第4話 寝不足後の学校
「ふふふ」
「それでさぁ私の彼氏が――」
遠坂千咲は同じクラスになった女子同士で仲良く談笑していた。進級したことでクラスが変わっても学校中で名前が知れ渡っている彼女の地位は変わらない。既に和樹のクラスのトップカーストの地位だ。そして、チラリと千咲を見やっても、ただ笑っている姿なのに可愛らしくも絵になるような美しさを感じさせる。
(それにしても……こんな綺麗な人がキスするところ……初めてみたな)
昨日の遠坂千咲と二倍以上の年齢の男とのキスシーンを見てしまった和樹は、授業中という時間ですら仮眠したいと思えるほどに睡魔に襲われるはずが、教室にいる千咲のせいで全く眠くならなかった。それどころか脳が冴えたときのような感覚すら覚えるほどだ。
「お~い、和樹!お前ずっと遠坂さんの方ばかりみているな。どうした惚れたか?」
「……あぁ……いや」
「おい、どっちなんだよ」
「惚れてはいない」
「そうか~?それにしては随分とご執心のように感じるがなぁ」
千咲が教室を離れたことを確認してから、この学校唯一の友人ともいえる山中浩二が話しかけてきた。どうやら珍しく女子の方ばかり見ている和樹が気になったようだ。それも相手が学校一の美少女と言われている遠坂千咲なのだから惚れていると考えても無理はなかった。
「信じてくれないならいい」
「いや、別に疑っているわけじゃないけどよ……ほんと珍しいなぁと思ってよ」
「まぁそうかもしれないな…」
「それにしてもお前ってホントに女っ毛ないよなぁ。仏頂面じゃなければ十二分にイケメンなんだからモテそうなのによ」
「……興味ないからな」
「それはモテない俺に対する嫌味かよ!まぁ和樹が実際に興味ないってのは、見ていれば分かることだけどよ」
「そういう浩二の方こそ遠坂さんのこと気になっていないのか?」
「か、和樹……お、お前が恋愛トークしてきた……だと!?」
「そんな驚くことか?」
青天の霹靂のような驚き方をする浩二に冷ややかな目で見つめる。人間なのだから性欲は当然ある。一度失恋をしてしまって色々と性格が歪んでしまっただけであり、友人の恋愛事情を気になる普通の年頃の男子高生なのだから。
「あ、あぁ……それで俺が遠坂さんを好きかだって?そりゃねーなぁ」
「なんでだ?」
「あ~俺もそんなに話したことがあるから何とも言えないんだが……凄く男慣れしているような気がしてよ……」
(おっと……ご名答。意外にも鋭いよな浩二って)
「どうしてそう思ったんだ?」
「えっとな……こっちこい」
「何だよ……」
「外へ行くぞ。誰もいないところに」
千咲は教室にいないし、多くの生徒が食堂に行っているがそれでも十人程は残っている。彼らの目を気にした浩二は和樹の腕を引張り教室の外へと連れ出した。
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