第48話:バージンオールプロダクション
「ツルギくん!」
俺がメッセージを送ると、彼女……ハオリは一瞬で帰ってきた。正確には一瞬じゃないのだが、まぁ例えだ、例え。マンションは駅近だし、電車のダイヤさえ乱れなければすぐ帰ってくることは比較的容易。マンションの俺の部屋で邂逅する。
「やっぱり事務所は解雇されたか?」
「うん。その。訴訟しないだけマシだと思えって」
ハオリほどの人気声優を切るっていうのも剛毅な気はするが。
「ボク……これからどうしたら……」
「ああ、大丈夫」
「何が?」
「声優……続けたいんだろ?」
「そりゃまぁ」
だったら俺は応援するだけだ。
「ツルギくんは何かできるの?」
「否定はしない」
で、さっきから視界モニタでデータ書類の整理をしている。
「でもどこの事務所もボクを雇用したりしないと思うんだけど」
「だから俺が雇う」
「???」
何を言っているのか。そうハオリは目で問うた。
「要するに事務所があればいいんだろ。俺が作るよ」
「事務所を?」
イエス。
「一から?」
イエス。
「出来るの?」
イエス。
「で、聞きたいんだが。お前処女か?」
「な、なんでそれを今聞くの?」
「場合によっては事務所の方向性を変えなきゃならん」
「???」
「特殊なオナニーとかしてないよな?」
「すっごいセクハラな気がするんだけど、その辺どうですか?」
「オナニーで処女膜破ったりしてないかって聞いているんだが」
「…………してないよ?」
「よし」
「いや、まったく良くはないでしょ」
「ほい」
で、俺はとある住所データをガーネットを通じてハオリと共有する。
「病院?」
「ここで処女だって証明書……診断書か? とにかくもらってこい。もちろんまずは予約するところからな」
「処女って証明できるの?」
「可能だ」
「でもボクのを見られるってことだよね?」
「それくらいは我慢しろ」
「っていうかボクの処女証明とツルギくんの事務所に何の関係が?」
「経営方針に抵触する」
「けいえいほうしん……」
「俺が今から立ち上げる事務所は名前をバージンオールプロダクションという」
「バージンオイル?」
バージンオールだ。ちょっと発音似てるのは認めるが。
「所属するタレントは年に一回処女の証明書を更新して、処女であることを大々的に売り出していくことになる」
「だからバージンオールプロダクションに所属していれば、つまり処女の証明」
「そうすればネットの意見にも反論できるだろ?」
「えーと。ツルギくんって何者で?」
「どこにでもいるしがないモブ」
「事務所起こすって結構お金いるんじゃない?」
「資本金は百万円だ。さほど大きな事務所にするつもりもないし。そもそも資本金は消費して消える金でもないしな」
「いやいや、いやいやいや。おかしいって。ポンと百万円出せるのが。なんでそんな金持っておいてモブ顔?」
「こっちにも色々あるんだよ」
「……まだ仲良くなかったときに聞いた気がするんだけど……」
「何か?」
「やっぱりツルギくんてペルソナイズで顔誤魔化してるよね?」
「まっさかああ。そんなああ」
「ほら。ペルソナイズを解きなさい」
「断る」
「ちょっと顔見るだけだから。いいじゃん。お願い。一生の」
まったく良くはなくて。
「っていうかヲトメやヘブンが惚れているんだからすっごいイケメンでしょ? それをモブ顔で隠しているんだよね?」
「……ノーコメント」
「はい。言質とりました。諦めて見せなさい」
「……………………」
ペルソナイズを解く。現れたのは
「ッッッ」
それでハオリの顔は真っ赤になった。一丁前に惚れてしまったらしい。
「うちの学校にも
蛇蝎先輩とか。
「蛇蝎先輩はちょっと。性欲がギラついてる目がダメで……」
ヘブンも似たようなこと言ってたな。
「ねえ。ツルギくん」
「なんッぅむぅ……」
なんだよ、と言いかけて口をふさがれた。いわゆる一つのキス。はぁはぁと既にハオリの性欲はフルスロットル。俺を見て発情している。
「やっば……マジカッコいい。これが伝説のイケメン……
これから処女専門の事務所を立ち上げようって時にこいつはぁ。俺の性欲をなめるなよ。
Hカップの爆乳を揉む。
「ひゃんっ」
ビクビクッとハオリが震えた。
「言っとくが処女は確保してもらうからな?」
バージンオールプロダクションの経営にも差し障りがある。
「大丈夫だよ。穴は他にもあるから」
そういう理論はどうなんだ?
「もっとおっぱい揉んで。ツルギくんに揉まれると自分でやるより感じちゃう」
すでに息が荒い。興奮しているらしい。
「無理だってこれ。ツルギくんの素顔見ちゃうと乙女ってこんなにダメになるんだ。そりゃヲトメとヘブンが依存するはずだよ」
「そんなか?」
「もう駄目。抱いて。処女だけ守っていればいいんでしょ? それ以外は全部ツルギくんにあげる。キスも。おっぱいも。その他も」
えーと、じゃあ、いただきます。
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