「キャラが動く」について
■「キャラが動く」って、どういうこと?
創作をしていると、「キャラが勝手に動いた」なんて言葉を聞くことがあります。私自身も、何度かそういう経験をしてきました。
プロット通りに書いていたはずなのに、ある日ふと、キャラが予定と違う行動をとったり、思いがけないセリフを喋ったりする。
「え、そこでそうくる!?」「え、そんなこと言う子だったっけ……?」──そんな感覚。
つまり、作り手の意図を越えて、キャラクターが物語の流れを変えるような言動を取ること。
最初は自分の中で何かがズレたのかな?と思っていたけれど、今はもう、それが「キャラが動き始めたサイン」なんだと、思っています。
一方、「キャラが動く」という現象は、序盤の設定がまだ未完成だったからこそ、キャラに『余白』があったのではないか──そんな見方もできます。
ただ、設計図を綿密に創っても、物語の中で感情や関係性が加わっていくことで、キャラは『自立した存在』へと変化していく。そのグラデーションこそが、創作の一番面白いところなのかもしれません。
■ どのくらいで動き出すのか(私の場合)
あくまで私の経験則ですが、文字数にして3〜4万字あたりで、キャラが『勝手に動き出す』感覚が訪れることが多いです。
最初の1〜2万字は、どちらかというと「こういう性格で、こう動かすつもり」という『設計書』に基づいたキャラ造形。だけど、物語が進み、キャラ同士のやり取りや選択肢が増えてくると──
「このキャラだったら『あっち』に行くんじゃないか?」という『小さな違和感』が芽生え始めます。
■ どんなキャラが動きやすい?
すべてのキャラが自然に動き出すわけではありません。
動いたキャラの共通点を探ると、存在感×思考と行動履歴×イベントが揃った時なのかと仮説を立てています。
そのキャラに『存在感』が積み上がり、常にストーリーで存在を意識している。
そんな中、何を感じ、何を選んできたか──そうした『思考や行動の履歴』が、地層のように積み重なっていく。
そしてある日、ある出来事や他者の言葉に触れたとき、それまで積もったものと反応し合って、化学反応のように思わぬ言動が生まれる。
私は、そうした瞬間こそが「キャラが動いた」と実感するタイミングなのだと思っています。
さらに言えば、キャラクターの中に深く確立された『内部葛藤』がある場合、その存在が物語の中でじわじわと圧を増していき、あるイベントとの接触によって爆発的に作用することがあります。
たとえば、ずっと抑圧してきた感情や、本音と建前の乖離、社会的役割と個としての欲望のズレ──そういった葛藤が、外部の刺激と反応し合うことで、本人すら予想していなかった言動を引き起こす。
キャラが『意図せず動いた』ように見える瞬間の背景には、往々にしてこの「内部に溜めていた矛盾」があるように思います。
つまり、「キャラが動き出す」とは、初期設定の強さや明確さよりも、物語の中で何かを感じ取り、応答し、選び取ろうとする余白と揺らぎがあるかどうかが、鍵なのかもしれません。
■ キャラが動く作家/動かない作家
作家にもスタイルがあります。
インタビューなどで見る限り、以下のように推測しています(※ファクトに基づくというよりは読解・印象ベースです)。
✒️ キャラが動くタイプ(キャラ主導型):乙一さん、森見登美彦さん、村田沙耶香さんなど。
✒️ プロット主導型:伊坂幸太郎さん、東野圭吾さん、三浦しをんさんなど。
どちらが優れているという話ではなく、創作アプローチの違い。
前者はキャラの衝動が物語を揺さぶり、後者は構造と流れで物語を制御する傾向があります。
■ それぞれのメリット・デメリット
キャラが動くタイプ:
✅ 臨場感/没入感が出る
❌ プロット崩壊や収束困難のリスク
プロット主導型:
✅ 結末の美しさ、構造的な完成度
❌ キャラが駒のように見えることも
■ キャラは「意識して動かせる」のか?
私はある程度、意識して動かすこともできると思っています。
例えば…
キャラの「欲望」と「恐れ」を明確にする
キャラに“選ばせる”場面を用意する
セリフよりも感情の流れを優先する
プロットを追うのではなく「人物の人生」として展開を見る
つまり、キャラを『動かす』というより、「動きやすい舞台を整える」ことが大事なんだと思います。
■ 内向型・外向型とキャラの動き
MBTI的な話になりますが、作家の内向性・外向性も、キャラが動くかどうかに少し影響するかもしれません。
この辺りもあくまで仮説です。
内向型:キャラの内面と静かに向き合いながら構築する→結果としてキャラが自然に動き出すことが多い
外向型:複数の展開や場面を動かすのが得意→構造先行で進みやすく、キャラが動くより『流れを整える』スタイル
私はMBTIでは外向型が出ますが、創作はどちらかというと「内向に近い向き合い方」をしています。外側で構想して、内側で煮込むタイプというか。
いずれにしても、「キャラが動く」には、外からの情報と内面の感情の両方がかかわっているのかもしれません。
■ おわりに
「キャラが動く」とは、作り手にとって非常にスリリングで、同時に創作の喜びでもある現象です。
動かすのではなく、動いてもらう。そのために何ができるか──。この問いは、創作の中で何度でも立ち返るテーマかもしれません。
ちなみに、私が現在執筆している物語『灰の翼は自由を知らない』でも、「キャラが動く」ことによって展開が大きく変わった場面が何度もあります。
これは創作の喜びの一つかと思います。
彼らが何を感じ、どう変化していくのか──その過程を追う物語に興味がある方は、ぜひ『占領物』も読んでみていただけたら嬉しいです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/270617097/939954858
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