033:青ゴブリン、東の街へ⑤

 ジンジュです。東の街“イース”からこんにちは!

 現在地は街の中心部、その名も「中公園」。と言っても、遊具ブランコとかはない。

 ほぼ石と花壇だけの、シンプルな広場だ。


 そのど真ん中に、大きな石膏像せっこうぞうがある。組合行く前にも見た、2柱の女神像だ。

 雪のように真っ白、超真っ白。ほんでデカい。台座だけで、今の俺より高いから……全長3~4mメートルくらいあるんじゃね?

 で、台座に見たことない文字列が……


「……読める、読めるど~ !? 何でや阪○」

「「関係ないやろ」」


 ツッコミありがとう。ちなみに内容はこんな感じ。


―――――

副神:シトリー様と、我らがしゅの2尊像そんぞう

 おそれ多くも、向かって左はシトリー様、右は我らが主の立像である。この商都イースにおいて、欠くことのできぬ方々であらせられる。

 主は、この世界を1からお造りになられた「万物の母」であらせられる。我らの今日こんにちあるは、主のご恩によるのだ。

 今も世界を維持すべく、主は不眠不休で励まれておられるとのよし


 斯様かように気高き主をお支えすべく、光闇こうあんはざまより生まれでたのが、シトリー様である。

 真実、信用を司り、精励せいれいされるそのお姿は、我ら商人が深くたっとぶべきものであろう。

―――――


 長い。しかも鼻につく言い回しだな。以上。

 ……え、中身? 黙秘ノーコメントで。I'mウチ B*ddistぶっきょうやし……


「これが経産婦だと……?」


 ……よろしいか、私は何も聞かなかった。ボーゼ? 知らない子ですね。


「……取り消しますサーセンした」

「「ほなはなから言うな~」」


 えすとと2人で言っておく。俺が失言王だとしたら、ボーゼは失言大臣。

 配信とかしない俺と違って、彼のは信用にかかわる。よくない。



 ……いやいや、街の話だったな。

 始まりの街アインツと比べて、人少ない、鳥少ない、猫少ない、ポツンとスライムだ。

 幅50cm、高さ30cmくらいかな? 水色に輝く、半透明の巨大まんじゅうが1匹。ぽよぽよ跳ねてる。


 ……あら、後ろからもう1匹。そりゃ失礼。

 それぞれ頭の上に“▽スライム(♂) Lv.18”、“▽スライム(♀) Lv.17”って文字列が見えてる。



 ……ん !?



「お2人さんお2人さん、スライムに性別あるんですけど……」

「「せやな」」

「図鑑には『性別はない』て書いとったよな。ど~いうこと?」


 そもそもファンタジーだと、“スライムに性別はない”って設定が普通らしい。

 何これ。どうしたら見分けがつく、と言うんだ……?


「それが分からんねん。街の人に聞いてまわっても“スライムに性別はないでしょ、何言ってんの?”て言われるだけやし」

「そーそー。てかそもそも、“レベルとか称号って何? 意味分からん……”て言われるよなー」

「あ~、せやろな~……」


 俺ら異人プレーヤーと違て、こっちの住民や魔物は“自力だとステータスを見れない”のが普通らしい。

 いわく、


「〈鑑定〉はレアスキル。異人は神々に感謝すべき」


だって。

 で、運良く〈鑑定〉を手に入れても、“○○、Lv.1”みたいな数値化はされないんだそうで。



 だからたとえば、


「俺はLv.20だぞ、もっと褒めろ!」


とか言って組合で暴れたら、“頭おかしい人”って噂が住民に広まって、あちこち出禁にされるんだって。



 あ痛た……



「最近あった実話や、受け取れ」

「そんなちゃなもんらんわい……」


 で~、例のスライム2匹は……


「……きゅえ?」

「きゅえ~」

「「……きゅえ~~い !! 」」



 ……はい次。

 カラスとかスズメとかハトとか、色々鳥がいる。

 その中に1羽、地べたを早歩きしてるやつが。


 たぶん鶺鴒セキレイってやつ。顔とか腹が白くて、背中側が黒い鳥だ。

 基本は砂利じゃりっぽい河原にいるけど、意外と街中でも見かける。そんな鳥。


 ところが、目の前のセキレイ(?)は白黒が逆。

 腹側が黒で、背中は白。そういう加工しろくろはんてんしたみたいに、きれいに逆。


 あ、でも目は黒いままだな~。


「お2人さんお2人さ~ん、あのセキレイ何?」

「は? セキレイて何ー ?? 美味いん ??? 」

「あそこでいずりまわっとぉ鳥やけど……食う?」

「うーん……パス。不味まずそう」

「「んなホンマのこと言うたらアカン……」」


 えすとはともかく、ボーゼは何か知ってそうだな?


「ボーゼ相談員は、どうお考えでっか~」

「「古いネタやのー?」」

「何で分かんねんお前ら……」



 ボーゼ相談員の答えは……?


「はいはい、“ハラグロセキレイ”か。最近掲示板で見たわ」

「……お前それ、ギャグで言うとぉ?」

「いや。マジ」

「……マジか運営ー?」

「イ~ヤまさかの駄洒落だじゃれオチ !! 」


 ……はい、解散解散。ツッコむん面倒くさいし、アインツ戻ろ~。



 ◇



 ほな、おさらい。女神像に転移させてもらうには?

 像にお供え物をして、行き先を選んで、手を合わせる。 ……でしたね。


 3人揃って、今度は“ブラウンウルフの皮”1個ずつ。なむなむ……


《「アインツ・中央広場」への転移ができます。転移しますか?》


 はい、お願いしま~す。



 ◇


《「アインツ・中央広場」に転移しました》


 はい、戻りました~。見慣れた噴水や。なむなむ……

 ほなログアウt……


「お、そろそろスライムがアインツ来るらしいで」

「ホンマかー」

「え~と……たしか西やっけ?」

「そうそう。行くコ?」


 そらお前、ここまで来て「行かん」とか無しやろ~。


「行こ行こ~」

「俺も行くわー」

「よしよし、ほな早速……」


 向かうは街の西……やない。検問待っとる間に時間切れや。

 やからアインツで一番高い建物に行く。


 その名は「アインツ大聖堂・鐘楼しょうろう」……目の前の教会や。



「あの展望室まで、階段ぐるぐる5分間や。行けるな?」

「「来いやワレェ…… !! 」」


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