024:青ゴブリン、森を行く②

 ◆


 ジンジュです。また死んだとです。

 ジンジュです。しかも、死に戻ったアインツの都心で、ヤカラに絡まれたとです。

 ジンジュです。ジンジュです。ジンジュです……



「お前のせいで……お前のせいで、俺たちまで死んじまったじゃねえか !! どぉしてくれんだよ !? 」

「そうだそうだ !! 責任取れよ !!! 」

「おうおう誠意見せろよ。土下座じゃ済まねぇからな?」


 つば飛ばすなや、ちゃないのぉ !?

 あと、そんな大声出さんでも聞こえとるし!


 ……これを柔らかい言い方で、


「……あ゛? ワレ何どい ?? しばき回すぞしゃーきゃーっそ ??? 」



 …… あ゛~ ッ 、 や っ て も た ~ !!



 ◇


 うわどうしよ、丸腰でケンカ売っちゃったぞ俺……あれ? 距離取られた ??


「……ガチの関西弁 !? 」

「てか何この殺気 !? ヘボゴブのくせに !! 」

「……〈大物喰らいジャイキリ〉でも持ってんのか? 面倒めんどくせぇなコイツ……」


 めちゃくちゃ警戒されてる……あっえすとだ。PTパーティーチャットか。


『ご愁傷しゅうしょうさまです。 ……また召喚してええ?』

「はい、お願いしまおなしゃ~す」

『りょーかーい。【召喚サモン】、ジンジュ!』


《異人「えすとっきゅー」に【召喚】されました……》


 ほな行ってきま~す……



 ◇


 ここは……東の森の安全地帯か~。移動早~……。

 で、まず牛柄の小兎とがのさんが寄ってきた。


「ふす!」

「ただいま~。 ……心配かけてすまん」


 友達のほうを見る。えすととはったさんが、仰向あおむけでぐた~っ、てしとる。

 それぞれに、橙色の小兎ダイスくん小柄な烏クロウくんが寄り添……ダイスくん寝とるわ。


 その横で、様子のおかしいボーゼ。1人だけ盛り上がっとる……?

 そして、構わず草を食う黒い兎レティシアさん。君そんなキャラやっけ……?


「ぴすぴす……」

「フゥーッ危な、逃げて正解やったわ !! 」

「「ん、そうだな……」」

「カァ……」


 あの喪服のひと、そっちにも行ったんか。めっちゃはようて強かったもんな……


「お疲れ~っす。 ……あの喪服さん、何者なにもん? 向こうで“キル数1位”がどうとか聞こえてんけど……?」

「あれはヤバいでー……今んとこ“ファンフリ最強”って言われとる、PKerプレーヤー・キラーや」

「1日平均30人ぐらいってるらしいぜ。ついた渾名あだなが“千人斬り”」


 えすととはったさんが答えた。

 “千人斬り”さんの被害者キル数はまだ500人台らしい。けど、2位の倍以上やし、そのうち実現しそうやな。



 怖……



 ……んでボーゼ、えらい静かやな?


「そうそう、あの人“ザいけ”って名前らしいねんけど。強いだけやのうて頭も相当キレるみたいでな。子どもは襲わん、った相手の持ち物もらん。さっきは殺った相手がぶちけたもんで、次の異人ターゲットおびき寄せとったみたいやねん。ええ性根しょうねの腐り方しとぉよな」

「うわぁ !? 急に早口になるなよ~ !! 」



 情報多いねん、整理が追っつかん……



「……んー? 異議あり、ジンジュは子どもでは ?? 」

「誰がガキじゃ !? お子ちゃんは足軽装備選ばんやろ~ ?? 」

「それもあるけど、喋り方か何かじゃねぇの? あの女、木の上から様子見してたみてぇだし」

「同意見やな。あと何か、見破る系のスキルも持ってそう」


 過大評価かもしれんけど、とにかくわけ分からん人、らしい。

 派手な行動に反して、何の主張もせえへん。やのに、一部の生産職プレーヤーさんにご縁があるそうで。


 オレーキーさんとかに話振ったら、何か知ってそうな苦笑いされるけど、何もってやないねんて。


「……ここの異人プレーヤー、なんか変な人多ない?」

「「それお前が言うん ?? 」」

「ええやんそれぐらい。“てめぇの口で、世界中に拡散しやがれ”とかって話ちゃうんやし。ミイラやミイラ」

「「“故人の乾燥ミイラ”やのうて“個人の感想”やろ」」


 ツッコミありがとう。


 んで、やっぱこういう実体験って大事よな~。

 ゲーム物の小説、なんぼか読んだけど。ああいうの、“最強(と化す)主人公”まわりの話しかせえへんからさ。



 で、今度ははったさんが静かやn……



「これが、本場のボケ・ツッコミ……」

「アンタまでそれ言うんか……」


 しぼり出された感想に、ボーゼが嫌そうな顔をする。


「やめてください大阪人にコ□される…… !! 」

「そんな大事おおごとなの !? 」


 ないない。大阪人は寛容やからな。

 けど、えすとの一言に、はったさんが引いとる。



 ……ちょっと補足フォローしとこ。



「たぶん大丈夫っすよ~。せいぜい肛門ケツのあなから手ぇ突っ込まれて、奥歯ガタガタ言わされるぐらいです」

「死んじまうだろ、そんなことされたら !? 」



 ……うん。言われてみたら、アカン気ぃしかせぇへんな ??


「おっとぉ~、若い人には刺激が強すぎたか……?」

「「「黙れクソガキ」」」

「サーセンした……」



 閑話休題。



 ◇


 東の森の安全地帯から、さらに奥を目指す。

 ……わけやけど、1つ問題が。


 来たほう以外にも、5方向に狭い道が伸びてる。周りは草木がボーボボ。

 獣道ってやつだな。


 で、なんかこう……点々と落ちてんだよな。

 〈初めての両手剣〉っぽい剣とか、茶色い小瓶こびんとか、よく分かんない装飾品アクセサリー? とか。


「……どっち見ても、散らかってんなオイ」

例の喪服ザいけさん、まだその辺おってやな?」

「縄張り広いんか~……実に興味深い」

「……お前図鑑でも作るんかー?」


 アリかも。本人の許可取れたら、やけど。

 まあ無理やろ……んな話どうでもええねん!


 とりあえず、丸腰のまんまはマズい。よろいと大盾を装備して……


「……で、どないするんすか~?」

「じゃあこっちでどうだ? 一番人通りが多そうだぜ」

「今誰もおれへんけどな……」


 5方向で一番太い道を指すはったさんに、ボーゼがツッコむ。


「……訂正、骨兎ボンラビおったわ」

「要らねぇ……」


 たしかに、小っちゃい白いのが跳ねとる。カラ、カラって音も、かすかに聞こえる。


「で、他に意見ある人?」

「特になし」

「「ありませ~ん」」

「よし、じゃあ行こうぜ!」



 ◇


 安全地帯を出たとたん、骨兎がこっちに来た。

 ~ね~、先頭俺やねんけど?


《「スケルトン・ミニラビット(♂)」1羽と交戦中です》

《抵抗に成功しました》

《従者「とがの」が抵抗に成功しました》



「……“彷徨う亡者アンデッド”ってさ~、けるとか逃げるとかって発想ないん?」

「【光属性付与ライト・エンチャント】! ……みたいやなー」

「【鑑定】、【叩きつけ】、でぇ~いッ!」


 さっきよりも小さな骨兎に、白く光る大盾をぶつける。

 痛ったあ! ……まあでも、結果は見えてる。


《「スケルトン・ミニラビット(♂)」1羽を討伐しました》


―――――

スケルトン・ミニラビット(♂) Lv.6[討伐済]

(分類)魔物/動物型

 草原や森に現れる、白骨化した小兎。彷徨う亡者アンデッドの一種。

 通常のミニラビットより身軽だが、物理的な衝撃に弱い。


 HP:0%   MP:9%

―――――


 一瞬やったな。なむなむ……

 ……とか思とったら、ボーゼがえずきだした。


「オ゛エ゛ッ」

「「「大丈夫か?」」」


 ……うわくっさあ !? 何これ腐敗臭 ?? どこから ???


「……ふす、ふす!」


 足元でとがのさんが、一方を見ながら震えとる。

 視線の先には……茂みを揺らす黒い影。デカいな、シシか……?


 あ、出てきた……げぇ !!


《「ゾンビ・ブラウンボア(♀)」1頭、および「ゾンビ・リトルボア」3頭と交戦中です》

《抵抗に成功しました》

《従者「とがの」が抵抗に失敗しました。状態異常【恐怖】が付与されます》



「「「「子連こづれかよォォォォォ !!?

」」」」



……みんなで叫ぶと、気持ちいいね!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る