされているのか、私には分からない。ただ、その重圧感が私たちにのしかかるようだった。
時が止まったかのような数分が過ぎた後、王が重い口を開いた。
「レオ・キサラギ殿、貴殿の言葉を信じよう。しかしながら、メモリーピースは我が国の宝。その価値は計り知れぬものだ。その授与には条件がある。」
「承知しました。その条件とは何でしょうか?」
レオさんは一歩も引かず、毅然とした態度で問い返した。王は目を細め、私たちを値踏みするような視線を向けた。
「反王政派の動きが活発化しておる。このままでは国を揺るがす内乱が起こるのは時間の問題だ。そなたらに命ずる──反王政派の黒幕を突き止め、その勢力を戦が始まる前に鎮圧せよ。この任務を完遂した暁には、メモリーピースを授けることを約束しよう。」
その言葉に、一瞬息を飲む。
壮絶な任務に私たちが立ち向かう資格はあるのかという不安と共に、心の奥底に燃える決意が湧き上がってきた。
レオさんは迷うことなく頷き、力強い声で答えた。
「承知しました。全力を尽くして、この任を遂行いたします。」
王はその回答に満足したのか、微かに頷き、玉座から立ち上がる。
「よかろう。我が国の安寧はそなたらに託した。」
こうして私たちは、避けることも逃れることもできない運命の奔流へと引き込まれていったのであった…。
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